老舗って何年?100年? 「先祖代々の繁盛店」「信用できる要素必要」…今年の100周年企業は2943社

金井 かおる 金井 かおる

 2021年が始まりました。今年、創業10年や50年など節目の年を迎える企業は全国に13万9296社、このうち100周年企業は2943社(帝国データバンク調べ)に上ります。100年と聞くとれっきとした老舗のイメージですが、そもそも老舗に経過年数の定義はあるのでしょうか。

辞書には「先祖代々の繁盛店」

 老舗の読み方は「しにせ」「ろうほ」の2通り。広辞苑には「先祖代々の業を守りつぐこと。先祖代々から続いて繁盛している店。またそれによって得た顧客の信用・愛顧」。三省堂国語辞典第七版には「何代も商売を続けている、古い店」。

土地柄や業種も影響?

 全国の新聞、放送社に記事を配信する共同通信社(東京都港区)が発行する「記者ハンドブック 新聞用字用語集 第13版」。各社が準拠する同書にも具体的な数字はありませんでした。

 神戸新聞社内で複数人にヒアリングしたところ、いずれも「経過年数の明確なルールはない」。老舗と銘打った過去の連載は創業50年以上の企業が対象でした。また、同業態内で営業年数の長い企業や店舗には老舗を使用することも。例えば「40周年を迎える老舗ライブハウス」等。

 土地柄や業種も影響するようで、「京都のお茶屋さんで70年と聞いても短く感じる。しかしネジ製造で70年と聞くと歴史を感じる」。「5年や10年では使わない」「自分の年齢(30代)より若いのに老舗と言われるとちょっと…」という声も聞かれました。

ある日のニュースでは…

 2020年12月下旬のある日。ニュースサイト「Yahoo!ニュース」内で老舗と検索すると、午前中公開分だけで、テレビ、新聞、ネットニュース等11本の記事がヒット。一番若い年数は33年でした。

 老舗劇場33年、老舗漢方薬局100年、老舗食品会社132年、老舗和菓子店360年、老舗テレビ局65年、老舗自動車メーカー112年、老舗自動車メーカー117年、老舗かまぼこ店151年、老舗企業55年、老舗ブランド116年、老舗玩具店158年。

専門家「信用できる要素が必要」

 日本漢字能力検定や、一年の世相を表す「今年の漢字」の発表で知られる日本漢字能力検定協会(京都市東山区)。同協会の現代語研究室室長を務める佐竹秀雄先生に語源を解説してもらいました。

 「『しにせ』は『しにせる(仕似せる)』の連用形からの転成名詞です。『仕似せる』の『仕』は『する』の意なので『似るようにする』。老舗の場合は、創業者、祖先、親のやり方と同じになるようにし続けてきたことであると、語源上はなるわけです」

 「その理屈から言うと、老舗というには、何代か続いていないとしっくりこないことになるでしょう。また、意味に関しても、『あそこは老舗だから』という使い方をするときは、単に『古い』というだけでなく『信用できる』という要素が必要だと思われます」

信用調査会社では

 企業の信用調査会社、帝国データバンク(東京都港区)の担当者にも聞きました。

 「弊社では一般通念上での”老舗”の認知度も鑑み、対外的に『創業または設立時より100年以上が経過している企業』と定義しています」

 ただし、ドローンなどの新興産業の場合は、先駆者=業界の老舗という考え方もあるそうです。

 ちなみに帝国データバンクは1900(明治33)年3月3日創業。2020年に節目の120年を迎えた“老舗企業”です。

サクラクレパスや大塚製薬工場も

 今年100年を迎える企業や店舗が誕生したのは1921(大正10)年。有名人では「サザエさん」の原作者長谷川町子さん、俳優の三船敏郎さん、森光子さん、ミヤコ蝶々さんらが生まれた年でもあります。

 創業100周年のアニバーサリー企業の一部です。

 関東では、大手電機メーカーの三菱電機(東京都千代田区)や医療機器大手のテルモ(東京都渋谷区)、「なんでも酒やカクヤス」でおなじみのカクヤスグループ(東京都北区)。

 関西では、自転車部品大手のシマノ(大阪府堺市)や「クーピーペンシル」のサクラクレパス(大阪市中央区)、神戸っ子には「コープさん」の愛称で親しまれるコープこうべ(神戸市東灘区)など。

 また、オロナインH軟膏や経口補水液オーエスワンで知られ、大塚グループ発祥の大塚製薬工場(徳島県鳴門市)も創立は1921年9月1日です。

 新型コロナウイルスの感染拡大により深刻な打撃を受ける日本経済ですが、「何代も商売が続く」企業が1社でも多く生まれる2021年になりますように。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース