2019年も終わりです。オリンピック・イヤーの来年は、果たしてどのような年になるのでしょうか?
2012年8月にライフハッカー[日本版]で書評を書きはじめ、この年末で7年数か月が経過しました。
その期間、基本的にはほぼ毎日(土日・祝日を除く)新刊をご紹介してきましたし、今年も230冊以上がここに登場したことになります。
「本が売れない」「読者が減った」と言われるようになってから、かなりの時間が経ちます。
でも、この話題が出るたびに感じることがあります。「ネガティブになりすぎるても仕方がないんじゃない?」ということ。
たしかに、売り上げは落ちているのでしょう。読者の数も減っているのかもしれません。でも重要なのは、本を読む人が減ったとしても「いなくなってはいない」ということです。
当たり前のようで、これは大切なポイントだと思っています。少なくなったとしても、“いる”のですから。
だとしたら、「読む人が減った」と悲観的に騒ぎ立てるのではなく、読む人に寄り添ったほうが、ずっと建設的ではないでしょうか?
僕はずっと、そう考えながら本をご紹介してきました。詳しくいえば、(もちろん勘違いもあるでしょうが)「これはライフハッカーの読者に刺さるんじゃないかな?」と感じたものを紹介してきたのです。
そして、そのスタンスは今後も変わらないと思います。
ベストセラーになったとか、話題になったとか、そういうことももちろん大切でしょう。
けれど、そこだけに囚われていると、「読者に刺さるか」ということから外れていく場合もあるはず。
だからこそ、ベストセラーかどうかではなく、「この書評を読んでくださっている方々のお役に立ちそうな本」を取り上げようとすることを、忘れてはいけないと考えているわけです。
さて、そんな考え方に基づく年末恒例企画。今年も、紹介してきた本のなかから、印象に残った10冊を選んでみました。
もちろん、これら以外にもいい本はたくさんありましたが、参考にしていただければ幸いです。気になるものがあったら、ぜひ読んでみてください。
10位 『これからの麺カタコッテリの話をしよう』
(マキシマム ザ ホルモン、ワーナーミュージック・ジャパン)1月18日
10位は、まさかのマキシマム ザ ホルモン。というのも、この新作は「CD(4曲+ボーナストラック)+漫画」で構成される“書籍”として発売されたからです。
これは、マキシマムザ亮君にしか考えつけないアイデアだと感じました。
9位 『韓国カフェ巡り in ソウル』
(東山サリー著、ワニブックス)5月10日
日韓関係は緊張状態が続いていますが、個人レベルではまた別の話。韓国のカルチャーに関心を抱く若い人も増えています。
そこで選んだのが、ソウルのカフェを紹介した本書。おしゃれな店が多いので、純粋に「行ってみたいな」と感じることができるでしょう。
8位 『天皇制ってなんだろう?』
(宇都宮健児 著、平凡社)1月24日
2019年は皇太子徳仁親王が新天皇に即位され、元号が平成から令和へと変わりました。そんな年だからこそ、改めて天皇制について考えてみようということで、これをチョイス。
質問者(中学生)と回答者とのやりとりを軸に、天皇制が解説されます。
7位 『英語で味わう万葉集』
(ピーター・J・マクミラン 著、文春新書)12月24日
20年以上にわたって日本に住み、『百人一首』を英訳するなど数々の功績を残してきたアイルランド出身の学者、翻訳家が、『万葉集』から選りすぐった百首を英訳してみせた新書。
オリジナルの歌とその英訳、現代語訳、解説が紹介されており、とてもわかりやすい内容。
6位 『一瞬で人生を変える お金の秘密 happy money』
(Ken Honda 著、本田健 訳、フォレスト出版)7月25日
愛情や思いやり友情を伴ったかたちで流通しているお金は「Happy Money」、かたや、しぶしぶ払うために使うようなお金は「Unhappy Money」だという考え方は、とてもシンプル。
でも、そこには忘れてしまいがちな真実が隠されているようにも思えました。
5位 『EQ 2.0 「心の知能指数」を高める66のテクニック』
(トラヴィス・ブラッドベリー&ジーン・グリーブス 著、関 美和 訳、サンガ)5月23日
成功と失敗を分けるのは、この社会ではあまり気にされていないなにか。そして重要なのは「心の知能指数(Emotional Intelligence)」、すなわち「EQ(Emotional Intelligence Quotient)だという考え方。
ここにも、“よりよく生きる”ために重要な答えが隠されているのではないでしょうか。
4位 『どうしたらいいかわからない君のための 人生の歩きかた図鑑』
(石井光太 著、日本実業出版社)9月2日
教育や児童福祉などの現場での取材経験も豊富なノンフィクション作家が、10代の子どもたちに向けた人生ガイド。
本編の内容もさることながら、ときどき担当編集者が登場し、自分の過去を明かしたりしているところも新鮮で、そして強烈でした。
3位 『お金本』
(夏目漱石、国木田独歩、泉 鏡花 その他、左右社)11月29日
文豪、漫画家、ミュージシャンなど、さまざまな立場の人たちのお金に対する思いをまとめた書籍。お金がなかった時代の話が多いので、6位『happy money』の観点からすれば「Unhappy Money」なのかもしれません。
が、みなさんがそれを楽しんでしまっているせいか、思わず笑ってしまえるのです。
2位 『天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常』
(メイソン・カリー 著、金原瑞人/石田文子 訳、フィルムアート社)10月4日
天才と呼ばれる偉人たちが、毎日どう時間をやりくりしていたのかを調べ、紹介した書籍の続編は、タイトルにあるとおり女性編。
草間弥生からキャロル・キング、ココ・シャネルまで、さまざまな世界で活躍する(あるいは、してきた)女性たちの日常を、ただ淡々と紹介しています。
1位 『現代用語の基礎知識 2020』
(佐藤優、金田一秀穂 他、自由国民社)12月3日
僕の場合、2019年でいちばん衝撃を受けたのはこれかもしれません。
なにしろ分厚くて重たいはずだった年末恒例の「ことばの年鑑」が、すっきりコンパクトサイズになったのですから。
手にとりやすくて読みやすく、とても現代的。これはリニューアルの成功例だと断言できます。
選び終えてから気づいたのですが、ビジネス書の枠に収まりきらないものばかりですね。そういう意味では、“ありえない”ランキングになってしまったかもしれません。
でも、あくまで個人的な嗜好が反映されたものなので、そういうものだと思っていただければ幸いです。
そして、もしもこのなかに「おもしろそうだな」と感じるものがあったら、ぜひ読んでみてください。きっと気に入っていただけるはずですから。
さて、年が明けても引き続き、読者のみなさんのお役に立ちそうな本を選び、ご紹介していきたいと考えております。来年もよろしくお願いします。
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