「先生しんでくれ」 紙切れ渡され、こみ上げた「ありがとう」
毎日新聞
2024/3/19 05:30(最終更新 3/19 12:09)
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太田先生しんでくれ 6年 ハルト
担任していたハルトから、この一文が書かれた紙を受け取った津田(旧姓・太田)久美子さん(43)がおもわず口にした言葉は「ありがとう」。強がりも皮肉も含んでいない、心からの言葉だった。
「絶対に先生をやめてやる」。教師としての自信が持てず、ひそかにそう心に決めていた新任時代、津田さんは作文教育に出会った。当時、担任したクラスではけんかやもめ事が続き、注意しても子どもたちは口ごたえばかり。「なめられてはいけない。もっと厳しくしなければ」と焦っていた。
同僚に誘われて、週末に大阪市内で開かれていた「なにわ作文の会」の勉強会に参加すると、ちょうど同じようなタイプの子どもについて報告されていた。「大変だな」と思って聞いていると、参加していた他の教師たちは、その子の書いた作文を読んで「おもしろい子やな」と笑っている。「先生たちが楽しそうに子どもの話をしていて。『なめられたらあかん』と思っていたのに、これでいいんやなとほっとしました。月曜からまた学校に行けそうだなと」
ハルトは中堅にさしかかったころに担任した児童だ。書けるひらがなは9割程度。自尊感情が低く、通学用の帽子のつ…
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