敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。

今回は、『The New York Times』に掲載されるクロスワードパズルの編集責任者を務めるウィル・ショーツ(Will Shortz)さんの仕事術です。

ウィル・ショーツさんは、クロスワードパズル界で最も名の通った人物です。クロスワードパズル編集者として、1993年から『The New York Times』のすべてのパズルの制作に携わってきました。

また、世界パズル選手権、アメリカン・クロスワードパズル・トーナメントの創設者であり、ウェストチェスター卓球センターのオーナーでもあります。

今回、ショーツさんは、『The New York Times』のクロスワードの編集プロセスを詳細に教えてくれました。

クロスワードパズルでは、文章によるヒントを「カギ」と呼びますが、寄稿者が作成した「カギ」の半数はリライトされるそうです。

他には、彼が取得したユニークな学位、編集作業に使用するデスク、タイムズ紙が過去に掲載した全てのクロスワードパズルを閲覧できるウェブサイトについても話してくれました。

現在の仕事を始めた理由と1日の流れについて

個人のオフィス
ウィルさんのオフィス
Image: Lifehacker US

── まず、略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?

私は8歳か9歳でパズルを作り始め、14歳で初めてプロとして自分で作ったパズルを売りました。

インディアナ大学のIndividualized Major Programで、1974年にパズル学の学位を取得しましたが、こんな学位を取得した人間は私が初めてで他には誰もいません。

学位取得後は、15年間Games誌の編集者をして(最終的にはその道で名のある編集者になりました)、その後は『The New York Times』で25年間仕事をしています。

──最近の1日の流れを教えてください

今日は、アシスタントをしているSamさんと編集作業をする日でした。

日曜日のクロスワードとバラエティパズルのページ、そして平日(月曜日と火曜日)のパズルを2つ編集しました。

残念ながら、日曜日のクロスワードには多くの手直しが必要でした。

各パズルが編集されて活字に組まれると、そのPDFがクロスワードパズルを試し解きするテストソルバーたちに送られます。

全員がコメントや直しを書き込み、そのうちの1人が、すべての単語とファクトをチェックし直しました。『The New York Times』のクロスワードパズルはどれも必ず全部で10人のテストソルバーが確認してから公開されます。

アメリカ国内でこれほど厳密な編集とテストを経て公開されるパズルは他にないと思います。

仕事で欠かせないツール・生産性の上げ方

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

私にとって最大のツールは本です。

思いつく限りの、ほとんどすべてのことをカバーする何百もの参考文献を持っています。もちろん、今はほとんどの情報をインターネットで見つけることができるので、インターネットに多くの時間を費やしています。

しかし、私は自分の本に精通しているので、インターネットで検索するよりも、本で探す方が簡単で速いことがよくあります。

場合によっては、本の方がウェブサイトより正確なことがありますしね。

── 仕事場はどんな感じですか?

本を手にするウィル
パズルを編集するウィルさん
Image: Lifehacker US

自宅の2階をホームオフィスにしていて、そこから自然豊かな郊外の風景を見渡すことができます。

デスクの周りは辞書や参考文献でいっぱいです。横のPCは、タイムズ紙のパズルの植字と寄稿者とのやり取りに使っています。

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?

XwordInfo.comというウェブサイトで、『The New York Times』が初めて掲載した1942年のクロスワードパズル以降のすべてのクロスワードパズルの「答え」と「カギ」を見ることができます。

このサイトで過去の「カギ」と「答え」を調べて、できるだけ同じものを使用しないようにしています。

仕事の仕方、周りからのサポートについて

──仕事場で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものがあれば教えてください

PCに向かう男性
アシスタントのSamさん。パズルを活字に組んでいます。
Image: Lifehacker US

私のところには1週間に125本以上のクロスワードが寄せられますが、郵送をお願いしています。理由は、原稿をマークアップするとき、コンピュータの画面でするより紙の上でするほうが簡単だからです。

寄稿されたすべてのパズルは少なくとも2人のスタッフがチェックします。私はアシスタントと一緒に封筒の上に、「好きな点」「嫌いな点」「YesかNoのどちらかに気持ちが傾いているか」などのコメントを書いて、別の人たちに回覧します。

「採用」の最終決定は私がします。その後、スタッフの誰かが寄稿者に結果をメールで知らせます。

ちょっと古臭いプロセスですが、クロスワードを選ぶには最高のプロセスだと思います。

── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?

私にはJoel FaglianoさんとSam Ezerskyさんという20代のアシスタントが2人います。

2人とも素晴らしく優秀で、私が知らないことを知っているときもあります。

──ToDoはどうやってトラッキングしていますか?

毎週『The New York Times』にパズルを提出する期限があるので、私の仕事のスケジュールはそこから逆算して立てます。

どのパズルも編集され、活字に組まれ、テストソルバーに回されてテストと再チェックを経て磨きをかけられた後に、やっとタイムズ紙にメールで送信されます。

紙面に掲載されているパズルの「カギ」の約半数は私が作ったものです。時間があればアシスタントと私がメールに返信します。

体と脳の休み方について

──どのように充電したり休憩していますか?

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アメリカン・クロスワードパズル・トーナメントで登壇するウィルさん
Image: Lifehacker US

私はウェストチェスター卓球センターという卓球クラブを所有していて、仕事の後、毎日プレイしています。

クロスワードパズルが人々の役立つのと同じように、卓球は私の役にたっています。

試合中は完全にゲームに集中してすべてを忘れられるからです。

プレイし終わると、リラックスしてリフレッシュしているので、あらゆることに取り組める気分になります。

──今、何を読んでいますか? おすすめの本はありますか?

今は、『Dreyer’s English: An Utterly Correct Guide to Clarity and Style.』を読んでいるところです。でも、あと1日か2日で読み終わり、別の本を読むことになるでしょう。

今後の目標について

──今日あなたがされたのと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

元アメリカ大統領のビル・クリントンです。

──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

「その職業の中で一番つまらないところも嫌でない職業を選択しなさい」です。

私の場合は、クロスワードパズルを作るプロセスの中で、活字を組むところが一番興味が持てません。

でもタイプをすることは好きなので、この職業にして良かったと思っています。

──挑戦中の課題はありますか?

一日を25時間分生きること。

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Nick Douglas – Lifehacker US[原文