ART / DESIGN

「LEXUS DESIGN

AWARD 2023」

メンターシップを経た受賞者の成長と作品の進化(後編)

2023.03.31 FRI
ART / DESIGN

「LEXUS DESIGN

AWARD 2023」

メンターシップを経た受賞者の成長と作品の進化(後編)

2023.03.31 FRI
「LEXUS DESIGN AWARD2023」メンターシップを経た受賞者の成長と作品の進化(後編)
「LEXUS DESIGN AWARD2023」メンターシップを経た受賞者の成長と作品の進化(後編)

「Design for a Better Tomorrow(より良い未来のためのデザイン)」のテーマのもと、次世代を担うクリエイターを対象とした国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD 2023」。その最大の特徴は、受賞者たちに、世界の第一線で活躍するトップクリエイターをメンターに迎えてのメンターシップが賞典として用意されていることだ。約3ヶ月に及ぶメンターシップによって、受賞作品はどのようにブラッシュアップされ、受賞者たちはどんな成長を遂げているのだろうか。
メンタリング期間中の4組の受賞者から、「Fog-X」で受賞したパヴェルス・ヘッドストロムと「Zero Bag」で受賞したパク・キョンホ&ホ・イェジンを紹介した前編に続き、「Touch the Valley」で受賞したTemporary Officeのヴィンセント・ライとダグラス・リーおよび、「Print Clay Humidifier」で受賞したジャーミン・リュウの声を後編としてお届けする。

 2023年2月に「LEXUS DESIGN AWARD 2023」の受賞作品を発表に先駆け、メンタリングプログラムはスタートを切った。4月に行われる最終プレゼンテーションまでの間、受賞者たちはメンターと対話を重ねながら、それぞれの作品のブラッシュアップを進め、プロトタイプ制作に取り組んでいる。
 創立から11年目となる「LEXUS DESIGN AWARD 2023」でメンターを担うのは、デザイナーのジョー・ドーセット氏、ソーラーデザイナーのマーヤン・ファン・オーベル氏、アーティストのスズキ ユウリ氏、建築家のスマイヤ・ヴァリー氏。様々なバックグラウンドを持つ4人のトップクリエイターたちによるメンタリングとは、どんなものなのだろうか。

<Touch the Valley>

 「スマイヤとユウリのセッションはとても刺激的で、新たな発見がありました」
 そう話すのは、視覚障がいを持つ人が、触れた感覚を通して楽しみながら地形などを学べる3Dパズル、「Touch the Valley」を手掛けるTemporary Officeのヴィンセントとダグラスの二人だ。
 ユウリ氏は、彼らの作品を誰に向けたものにするのか、という点に意識を向けさせたという。
 「当初、私たちは広く一般の人たちに向けた作品にするつもりで話していたのですが、ユウリは、世の中にはこれまでに幾多のパズルが作られてきたということを指摘し、その上で、“Touch the Valley”というこのパズルに独自性を持たせるものは何なのか、それが問題だと言いました。そのおかげで、視覚障がいを持つ人に向けた作品にしようと、はっきりと焦点が絞れたのです」
 一般の人たちも対象とした作品にするつもりだったが、視覚障がいを持つ人だけに限定することで、パズルのピースをはめる過程で、指で触れた感覚でその地域の雄大な自然環境をイメージすることができるという、「Touch the Valley」ならではの独自性を際立たせることができた。
 このように判断できたことは、チャレンジングであると同時に、とても納得できたようだ。
 「特定の人々のためにどんなデザインができるのか。それは既成概念を壊して前進し、現状に甘んじることなく、新しい世界へと踏み出すことが求められているのだと思います。そして私たちは、慣れ親しんだ居心地のいい世界から、今まさに飛び出していこうという、やる気に満ちています」
 一方、スマイヤ氏とのセッションが、自身の経験を思い出すきっかけになったという。
 「スマイヤは私たちの祖父母の視力がゆっくりと低下していったことを思い出させてくれました。それはとても重要なことで、実体験に基づいたストーリーは説得力があるからです」
 ソーラーデザイナーのマーヤン氏は、特に作品の機能性や質感といった具体的な点について多くのアドバイスをくれたようだ。
 「マーヤンとはとても実のあるセッションになりました。パズルのピースに磁気や熱技術を取り入れる、あるいは触ると音が出るなど、本当にたくさんの素晴らしいアイデアをいただき、すべてが刺激的でした」
 先進的な技術を必要とするため、最終プレゼンテーションまでの短期間で形にするのは難しくも、「これから子どもたち含め視覚障がいを持つ人たちに、試作したパズルを実際に使ってもらう機会を設けようとしているので、そのフィードバックをもとに、材料となる樹脂の質感などについても改めて相談したい」とのこと。そして今回のプロトタイプを完成させた後には、更に時間をかけて技術面や材料を探求し、本当に素晴らしい製品を開発したいと、将来に向けての意欲を語った。
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<Print Clay Humidifier>

 「Print Clay Humidifier」は、不必要になったセラミックを活用した、電力を必要としないサステナブルな加湿器だ。このアイデアのブラッシュアップに取り組むジャーミンは、材料の実験に多くの時間を費やしてきた。主に吸水性のテストで、材料、構造、焼成温度など、さまざまな比率の組み合わせを試したという。
 「マーヤンは、材料について、そしてそれらを結合させる方法や素材について、本当に良いアドバイスをくれました。彼女の技術的なフィードバックは、最終的なデザインへと発展させるために不可欠なものでした」
 一方で、ブラッシュアップに取り組む中で、実験に非常に時間がかかることが悩みだという。
 「正直なところ、時間との戦いでプレッシャーは大きいです。でもスマイヤとユウリが、作品を進化させ続ける勇気をくれました。彼らも同じように、時間との戦いを強いられていることが分かったからです。また、メンターは私のことを学生としてではなく、ひとりのデザイナーとして扱ってくれました。この作品に限ったことではなく、私のキャリアについても新しい視点を与えてくれたことは、私にとって一番ありがたいことでした」
 ジョー・ドーセット氏の言葉にもまた、勇気づけられたようだ。
 「ジョーは、この作品のデザインは部屋に置いたとき、とてもしっくりくるはずだと言ってくれました。作品を完成させることにも、完成した作品がミラノデザインウィークで披露されることにも、とてもわくわくしています」
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 メンタリングを経てブラッシュアップされた4つの受賞作品は、世界最大のデザインの祭典「ミラノデザインウィーク2023」に出展されることが決まっている。そこは、彼らが世界へと羽ばたく檜舞台であり、彼らがより良い未来を世界にもたらすスタートラインだ。
 今まさに、第一線で活躍するメンターのサポートを得ながら作品を進化させ、自らを成長させている若きクリエイターたち。意欲的で明るい彼らの声は、より良い未来への希望に満ち溢れている。

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