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祖母を手にかけた孫「ずっと独りぼっちと思っていた」 2年後の今

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境遇を知った人が送ってくれたクマのぬいぐるみを手にする女性。「一つ一つの贈り物に励まされた」と言う=神戸市内で2021年12月、春増翔太撮影
境遇を知った人が送ってくれたクマのぬいぐるみを手にする女性。「一つ一つの贈り物に励まされた」と言う=神戸市内で2021年12月、春増翔太撮影

 2年前、たった一人で介護していた祖母を手にかけた女性が神戸にいた。当時、まだ21歳。周囲にいた叔母や父ら親族から追い詰められ、始めたばかりの仕事と介護の両立に悩んだ末の事件だった。

 1年後の2020年9月、執行猶予付きの判決を受け、女性が戻った社会は新型コロナウイルス下にあった。誰もが人との接触を避け、つながりが断ち切られてしまいそうな、そんな未知の社会で一から紡ぐ初めての1人暮らし、就職、そして償い――。彼女の「今」を見つめた。【春増翔太/社会部】(「なぜ孫は祖母を手にかけたのか」はこちら<https://mainichi.jp/articles/20201028/k00/00m/040/074000c>)

 黒く短かった髪は、長く明るい色に変わった。冬空に赤いセーターが映える。静かに墓石に水をかけ、丁寧にタオルで拭いた。かつて温めたタオルで体を優しく拭った祖母との日々を思い出すように。

 2021年12月、兵庫県内にある墓地。23歳になった女性は、2年前に自らが手にかけ、その生を絶った祖母と向き合った。

 「最後にやったことを含めて『ごめんね』って言いました。あとは『ありがとう』って。介護は大変だったけど、小さい頃からのいい思い出もあるので」

 多めに立てた線香から白い煙が漂い始め、女性は墓石の脇に刻まれた祖母の名と命日をじっと見つめた。「令和元年十月八日」。女性が逮捕され、社会から隔絶された日でもある。

 「あの日のことも思い出しました。でも、ようやく来られて良かった」。去り際、小さく、はっきりとした口調で言った。「また来るね、おばあちゃん」

 社会人1年目だった19年10月、神戸市で同居していた認知症の祖母(当時90歳)を殺害した。周囲には叔母ら親族もいたが、ほとんど1人で介護を担っていた。慣れない仕事との両立で心身共に追い込まれ「限界だった」。介護を始めて5カ月後、いつものように祖母にののしられ、思わずその口にタオルを詰めた。

 自ら110番をし、すぐに逮捕された。警察署の留置場から拘置所へ。1年後の20年9月、殺人罪による懲役3年、執行猶予5年の判決を受けた。裁判長は「社会内で更生が期待できる」と述べた。社会に戻ったその時、世間は見知らぬ「コロナ禍」の中にあった。

抱きしめるような言葉

 拘置所にいる頃から時折流れるラジオで感染症の流行は知っていた。一時は面会も制限された。判決後…

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