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近年、企業における「働きがい」の概念に注目が集まりつつあります。世界の企業を対象に「働きがい」を調査している国際機関が先日、日本企業の中で「働きがい」のある企業ベスト100を発表して話題を集めました。
そこで今回は「働きがい」とは何か、について深掘りしてみましょう。
企業における「働きがい」とは多面的な意味を持つ概念で、人によって意味・イメージが異なる面があります。例えば、「働いた分だけ金銭的な報酬をもらえること」「頑張った分だけ出世できること」と答える人もいれば、「組織・仲間から頼りにされること」「社会貢献につながること」といった社会的・道徳的な回答をする人もいるでしょう。
「働きがい」について考える場合、一つカギとなる指標があります。それは「職務に対する満足度」です。仕事への満足度が高ければ「働きがい」があると感じ、仕事に不満が大きければ「働きがい」は感じられないでしょう。
アメリカの臨床心理学者であるハーズバーグは、1959年に約200人の労働者を対象として、仕事に対する満足度について調べる調査を実施し、その結果「二要因理論」と呼ばれる理論を導きだしました。現在、「働きがい」について論じられるとき、ハーズバーグの二要因理論は必ずといっていいほど引き合いに出されます。
二要因理論によると、労働者の満足・不満足に影響を与える要因には、「動機づけ要因」と「衛生要因」があるとされます。
・動機づけ要因・・・達成感、承認欲求、仕事の面白さ、責任感、出世欲などが心理的に満たされているかどうかが、仕事への満足度に影響
・衛生要因・・・経営方針・組織管理体制、待遇、人間関係、就労条件などの内容が、仕事への満足度に影響
この二つの要因において、労働者が満足できると感じられれば、「働きがい」につながるというわけです。
二要因理論では抽象度が高すぎる面があるので、もう少し具体的に変数を捉えた場合、「働きがい」のある職場かどうかを判断するポイントとしては以下の点を挙げられます。
長時間労働がなく、休暇制度、福利厚生が整い、産休・育休・介護休業の取得率が高い職場であること。結婚・出産・育児・親の介護など、ライフステージに合わせて柔軟な働き方ができるかどうかも重要です。
年齢、性別、学歴、雇用形態に関係なく、重要な仕事を任されて活躍できるかどうか。役職などに関わらず、意見やアイデアを出しやすい環境かどうかも重要です。
従業員がスキルアップ、キャリアアップを図りやすい体制が整っているかどうか。資格取得の支援制度の有無、研修制度の充実度、キャリアアップの道筋の明確さ(将来像の描きやすさ)などがチェックポイントです。また、終身雇用慣行が失われつつある現在、中途採用した転職者にもチャンスを付与する組織風土・サポート体制が整っているかどうかも重要といえます。
各企業には自社の価値観を言語化した企業理念が定められています。その内容に共感できれば、従業員はモチベーションを持って業務に取り組めます。例えば、社会貢献や道徳的価値の追求などが提示されていれば、自分の仕事がよりよい社会の構築・実現につながるとの気持ちを持てるでしょう。近年だとSDGs、CSRの取り組み度合いなどがその一要素です。
「働きがい」のある職場環境を整えることは、企業にとって以下のようなメリットがあります。
「働きがい」を持てる従業員は、自分が持つ強み・スキル・知識を発揮し、企業に貢献しようとする意識が高まります。そのため職場内で積極的に意見を出そうとする意識が高まり、それまでにないアイデア・技術が組織内で生み出されやすくなります。
「働きがい」を持つ従業員は、現在の職場環境で自分を成長させようとする意識が高まり、スキルアップを図る意欲を持ちます。また、オーナーシップ(主体性・当事者意識を持って仕事に取り組むマインドのこと)も醸成されるので、自分で業務改善につながる工夫を考え出して実践するようもなるでしょう。
「働きがい」のある企業だと、従業員は少しでも長く働き続けたいと思うようになるので、離職率が低下します。離職率が低下すれば、従業員はその企業に特化した業務遂行能力・スキルを蓄積していき、将来的な幹部職員の育成もしやすくなります。
「働きがい」は少し抽象度が高い概念ですが、具体性のある概念へと落とし込んでいくと、実際にどのような職場だと「働きがい」があるのかが見えてきます。
「働きがい」のある職場は従業員の意欲向上をもたらし、そのことが新しいアイデアの生じやすさ、効率的な人材育成、離職率低下へとつながり、結果として企業の業績アップにもつながります。「働きがい」のある職場づくりをすることは、従業員のことを考えた福祉的な取り組みであると同時に、自社の業績改善・アップにつなげるための戦略的な取り組みでもあるわけです。
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