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子どもっておもろい・作文のチカラ

作文を通して子どもを理解しようとする先生と子どもの交流を描きます。

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「先生しんでくれ」 紙切れ渡され、こみ上げた「ありがとう」

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絵・松下志織
絵・松下志織

 太田先生しんでくれ      6年 ハルト

 担任していたハルトから、この一文が書かれた紙を受け取った津田(旧姓・太田)久美子さん(43)がおもわず口にした言葉は「ありがとう」。強がりも皮肉も含んでいない、心からの言葉だった。

 「絶対に先生をやめてやる」。教師としての自信が持てず、ひそかにそう心に決めていた新任時代、津田さんは作文教育に出会った。当時、担任したクラスではけんかやもめ事が続き、注意しても子どもたちは口ごたえばかり。「なめられてはいけない。もっと厳しくしなければ」と焦っていた。

 同僚に誘われて、週末に大阪市内で開かれていた「なにわ作文の会」の勉強会に参加すると、ちょうど同じようなタイプの子どもについて報告されていた。「大変だな」と思って聞いていると、参加していた他の教師たちは、その子の書いた作文を読んで「おもしろい子やな」と笑っている。「先生たちが楽しそうに子どもの話をしていて。『なめられたらあかん』と思っていたのに、これでいいんやなとほっとしました。月曜からまた学校に行けそうだなと」

 ハルトは中堅にさしかかったころに担任した児童だ。書けるひらがなは9割程度。自尊感情が低く、通学用の帽子のつ…

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