【MB×高城剛 特別対談】なぜ僕らは地球上の3000人だけに本物の服を売るのか?ブランド神話の崩壊とコンテクスト消費の魔力

2023.03.16
by まぐまぐ編集部
アパレル業界の未来地図-ブランド神話崩壊とコンテクストの魔力
 

フューチャリスト、作家、広告プロデューサー、DJ、写真家、映画監督とマルチに活躍し続け、メルマガ高城未来研究所』の著者である高城剛さんと、関連書籍は200万部を突破し名実ともに日本一のファッションブロガーで、まぐまぐの個人配信読者数1位のメルマガ著者のMBさんが対談した。世界中のファッションブランドが崩壊の危機に立たされている今、この二人が発売する商品は、メルマガ会員読者を中心に、即日完売の状況が続いている。ブランドもメディアも個人が中心となる未来の物販の形が、二人の話から明らかとなってきた。

人気アパレルブランドに落胆して“転身”したMB

高城剛(以下、高城):今年は、いろんなジャンルで活躍しておられる方と対談できればと思っていまして、ファッションをテーマにお話を伺うならMBさんが適任だとご推薦いただき、本日はご足労いただきました。

MB :お声をかけていただいたときは、嬉しさもさることながら、正直、すごく驚きました。こうして目の前にしているからではなく、編集の方から「対談したい人はいますか?」と、聞かれるたびに、最初に高城さんが頭に浮かぶんです。でも、僕は普通にずっと前から高城さんのメルマガを拝読していて、あまりに知識が膨大で深いので、僕は恐れ多くて「会いたいけど、絶対に会えない人」と、自分の中で思っていたんですよ。

高城:今回は僕の方こそ、MBさんに現在、そして未来のファッションおよび業界動向について教えてもらいたいと思っています。その前に、MBさんがどのような方か、そのあたりからお話しをお伺いしたいと思うのですが、ご出身はどちらでしょうか?

MB:新潟です。地元の大学に通っていて、アルバイトとしてセレクトショップで販売員を始めたのが、ファッションの入り口でした。

高城:リテールの店舗に立つことから始めて、フロントエンドからスタートなさったんですね。その時、すでにカリスマ店員として注目されていたのでしょうか。

MB:いいえ全然。それほどではないですが…。

高城:では、もう少し控えめにローカルなカリスマ店員でいらっしゃいましたか。

MB:はい。それが近いかもしれません。

高城:北信越には首都圏とは違った個性を持つ面白いお店も多いですからね。

MB:そうですね。全国に50店舗ほど展開する会社で、次第にバイヤーをやり始めるようになりました。

高城:それなりに大きな規模の会社だったんですね。

MB:はい。そこでバイイング等をやらせてもらっていたとき、ふと思いつきでEC事業を自分で立ち上げようと思ったんです。

高城:何年くらい前、つまりスマホ前、後どちらになりますか?

MB:ZOZOがやっと出てきたかなぐらいのときでしたから、スマホ前ですね。それが結構当たって、売上をだいぶ作れたんですが給料は全然上がらない。その仕組みに疑問を感じて、外に出たほうがいいかなと思うようになりました。

高城:会社を辞めたということですか?

MB:はい。辞めるにあたって、なにをすればいいかを考えました。ちょうどそのころ、自分が好きなブランドがどんどん勢いを失っていくのを感じていて…。

高城:どんなブランドを見て、そう感じたのでしょうか?

MB:僕が感じたのは、アンダーカバーや、コム・デ・ギャルソンなどに代表されるデザイナーズブランドですね。ZARAとかが入ってきて、ガクッとどのデザイナーズブランドも売り上げが落ちてしまったんです。「いいものを作っているのに…。もうちょっと違う伝え方があるんじゃないか」と思いました。自分でどこまでできるかわからないけど、伝え方をもう少し工夫すれば、ファッションに興味がない人たちの関心を惹くことができるかもしれない。ファッションのすそ野を広げるために、自分でできることをやろうと思い、まずブログから始めたんです。
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高城:当初から志をお持ちだったんですね。ただ、ブログでは直接、収入にはつながりにくいですし、まだその時は会社に在籍中ですよね。アフィリエイトとかもやってらっしゃいましたか?

MB:はい、ごく最初はアフィリエイトもやっていました。ただ、無名の人間がブログを始めたところで、アクセス数はたかが知れています。数字を見たらやる気がなくなるだろうと思って、半年は見ないようにしていまいた。半年たってから初めてアナリティクスを開いたら…月間で40万PVぐらい取れていました。そのときは19記事しか書いてなかったので、意外でしたね。「これはもしかして商売になる」と思い、アドセンスを急いで付け、アフィリエイトを付けて…みたいに対応しました。当時の会社の収入よりちょっと減るぐらいまでになったので、辞めても大丈夫だろうと思い、発信することに専念する決断をしたんです。

高城:ブロガーとしてやっていこうと思ったのですか。

MB:最初にブログを始めた時は、アクセス数がこれくらいになったら次は有料メルマガをやって、ただ、その時はオンラインサロンって概念がなかったので、メルマガの会員数がこれくらいになったら、今度は個人コンサルのようなものをやろうとイメージしていました。ブログは1年ぐらいで100万PVぐらいになったので、有料メルマガをスタートしたんです。

高城:そうやって当初から計画を立て、お時間をかけながら、着実に拡張していったわけですね。そうしたビジネス観のようなものは、大学で学ばれたのですか?

MB:大学では経済学部でしたが、恥ずかしながら7年間も通っていて、大学ではなにも学んでいないに等しいです(苦笑)。ただ、ドラッカーはすごい好きで、ドラッカーのマネジメントを大学の時にずっと独自に学んでいたのが、今につながっているのかもしれません。

高城:ローカルのカリスマ店員とドラッカーのミーティングがここで起きたのは面白いですね。ちなみに、MBさんはご本名じゃないですよね?

MB :もちろんです。

新潟のブロガーからファッションカリスマに。MBの自分戦略

高城:なぜ、MBと名乗るようになったのですか。

MB:色々と理由はありますが、まず変な名前にしたいなと思ったんです。最初に出した書籍が象徴しているのですが、僕のファッションに対するアプローチは論理性です。論理的にファッションを語ることで、いかなる反論が来ても打ち返せるように隙無く、理屈を作ったんです。でも、そうすると可愛げがなくなって、受け取り方によっては感じが悪いかなと思ったんです。読んでくれる人がいじれるところを作っておきたくて、名前で遊ぶことにしたんです。

高城:なるほど、色々と理由があるわけですね。

MB:はい。カッコつけすぎると良くないかと思いつつ、カッコ悪過ぎてもブランディングが下がるかなと思ったんです。それで、人の名前っぽくなくて、「これなんだろう」って2ちゃんねるとかでいじってもらえそうな、それでいて、一般にも受け入れられる単語はないかと考えました。

 MBって、つまりメガバイト。自分のやってることは人にたくさん認知してもらうことだけど、物販もしておらず、PV以外にどれだけ浸透したか基準が欲しいなと思いました。それで、一般単語を名前にすれば、検索エンジンでメガバイトを超えて僕の名前が来たなら、それは一定量、社会に僕の名前が浸透しているってことの証左になると考えました。ところが意外と簡単にメガバイトを抜けちゃったので、目論見は外れたんですが(笑)。

高城:MBと名乗り、ブログで100万PVを稼ぐようになったころは、まだ新潟でしたか?

MB:はい。まぐまぐの方から「事務所で話しませんか」と連絡がきたとき、田舎者だからちょっと緊張しましたよ(笑)。

高城:まぐまぐの編集者はもちろん、読者さんもMBさんが新潟在住とは知らなかったんですね。

MB:はい、全く。誰にも言っていませんでしたし、言う必要もなかったですから。

高城:ブログやメルマガを通じて、一種の社会ファッション啓蒙活動みたいなことをしておられて、それがたくさんの人に響いたということですよね。その姿勢は今も基本的に変わらないと思うのですが、現在の肩書は?

MB:肩書き…。いつも迷うんですよ。聞かれるたびに困っています。

高城:ファッションプロデューサーとかインフルエンサーとか色々言われると思いますが、ご自分ではどう名乗ることが多いですか?

MB:説明するのが面倒なので、ファッションプロデューサーと言うことが多いですが、なんかいつまでたってもしっくりこないです。

高城:肩書は、MB by MBでいいんじゃないでしょうか。メルマガの後には、YouTubeでしょうか? ほかのSNSとはどう関わっていらっしゃいますか。

MB:もともとメルマガと書籍が長いので、実はSNSにはあまり強くなくて。他にはファッション関係の漫画原作などもやらせていただきました。それをずっと生業にしていたんですが、今から3年前ぐらいにYouTubeを始めました。

高城:なにかきっかけはあったんですか?

MB:それまでYouTubeが嫌いだったんですよ。なんというか…素人っぽい人たちがわちゃわちゃやっている感じがちょっとダサく見えていて。でも、あるとき、母親が好きなユーチューバーの話とかを僕にしてきて。

高城:お母様が?

MB:もう60過ぎなので、びっくりしましたね。「世界についていけていない、かっこ悪いのはたぶん僕の方だ」と考えを改めました。それで、にわか作りの動画をアップしたら、そこそこの再生回数が稼げたんです。僕はだいたいどれもそうなんですが、やるならば毎日更新してやり続けます。そうすることで、分かっていくみたいなプロセスが好きなので。どれが当たるのか、はずれるのかを一年間、自分で編集して自分で撮影して…を繰り返しながら学びました。YouTubeを始めてから、またちょっと認知してくれる人が増えた感じがしますね。

高城: YouTubeを見ていると、お話が面白いなと感じますから、やはり店舗で磨かれた会話術があるのでしょうね。お店で、ずいぶんとたたき込まれたんでしょう。

MB:そう思います。当時は大変だったんですけど、その経験があってよかったです。

高城剛が始めた個人ブランド

MB:僕も高城さんのメルマガの読者なのですが、高城さんもご自身のブランドを作ってメルマガ内で販売されていますよね。

高城:数年前から、僕も自分でカバンや洋服を作るようになりました。もともと1シーズン、コムデギャルソンだけで100万円以上買う消費社会の申し子でしたが、ある時、すべてのモノを整理して身軽になって高等遊民のように生き始めました。そこで世界中を周って、いろんなツールをもっと小さくしたいと感じていました。その方が、移動が楽になり、体験できることが増えるからなんです。

 ところが、そんなライフスタイルのためのカバン1つとっても自分に合うものがない。服もしかり。また、僕の友人はかなり変わり者が多くて、高級レストランに行くのも、短パンとサンダルで来ちゃったりする(笑)。僕を含め、そうした人たちのために、ひとりひとり計測するバックパックや、スーツを着ない人たちのためのスーツなどを作り始めました。そんなやむを得ない理由から、自分で服や鞄を作り始めたら、欲しいと言ってくれる人が出てきました。

 ただ、僕の場合は、お客さんもかなり限定しています。普通はいかに拡張させるかを考えますが、服に限らず本も映画も、大体2000~3000人に届けることだけを考えています。

MB:はい。

少数の人と共感できる世界で幸せな商売をする

高城:東京のストリート・ブランドでも、少し拡張しただけでダメになったのを、つぶさに見てきました。有名になったり大きくなると、言葉にできない何かが失われるんです。だから、作り手も使い手もお互いに暗黙の了解のようなものが大事で、その限界数を2000~3000人と決めています。裏路地にある看板のない店のように。

 一般的に日本の労働人口はおよそ7,000万人ぐらいいると言われていますが、そのうちイノベーターと呼ばれる人は多めに見ても3%。つまり210万人です。さらにそのうちの3%となると63,000人ぐらいで、これが一応、僕の中での最大顧客数だと考えています。自分の書籍を見ると、ダウンロードまでも含め、数年で5万人前後の方々にお読みいただいています。その最大63,000人からさらに3%の2,600人前後の方々だけに向けてモノを作り、売っています。

 イノベーターのなかのイノベーターのなかのイノベーター。この2,600人前後の方々は、僕同様、ファッションに限らず、新しい生き方を探そうとしている人たちで、だからといって機能性はもちろん、デザイン性も犠牲にしない。僕のファンであるのかもしれませんが、それ以上に、ご自身や家族、ご自身の仕事や環境が、よりベターになることを願ってやまない人たちです。僕はその2,600人前後の方々とご家族、そして続く6万人の方々だけに、あらゆる発言をし、モノを作ってるんです。

 嬉しいことに、その2,600人前後の方々は、毎月のように僕が作った商品に1万円程度お使いになっていただけるか、年に一回10万円程度の商品をお買い求めいただけます。そうすると、年間売上が3億円 を超すんです、店舗もなければPRすることもせず、社員ひとりもいないブランドが。だから、もう売り上げが2億後半になったら止めないとだめだと考えます。とにかく、どう売り過ぎないかを考えますね。そういえば、もう4ヶ月近く何もリリースしてないことを、いま思い出しました(笑)。

MB:すごくよくわかります、その話。もう完全に勝手にシンパシーを抱いています。僕がやっていることも基本的に同じなんですよ。僕も、最近はやっと解放したんですが、それまではクローズでずっと、そのメルマガを読んでいる人じゃないと買えない仕組みにしていました。それによって自分のストレスも軽減できるんですよ。ちゃんと理念や思想を共有した後に買ってもらえるから、着こなし方とかを別にあえて言わなくても実践してもらえる。買う側にとっても外れが無いんです。

 誰かれかまわず販売すると、そうはいかない。僕の思想を知っていて、「こういう着こなし方がいいですよ。これを使うといいですよ」というのが分かっている人たちに向けた販売だから、互いの安心感が違うんです。

高城:基本的にブランドビジネスは、8割から9割はリピーターが買っていて、そのブランドが分かっている人たちだから、自分が持っているアイテムとどう組み合わせればいいかも分かるんですよ。つまり、大方はファッション・リテラシーがある人たちがお店に来るわけです。

 ところが、ファッションとは何かというところから教えなきゃならない人たちも店には来るので、理解ある人達とギャップが出てしまう。すると先頭の人たちにとっては面白みが無くなってしまいますよね。僕もそんな経験が山のようにあります。ですから、ファッションの面白さを伝えられる人たちに向けて、MBさんは、どんどん秘伝のタレみたいに成熟した方に向けてものづくりをすると、より面白い物が出来ていくでしょうし、MBさんとしても心地よい関係が築けているんだろうと思いますね。

 僕の場合はファッションだけじゃなく、本だったり、映画だったり、旅行先だったり、最近はコーヒーだったり、モバイルハウスだったり、健康管理だったりと、横にずっとスライドさせてきました。正体もわからないように。でも、読者が求める生活を豊かにするあらゆるものをやっています。少し文脈は異なりますが、アルマーニもブルガリもヴェルサーチも、服だけにとどまらず、レストランやホテルをやっていますよね。同じ顧客に対して横に広がって、水平展開する一種のユートピア思想なんです。ファッションなどのツールを通じて、皆でより良い世界観を楽しむために。

物だけを売る時代からコンテクストを売る時代へ

MB:なるほど。僕は店舗での販売が長かったこともあって、ECサイトはある意味で…極端な言い方をすれば、嘘つきだなとずっと思っていたんです。店舗での販売は「この人はこの間来てあれを買ってくれたから、今日はこれをお勧めしよう」とか「この人はこういう好みだから…」とかっていう、教育だったりを踏まえて初めてセールスが成立していたし、そこでコーディネートも成立して、その人の満足度が高くなります。でも、ECは売りっぱなしですよね。誰がどういうリテラシーを持っているか、誰がどういう段階を踏んでいるかも分からないのに、一律に販売する。売ったきりっていうのは、これは嘘だなと思ったんです。

高城:店舗のご経験ならではですね。だから僕は「外へ動くこと」を前提に商品開発しています。それを着たり持ったりして、どこにどのような気持ちで何をしに行くのか? そうすると、面白いことに偶然にも僕自身がお目にかかる機会も増え、たまにイベントなどを開催することもあって、みなさんのお顔もそれなりにわかるようになってきます。

MB:そうですよね。顔がわかると作りやすくなります。イベントにみんな来てくれるので、「この人たちがいま困っていること」を形にしていけばいい。だから、すごくやりやすいし、みんなも困らなくなる。

高城:インターネットの普及以降は Googleという検索メディアの時代があって、ソーシャルメディアになってリテールメディアという順に、ウェブは進化してきました。広告も同じように移行し、いまはリテールメディアに広告を出稿する時代です。このリテールの次に来ているのが、自らがリテールメディアになる動きで、その次が自らがリテールメディアになる個人です。MBさんが「こういう風に着てくれ」とか、「こう着こなすといい」というのは、個人がお届けする情報です。つまりコンテンツじゃなくて、ある特定の個人が包み込んだコンテクストがついた物を、人は買っていると思うんですよ。これが、新しいスタイリングなんでしょうね。

MB:仰る通りですね。僕もコンテクストだと思います。
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高城:いまやアパレルに限りませんが、その商品がどう作られているかという背景、つまりコンテクストが重要になっていますよね。ミレニアル世代以降は生まれながらにしてモノと情報に溢れているので、モノを選ぶ真贋力が高いのが特徴です。先進国のZ世代はその傾向がさらに顕著で、ブランドより環境に配慮しているかどうかを見極めます。

 一方、業界あるあるですが、ファッション評論家がエシカルだとかサステナブルと言っても、そのファッション評論家が環境に配慮しているなんてとても考えられないライフスタイルが垣間見えるわけです。「じゃあ、あなたはエシカルなの?」とその嘘を見抜くんです、ミレニアルズ以降の世代は。だからいわゆるメガブランドは、まだ先進国ではなく文化的知見も遅れている中国にフォーカスし、シフトしているわけです。いまは、20年遅れて届いたストリートカルチャーの蒐集に必死です。それ以前の狩り場は日本でしたし、僕もその一端でLVMHなどのメガブランドの仕事もしていました。それこそ20年前の話ですが。

 きっかけは、15年前に起きたリーマン・ショックです。先進国の賢い人は気がつき、米国に懇願され、助けるためにバブルを作った中国人は、見事に罠にかかって古くなったファッション・アイデアを高額な値段で買わされ続けています。

どこで作った服なのか?「ファーム to クローゼット」を追求

高城:そういえば、10日前までニュージーランドにいまして、メリノ種の羊を見てきました。そこでの発見は、羊の育て方も大事ですが、シェイパーが重要ということ。どうやって痛みがなく、きちんと刈っていくかが大事で、髭を剃るシェービングだと思ったら、形を整えるのでシェーピングというそうです。僕も現地で優秀なシェイパーを見つけてきました。

MB:刈る人によってウールの質が変わるんですか。

高城:そうなんです。実際に触ったりして、違いを実感しました。僕も「やってみろよ」と言われましたが、そう簡単にできるものではありません。

MB:高城さんは現地に足を運んだり、実践することに労力を惜しみませんよね。

高城:先ほどお話ししましたように、僕は「外へ動くこと」を前提にしています。食の分野ではリーマンショック以降、「ファーム to テーブル」という動きが生まれました。日本では、東日本大震災から顕著になりました。簡単にいえば、生産者からテーブルに届くまで、全てのトレーサビリティがはっきりしている食事です。僕がやっているのはいわば、「ファーム to クローゼット」なんです。今回はたまたまメリノウールですが、トレーサビリティがはっきりしていることが大事だと考えているので、一貫して自分で見てきたものだけを販売します。

 かつてSNSのない時代には、ブランドネームや雑誌に引っ張られていて、他の人が持っていない単なる限定品のモノを持っているかどうかが一種のアイデンティティでした。でも今は何を考えているかを誰もが発信できる。自分のアイデンティティを服やモノではなく、世に問える時代に変わったわけです。それにともない、メガブランドを先進国の人たちが買わなくなり、ターゲットは中国と東南アジアの人たちになりました。その上、近年は限定品に驚くほどの高値がつき、いわゆるバブル状態ですが、僕は「あらゆるバブルは金融緩和の影響で、そろそろ曲がり角」だとお伝えしています。米中関係も変わりましたしね。

MB:なるほど。僕もそう感じますね。

取材/文:橘川有子

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……と、ますます面白くなってきた対談は、これから以下のような項目が続きますが、無料で読めるのはここまで。

【ファッションバブルの終焉とコミュニティ販売の勃興】
【ファッションが健康に及ぼす影響】
【ブランドはもはや単なる焼印】
【次に来るのは個人が運営するリテールメディア】
【オフラインこそ価値が出る時代へ】

気になるこの続きは2023年3月中に高城剛さんの2023年3月20日配信のメルマガ、または、MBさんの2023年3月26日配信のメルマガで読むことができます。是非ご登録してご覧ください。

高城剛(たかしろ・つよし)
Louis Vuitton、SONYなど100本を超えるCMやミュージックビデオ、連ドラなどの監督およびプロデュースを務める。東映アニメーション社外取締役や総務省情報通信審議会専門委員など歴任後、2008年より拠点を欧州へ移す。著書は『不老超寿』『2035年の世界』『いままで起きたこと、これから起きること。』など、累計100万部を超える。著書の販売やカスタマーレビューにおいて最も成功をおさめたKindleダイレクト・パブリッシングの著者に対して授与するAmazon KDPアワードを受賞。2022年には自身が脚本/監督/撮影を務めた初の長編映画『ガヨとカルマンテスの日々』公開した。 

MB(エムビー)

ファッションプロデューサー/ファッションバイヤー/ファッションアドバイザー/ファッションブロガー/作家。ユニクロをはじめとするファストファッションを対象にした論理的な「お金を使わない着こなし法」が注目を集め、書籍、ブログ、メルマガ、YouTubeなど、さまざまな媒体で情報を発信。書籍『最速でおしゃれに見せる方法』や漫画『服を着るならこんなふうに』など、書籍の発行部数は累計200万部を突破し、有料メルマガは配信メディア「まぐまぐ!」にて個人配信者として1位をマークしている。

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