限られた時間をどう使うかは、永遠のテーマです。特に、パンデミックによる自宅での仕事環境では、誘惑や家事が仕事時間に侵入してきて、集中力は途切れ気味

公私の区別をつけるのは簡単ではありません。

時間を無駄にする2つの方法

そんな時に目についたThe Atlantic誌の記事タイトルは「Stop Spending Time on Things You Hate(嫌いなことに時間を使うのをやめなさい)」。

筆者は、ハーバード大学で教鞭を執るアーサー・C・ブルックスさん。

ブルックスさんの「時間を無駄にする」という定義は、

時間を本当に「無駄」にする方法は2つだけです。

生産的な活動や啓発的な活動を締め出すことに躍起になる時、そして、好きでもないことに意図的に取り組む時です。

このように時間を無駄にすることは不安や後悔につながりますが、そんな時間は貴重なリソースなのです。もし時間の無駄をやめられるようになれば、楽しめるものや生産的なことに使える時間が増えます。

(引用終わり)The Atlantic

ブルックスさんは、デジタル中毒が孤独感や気分低下などにつながると知っていながらも、スマホに振り回されているという例を挙げています。

ほかに思いつくのは、勉強しなければいけないとわかっているのに、部屋の掃除や整頓をはじめる、仕事があるのに本を読みはじめるなど。

最優先事項に集中できず、その代わりに重要度や緊急度は低いけれど無駄だとか悪習とは完全には言えない活動をしてしまうことは、この範疇でしょう。

少なくともその時点では有益ではないとわかっていても、つい何かにハマってしまって重要なことが疎かになるという経験は誰にでもあります。

1. 趣味やダウンタイムもスケジュール

優先事項をスケジュールに組み込むことの重要性を強調するブルックスさんがすすめているのが、タイムブロッキング

こちらの記事で詳しく述べられていますが、基本的には「特定の時間枠に特定のタスクを割り当てることで、1日を最大限に活用する」方法です。

生産性を高める秘密兵器「タイムブロッキング」。その仕組みとは?

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ブルックスさんは、仕事だけではなく、趣味、レジャー、休憩、ボーっとする時間さえも含めるべきだと述べています。

それは、瞬間瞬間の判断に任せると、その時点での優先事項がかならずしも選択されるとは限らないから。

これには一理あります。私は常々、時間に余裕があったら趣味(お裁縫)をやろうと思っているのですが、前回実行できた時からすでに1年近く経っています。

それは「時間があったら」という前提でスケジュールに組み込んでいないから。空き時間があっても、数時間もない場合は、ミシンを出して制作することにはつながらないのです(涙)。

それに私は、仕事のタイムブロッキング(時間割)は、時間単位ではなく、「午前」「午後」「夕食後」と大まか。細かいタイムブロッキングではないのですが、自分のスケジュールに合っていてタスクが完了できればそれで良しとしています。

時間割に、趣味やレジャー時間も組み込んでみようと思います。

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2. 金銭的価値を考える

ブルックスさんは、時間の無駄遣いを金額に置き換えて考えてみることもすすめています。

たとえば、暇だしサブスクがあるからという理由で、あまり関心のない番組を見る傾向があるなら、その時間の金銭的価値を考えてみます。

その時間を、もっと有効なことに使えないでしょうか。

習慣の良し悪しは別として、コロナ禍でわたしが見直した傾向がありました。以前は、送料がもったいないと思って、オンラインで買ったものを店舗まで取りに行くことがありました。

でも、パンデミックで安全性や運転にかかる時間を考えるようになったのです。

送料を払うことと時間を費やして取りに行くことの価値を振り返って、送料を払う価値、つまり自分の時間を優先することの重要性に気がつきました。

このように時間の金銭的価値を考えてみることは、新しい視点をもたらしてくれることでしょう。

3. 注意力散漫を減らす方法

そのつもりはなかったのに、SNSやテレビをつい見始めて気づいたら何時間もたっていた。

有益ではないとわかっていても、つい何かにハマってしまって重要なことが疎かになったという経験は誰にでもあります。

その行動の原因の最大のものは注意散漫ではないでしょうか。

やるべきことから注意が逸れてしまい、楽しいことやラクなことへと意識は移り、気づいたらどつぼにはまっていたという状況です。

では、注意散漫にはどう対処すればいいのでしょうか。

Video: Ted/YouTube

マイアミ大学の脳科学者ジャー博士は、TEDトークで、特にストレスが多い状況で低下する注意力に対処するには、マインドフルネスのトレーニングが役立つと述べています。

瞬間瞬間の自分の状況に意識的に注意を向けるマインドフルネスによって、感情的に反応する心を抑えることができるそうです。

ある瞬間に自分の意識がどこに向けられているかに気づき、注意の方向を最優先事項へと戻すことができれば、時間の無駄も抑えられます。

4. 「その行動は、その思考は役立っているか?」と自問する

自分の注意散漫に気づけるようになったら、その時に自分に問いかけることも役立つでしょう。

Video: Chase Chewning/YouTube

最近観た、元ネイビーシールのマーク・デヴァインさんが出演していたポッドキャストに心に刺さった言葉がありました。

(成功のためのスキルの2番目は)思考の量と質と方向性に対して、コントロール力を養うことです。

これには、長時間1つのことに集中する能力を養うこと、正しくないことに意識が向かう時に、それを遮って思考の方向を変える能力を育むことが含まれます。

ネガティブな思考やいろいろなことに注意が散漫になるのではなく、質が高く、ポジティブで重要なことへの思考に対してそのような能力を養うことです。

注意散漫になって、ネガティブになって、間違ったことばかり考えている人たちは大勢います。

これを聞いた時に思ったのです。

自分の思考や行動に気づいたら、「今考えていることや行なっていることは優先事項だろうか、やるべきことだろうか」と、自問すればいいのだと。

その答えが「ノー」だったら、優先事項や正しい思考へ方向転換すればいいのです。もちろん、これは「言うは易く行なうは難し」なのですが、それでも試してみる価値はありそうです。

気が進まなくても苦手でも、やらなければならない仕事や家事はあります。

それは仕方がないとしても、それ以外で、嫌いなのに、重要ではないのに、役立たないのに、ついやってしまい時間を費やしているような行動はないでしょうか。

そんな行動に気づいて時間の無駄を減らしていくことができれば、まだ閉塞感の続く現状でも、少しずつ日々の充実感を上げてあげていくことができそうです。

──2021年6月20日の記事を再編集のうえ、再掲しています。

Source: The Atlantic, TED, YouTube(1, 2