「仕事で成果をもっと出したい!」と考えて、セミナーを受けたり、何十冊もの本を読む人は大勢います。

しかし、「知識を詰め込むインプットの学びだけでは、現実は変わりません」と言うのは、精神科医・作家の樺沢紫苑医師です。

樺沢医師は診療のかたわら、これまで約30冊の書籍を執筆し、メルマガやFacebookの更新を長年続けるなど、「日本一アウトプットをしている医師」として知られています。

ほとんどのビジネスマンは非効率なインプットが中心

樺沢医師によれば、「約9割のビジネスマンは、インプット中心の学び方や働き方」をしているそうです。

もちろん、インプットは大事ですが、これが中心になってしまってはとても非効率。そこで、著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)で、脳科学に裏付けられたアウトプット術を記しています。

“大全”というだけあって、その数は非常に多いのですが、今回は各章から1つずつピックアップしてみましょう。

スタートは「感想を話す」ことから

アウトプットと言っても、あまり難しく考える必要はありません。まず、「感想を話す」ことからスタートです。

本を読んだ感想、映画を観た感想、テレビ番組を見た感想、スポーツの試合を見た感想、おいしいものを食べたグルメ感想、何から始めてもいいのです。(本書040pより)

ここで重要なのは、「自分の意見」、「自分の気付き」を1つでも盛り込むこと。単に「〇〇へ行ってきた」では、アウトプットになりません。

また、話す内容には努めてポジティブな言葉を含めるように留意します。職場内の会話で、ポジティブな内容とネガティブな内容の比率が3:1以上だと、高い利益を上げ、チームメンバーの評価も高く、3:1を下回ると離職率が高くさえないさえない職場になるという研究結果があります。

加えてくわえて、「悪口はネガティブ人生の始まり」だと、樺沢医師は忠告しています。悪口は、「ストレスホルモンが増える」、「人間関係が悪化する」、「悪いところ探しの名人となる」というデメリットがあって、「百害あって一利なし」。この点は、くれぐれも注意しましょう。

書けば書くほど、脳が活性化する

アウトプットの基本は、「話す」のほかに「書く」があります。書くアウトプットの第一の利点は、「圧倒的に記憶に残り自己成長を促す」ことだそうです。そして、長く記憶に残り、新しいアイデアにつながりやすいという点から、(キーボード入力でなく)手書きで書くことを、樺沢医師はすすめます。

あまり書く習慣のなかった人は、ひとまず、何から書くべきでしょうか?

1つには、「エキサイティングな体験」があります。映画、演劇、本、旅行で、そうした気分を味わった際に、時間をおかず書き出して記録に残します。

その記録は一生モノで、それを見返すだけで、感動や気付きを先程の体験のように生々しく、ありありと思い出すことができるのです。(本書121pより)

感動体験ばかりでなく、何かアイデアを思いつく、役立ちそうなことに気付く、といった一瞬のひらめきも、すぐにメモしておくべきだと樺沢医師は述べています。

こうした「あっ、そうか!」な気付きは、脳科学では「アハ!体験」と呼ばれ、脳内に新たな神経回路ができ、「数秒前の自分とは異なる自分に自己成長している」貴重な体験。しかし、夢と同じですぐに忘れてしまいがちなので、遅くとも1分以内にメモする必要があるそうです。このメモ書きも立派なアウトプットです。

さらには、「落着き」ですら、意味のあるアウトプットになりえるとも。プリマス大学で行われた、人・場所の名前を聞かせ、あとで書き出してもらう実験では、紙に落書きした参加者のほうが、そうしなかった参加者よりも29%も多く名前を思い出すことができたそうです。

このことから、「会議が行き詰まったら、イラストでもなんでも、好きに描いてみよう」と、樺沢医師はアドバイスします。

「教える」は自己成長に最も効果のあるアウトプット

樺沢医師は、本書にあるものから最も自己成長につながるアウトプット法を1つ挙げるとするなら、「教える」ことが最強だとしています。

その論拠の1つに、ロンドン大学の暗記に関する研究があります。「あとでテストをする」と言われたグループと「あとで他の人に教える」と言われたグループに分け、どれだけ課題を暗記しているか調べたところ、後者のほうが得点は高かったそうです。

人に教えた経験がある人はわかると思いますが、しっかり理解していないと、人に教えることはできません。つまり、教えることで、自分の理解度や不十分な点が明確に見えてきます。そして、実際に「教える」日までしっかり勉強して、その不十分な部分を補います。

つまり、「教える」はアウトプットであり、フィードバックであり、さらなるインプットでもある。自己成長の3ステップをすべて含んだ、三位一体、完全、最強のアウトプット術であり、自己成長術であるといえるのです。(本書197pより)

では、教職者でもないのに、どうすれば「教える」機会は得られるでしょうか?

この点についても、いくつかの指南がされています。例えば、外部の勉強会への参加。参加者が講師を持ち回りで行う会を選ぶことで、教える機会が出てきます。もし、社内でも勉強会が行われていて、「〇〇について話してくれないか?」と、講師役を頼まれたら、臆することなく引き受けるのが吉。自分の持っている知識が整理されるなど、大きく成長できます。


樺沢医師は、アウトプットには幾つものメリットがあると言います。それは、自己成長を促すことで、職場での実績・評価が上がり、人間関係が円滑になり、人生全般がより楽しく豊かになるというものです。

これだけのメリットがあるなら、やらない手はないでしょう。本書にあるアウトプット術を実践して、公私ともにレベルアップをはかってみましょう。

Source: 『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)

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