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アメリカのコミュニケーション・ツール開発企業Slack(スラック)は、四半期に一度行っている調査結果から、「リモートでの従業員体験レポート」を発表しました。これは、主要6カ国のナレッジワーカー(知的労働者)を対象にしたアンケートがもとになっています。
このアンケートの結果から、企業の経営陣と従業員との間に、労働環境に関する意識のズレが生じていることが分かります。この記事では、企業の人材確保にも影響する、その意識のズレについて解説します。
Slackはビジネスチャット・ツールを提供する企業で、3ヵ月に1回のペースでビジネスパーソンの意識調査を実施しています。今回は7月28日~8月10日の期間に、アメリカ、オーストラリア、フランス、ドイツ、イギリスと、そして日本を含めた6カ国の、合わせて10,569人のナレッジワーカーを対象にアンケート調査を行いました。
アンケートの特徴としては、企業の経営陣から中間管理職、さらに一般従業員にまで幅広いナレッジワーカーを対象にしていることが挙げられます。特に今回は、新型コロナウィルスによりリモートワークを行っている現状について、興味深い結果が報告されています。
出典:「Future Forum Pulse」future forum
「経営層と従業員の間でオフィス回帰について大きなズレがあることが判明」Slack
各国でのリモートワークに対する満足度はかなり高く、さらに全体の76%は働く場所について、また93%は働く時間についてより高い柔軟性を求めていることが分かりました。おそらく、実際にリモートワークを実践してみた結果、予想よりも快適にしかも効率的に業務を遂行できたのではないでしょうか。
日本に限定して見てみると、今後リモートワークから職場に復帰する場合、以前のように毎日オフィスでは働きたくないと回答した人は、全体の7割にも達しています。毎日オフィスで働きたいと答えた人は、全体の3割しかいないということです。
その理由については、リモートワークのほうが仕事への集中度や効率が高まることと、ワークライフバランスが適切にとれることを挙げているケースが多く、特に女性からは、一段と柔軟なリモートワークを求める声が多かったようです。
今回の調査では、企業内での経営陣と従業員との間に、今後の働き方に対する明確な意識のズレがあることも浮き彫りになりました。まず経営陣の意識としては、全体の68%がオフィスでの勤務に戻したいと考えており、その内の59%は従業員が毎日オフィスで勤務することを望んでいます。
前述したように従業員に関しては、全体の76%が働く場所について、93%が働く時間について柔軟な対応を求めていることからすると、経営陣と従業員では、今後求める職場環境に大きな意識の違いがあると考えられます。
さらに現在完全にリモートワークをしている人に絞った場合、毎日オフィスで働くことを望む経営陣は約44%ですが、従業員ではわずか17%でしかありません。週に3~5日の出勤にまで範囲を広げると、経営陣では約75%が賛成しているのに対し、従業員ではその半分にも満たない34%となっています。
仕事の場をオフィスに戻したい経営陣に対して、リモートワークを続けたい従業員という図式は、企業の意思決定方法に問題があると考えられます。今回の調査によると、多くの従業員は会社の意思決定に透明性が欠けていると答えています。
それに対して経営陣は、今後の方針決定について非常に透明性が高いと考えているようです。しかしその意識とは矛盾するように、経営陣の66%は意思決定に関して、従業員の意見を考慮したことはほとんどないとも答えています。
もうひとつ、ナレッジワーカーの多くが、柔軟な働き方を維持するためには転職も視野に入れている、と答えていることも重要視すべきでしょう。アンケートでは全体の57%が、今後1年以内に新しい仕事を探す可能性があると回答しているのです。
こうした経営陣と従業員との意識のズレを放置しておくと、新型コロナウィルスの影響が縮小するタイミングで、企業から多くの人材が流出する危険性があります。経営陣の意識が変わらないと、企業経営そのものが危機的状況に陥る可能性もあるのです。
今回の調査結果は、企業の経営陣にとっては寝耳に水だったかもしれません。しかしこの結果をもとに意識改革を行えば、大切な人材を手放すことなく、さらに外部から優秀な人材を確保できる可能性もあります。
そのためには企業内の意思決定に透明性を持たせ、従業員がより柔軟な働き方ができるように、経営陣が積極的にビジネス環境を変える必要があるでしょう。その結果ピンチがチャンスに一転する可能性だってあるのです。
新型コロナウィルス問題で、世界的に働き方が大きく変化しました。しかし実際にリモートワークを進めてみると、仕事上の不都合を感じた人よりも、仕事のしやすさや業務効率アップを感じた人のほうが多かったのかもしれません。
その結果、早く職場をオフィスに戻したいという経営陣と、オフィスには戻りたくないという従業員との間に、働き方に関する意識のズレが生じてしまったようです。この問題を解決するのは、経営陣の意識改革にかかっているといえるでしょう。
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