棺に入った姑の顔を見た瞬間、私は泣いた。誰一人惜しむ言葉を発しないお葬式/かづ

アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。現在は夫婦二人と3ニャンとで暮らしています。今から20年以上前、私の嫁時代の体験を思い出しながら書いています。

前回の記事:姑の死...ついにその時が。親戚一同いわく「業の深い人だった」/かづ

棺に入った姑の顔を見た瞬間、私は泣いた。誰一人惜しむ言葉を発しないお葬式/かづ pixta_77920025_S.jpg

姑の葬儀で葬儀場の宿泊ルームに泊まった舅。

そのリュックからはごっそりとウイスキーの小瓶やおつまみの小袋が出てきた。

それらを取り出し、「じいちゃん...。このピーナッツも、1袋50円なんやで。」と説明しながら、私の心の中は情けなさでいっぱいだった。

なんで、何でもタダだと思うかなぁ!

後で確認して、全部請求されるじゃねーか。

ただでさえ舅姑は互助会費を全額払いこんでいなかったので、清算時にはその残金も支払わねばならず、物入りな葬式なのだ。

なのに、なんでそんな無駄な物に4千円近くも払わなきゃなんないんだよと、呆れるやら情けないやら。

それも本来なら自分の妻の葬儀なので、落ち込んでいたり悲しんでいたりとするであろう状況で、ましてや喪主である立場にも関わらず、身体が不自由だからと息子に代行して貰っている状況を考えれば、もう少し他に考える事があるだろう。

夫は夫で「喪主代行で挨拶するんやけど、何言うたらエエのか全く解らん...」と、頭をかかえてる。

そうこうしている間も葬儀の時刻は近づいてくる。

夫はメモ用紙を前にペンを握ったまま、一文字も書いていない。

葬儀社の方からは入れ代わり立ち代わり、焼香順であったり弔電が届いただのとひっきりなしに声がかかる。

でも夫はそれどころじゃない。

私が右往左往している間、舅は椅子に座ったままで親戚たちと世間話をしていて、夫は控室のテーブルで頭を抱えたまま。

たまらなくなった私は夫からペンを取り上げ、サラサラと書いた。

「生前の母は、毎日をハツラツと活動し、社交ダンスに観劇会・旅行も大好きでした。うんぬんかんぬん・・・これでイイんじゃないの?」

告別式10分前になり、前日同様続々と参列者が来て下さる。

そして、これまた前日同様、親戚が誰も来ていない。

夫はオロオロオロオロ。

私は「昨日みたいに5分前には、来るんじゃないの?」と慌てもしない。

またもや私の弟夫婦が来て「また、誰も来て無いんか???」と言い、「姉ちゃんも、大変やな...」と言った。

聞くよりも実際に目で見た方が分かる。

告別式も終わりに近づき、お棺に花を入れる時になった。

親戚たちは口々に姑の顔をしげしげと見て、あまりの風貌の変わり様を指摘した。

「いや~、いつも綺麗にしてはったのに、髪の毛なんか真っ白やね~」

「いつ見てもバッチリとお化粧してたのに、見る影も無いわ。あないになるもんなんやね~」

「そりゃあ、なんて言うても70過ぎやもの。化粧も手入れもしてなかったら、そんなもんやで」

「相当してはったもんな~」

姑が元気な頃は、常時バッチリ化粧をしていた。

そして、親戚たちや友人知人、近所の方にまで「私くらい(綺麗にするには)美容にお金掛けるのは当たり前」と言っていたので、周りからは「アレだけ金掛けてりゃ、そりゃそうだろうよ」と陰口を言われていた。

なんせ姑は「高い基礎化粧品を使ったり、美容会に行ってお手入れをするのは女として当然。私くらいの歳になって、金が無いなんて才覚の無い女の証拠! これくらいの事は、み~んなしていらっしゃって当然ですわよね~、皆さん♪」と言ってはばからなかったので、相当嫌われていたが、本人は「今日も、羨望の眼差しで見られたわ♪」と、ご満悦だった。

(そうやって、着々と貯金を食い潰しちゃったんだけどね。)

姑の具合が悪くなったと聞いてから、親戚は姑とほとんど会っていなかったので、このお棺の中の姑を久しぶりに見る訳だ。

要するに、姑の兄と姉以外、誰も見舞いには来なかったのだ。

けれどもその姑の兄と姉も、別に見舞いに来てくれた訳ではなく、まだ記憶が残っていた時に、姑が「兄ちゃんや姉ちゃんに長い事会ってないから、心配しとると思う...」と言うので、私が数回頼み込んで姑を連れて行って会わせていたと言うだけだ。

誰も心配もしていないし、誰も会いたいなんて言って来なかった。

認知症を発症してから亡くなるまでの6年間、電話の1本も無かったのだから。

なので、姑の兄・姉ですら、認知症が本格的に進みだしてからの姑を見るのは初めてになる。

久しぶりにマジマジと見た姑は、それはそれは元気な頃と比べて別人だった事だろう。

最後にお花を入れる時、姑の顔を見た瞬間、私は泣いた。

誰からも、惜しまれもしていなかったから。

もしかしたら中には惜しんだ人がいたのかも知れない。

でも、誰も惜しむ言葉は発しなかった。

『お義母さん。貴女はみんなから愛され、みんなから尊敬され、みんなから憧れられていたと思っていたんですよね。でも実際は、見舞いにも来ない、電話1本して来ない。通夜にも告別式にも、一般の弔問客よりも遅れて来る親戚と、お義母さんが「私には友達がたくさんいるのよ」と言っていたにもかかわらず、連絡をしたら「友達じゃないから」と言って来てくれない方々。まだ、この式場にいますよね? どこからか見ていますでしょ? こんな筈じゃ無かったと思っていますか? もっとたくさんの方が駆け付けて、みんな泣いてくれると思っていましたか?』

そう思うと、涙があふれた。

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かづ

​ブログ「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」の管理人で、Ameba公式トップブロガー。 ​基本専業主婦の​50代​。子育てが終​り、​夫と4ニャンと暮してい​る​結婚36年目です。 ​一人っ子の夫と結婚し、舅姑の理想の嫁でなかった私の結婚生活においての戦いを思い出しながら書いています。

※毎日が発見ネットの体験記は、すべて個人の体験に基づいているものです。

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