ジェフ・ベゾス氏がAmazonのCEOを務めていたころ、採用の際に最も重視していた資質は何だったのでしょうか?

勤勉さや過去の実績はもちろん重要です。

しかし、ベゾス氏は当時、Basecamp社でのスピーチで、ほかにもっと重要な資質があると話しています。それは「知的謙虚さ」です。

最も頭の良い人たちは、自分の考えを常に見直し、すでに解決したと思っていた問題についても考えることをやめない。

そうした人たちは、新しい視点、新しい情報、新しいアイデア、矛盾、自分の意見への異議申し立てに対して常に心を開いている

上記のベゾス氏の言葉を、Basecamp社の創業者であるJason Fried氏が紹介しています。

自らの可能性を最大限に引き出すためには、積極的に学び、向上する姿勢がなければなりません。

また、そのためには、当然ながら、自分がすべての答えを持っているわけではないことを認める必要があります。

だからこそベゾス氏(や他の企業家たち)は、挑戦し、失敗し、そこから学んだ人を好んで採用するのです。

そうした人は、少しでも成長しようと新しい情報や矛盾した情報に対して心を開いています

ふつうのことに聞こえるかもしれませんが、人間が一般的に「知的謙虚」がかなり苦手であることは、心理学の世界ではよく知られる事実です。

だからこそ、デューク大学の Mark Leary教授がカリフォルニア大学バークレー校の「Greater Good Science Center」で語ったように、知的謙虚さは、人生の目標を達成するための大きな強みとなるのです。

知的謙虚さがなぜ強みとなるのか

Leary教授は、このテーマを深く掘り下げながら、知的謙虚さの利点に関する研究をいくつか紹介しています。

私たちが行なった研究では、高いレベルの知的謙虚さを持つ人は、デンタルフロスの有効性に関する記事のエビデンスの信憑性を、より慎重に見極め、強いエビデンスと弱いエビデンスをより明確に区別していた。

別の研究でも、知的に謙虚な人は、自分の意見に反するエビデンスをより慎重に検討し、最終的には反対意見に対する理解を深めることがわかっています(これは、共感や説得、妥協点の交渉にも役立つ)。

また、知的に謙虚な人は、他の人から創造的で多様なアイデアを引き出すことにも長けています。

Leary教授は次のように説明しています。

知的謙虚さは、新しい情報を学びたいという欲求とも関連しています。

知的謙虚さのレベルが高い人は、新しい知識やアイデアを追求する動機となるepistemic curiosity(知的好奇心)のスコアも高い傾向にあります。

知的謙虚さのレベルが高い人は、知的謙虚さのレベルが低い人よりも考えることが好きなのです。

反対に、知的謙虚さのレベルが低い人は、意見が合わない人に対して感情的になる傾向があり、自分は相手から嫌われているのだと考える傾向があります。

さらに、妥協することが少なく、満ち足りた人間関係を築きづらくなります

ジェフ・ベゾスは正しかった

以上のすべては、次の一言に集約されます。

ジェフ・ベゾスは正しかった。

知的謙虚さは、あまり話題になる特性ではありませんが、数々の研究により、あらゆる種類の卓越した能力を発揮するために不可欠な要素であることがわかっています。

では、自信過剰になりがちな人間の性質を抑え、自らの知識の限界に対して謙虚になるように自分を仕向けるにはどうすればよいでしょうか。

私も以前にInc.comでいくつかのアイデア(1, 2)を提案しましたが、Leary教授は、謙虚になる必要性を論理的に説明しています。

人々は、より知的に謙虚な方法で世界にアプローチすることが合理的かつ有益であることを理解する必要があります。

知的に謙虚であることが合理的だというのは、意見の相違があるときに全員が正しいということはありえないこと、人は自らを過信しがちだということ、私たちが抱く信念や見解は実は弱いエビデンスを根拠としていることがよくあることを考えればわかります。

合理的な人たちは、私達の多くとは違い、過剰な自信を持つことはありません。

同氏の説明を聞けば、新しい情報やアイデアに対して十分に心を開けているかについて、常に細心の注意を払うべきことがわかるはずです。

また、人によっては、「知的謙虚さ」があればジェフ・ベゾス氏と一緒に仕事をするチャンスが増えるであろうことも、自分を説得する良い材料になるかもしれません。

Source: Wikipedia, Greater Good Magazine, DUKESPACE

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