森永卓郎さんが教える「年金13万円時代」を生き抜く術

軽妙な語り口でおなじみの森永卓郎さんは、実は「余命6カ月」と宣告された糖尿病を克服した経験の持ち主。そんな困難を乗り越えたからこその提言を聞いてきました。「日本経済」「年金」、そして「糖尿病の克服」。今回はこれからの年金について、です。

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年金13万円時代に備え働ける心積もりを

──経済が失速すると、私たちの暮らしを支える年金はどう変化していくのでしょう。

高齢化社会で年金の支給額が下がっていくのはやむを得ないことですよ。賦課方式ですから。

ただ、人口構造の問題以上に、日本経済が転落していくと、そこに巻き込まれる仕組みになっているのでもっと下がることが考えられます。実は、安倍政権が発足してから、実質賃金は合計5%ほど下がっています。庶民の賃金が下がれば、当然年金も下がります。これで経済が良くなるはずがないじゃないですか。一方で、企業の内部留保は400兆円を超え、手持ちのキャッシュも200兆円を超えるっていうおかしなことが起こっているんですね。かつて日本の労働分配率(※)は、労働者にまわる割合が世界最高水準でしたが、現在は世界最下位にまで落ちているんですよ。だから、生活の守り方を、現実の延長線上とは違うところで考えないといけないんだと思いますね。

※労働分配率とは、経済学用語の一つで、企業において生産された付加価値全体のうちの、どれだけが労働者に還元されているかを示す割合

 

──リスクを考えた上で、備えが必要ということですか?

そうなんです。

例えば、いまの厚生年金の標準モデルは、夫婦で月22万円なんですよ。それが20年先には、月13万円まで減るんです。しかも、いま40歳前後の人たちが高齢期を迎えるときには、女性の2割が100歳まで生きる。いま65歳ぐらいの人も、かなりの確率で100歳まで生きるんですよ。そうするとね、年金の支給額が急速に下がるわけです。長生きは喜ばしいんですけど、貧乏の長寿が幸せかっていうとそこはそこで大きな問題になるんですね。

 

──そうなると、少しでも長く働く必要がありそうですね。

いますぐ働かなくてもいいけど、いざというときに働ける状態を作っておくことは重要だと思います。私は一昨年(2017年)、定年を迎える年だったんですけど、周りを見ると、60歳過ぎてからお金のために働き続けるというのはあまり幸せではないなと思うんです。好きな仕事をしながら、たいした給料は得られないんだけど楽しく生きるというのが、精神的にも肉体的にも健康の面でもいちばんいいシナリオだと思うんですよね。好きなことをして暮らしている人がいっぱいいる。それが理想の老後なんじゃないかな。

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取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/松本順子

 

 

<教えてくれた人>
森永卓郎(もりなが・たくろう)さん

1957年、東京都生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒業。獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。『消費税は下げられる!』『雇用破壊』(角川新書)、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)など著書多数。


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『なぜ日本だけが成長できないのか』

(森永卓郎 /角川新書)

約20年で日本の経済力は3分の1以下に縮小。原因は人口減少や高齢化なのか? グローバル資本とその片棒を担ぐ構造改革派が「対米全面服従」を推し進めた結果、日本は転落。格差社会を生み出しました。自身の経済研究の集大成であり「本書執筆後は孤立を覚悟した」という渾身の告発書。

この記事は『毎日が発見』2019年5月号に掲載の情報です。

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