女性の社会進出で高まる保育ニーズ…でも現場は慢性的な人手不足とか 認定こども園の1日に密着してみた

離乳食の園児は先に給食を食べる

 女性の社会進出で保育ニーズが高まる一方、現場は慢性的な人手不足が伝わる。中でも0~1歳は発達の差が大きく、きめ細かな対応がより必要とされる。どんな保育が行われているのか。3月下旬、鹿児島市の認定こども園の1日を追った。

 「いただきます」。午前9時半、すみれこども園で朝のおやつの時間が始まった。保育士の有村真由美さん(52)のかけ声で、小さな手をパチンと合わせる音が響く。0歳児クラスの11カ月~1歳11カ月の5人が、牛乳を飲みながらビスケットや乳児用せんべいを頬張る。

 食べ終えると、「何して遊ぼうか。ダンスがいい? ボールを出す?」と声を掛けた。子どもたちの反応を見て音楽を流し、道具を出す。歩ける園児はじっとしていない。手を挟みそうなクリップに手を伸ばす子も。すかさず「それはバツだよ」と注意した。

 つかまり立ちや歩く練習をする子もいる。見守るもう1人の担当保育士、中元李奈さん(28)は「歩けるようになったり、新しい言葉が話せるようになったり、毎日のちょっとした成長がうれしい」とほほ笑む。

 午前10時50分、一足先に11カ月の園児の給食が始まった。園では離乳食の子には保育士が1対1で付く。有村さんは一口ずつ口元に運び、かんで飲み込むまでをしっかり見つめる。一人一人にチェック表を作り、保護者と状況を確認しながら進める。青木和彦園長(54)は「子どもたちはまだ言葉で明確に表現できない。低年齢であるほど家庭との連携が一層欠かせない」と話す。

 中元さんは残る4人をいすに座らせ、テレビをつける。子どもたちが見入っている間、給食に向けて保育室やおもちゃの消毒をテキパキと済ませていく。11時20分ごろから食事がスタート。この日のメインは肉じゃが。それぞれの発達に合わせ、食材が小さく切られていた。「おいしいね」と声を掛けながら、ちゃんと飲み込んでいるか目を光らせる。

 正午~2時半まではお昼寝タイム。横になった子どもたちの体をトントンと優しくたたき、眠りに誘う。事故を防ぐため、数分おきに様子を確認しながら、昼食を取りつつ、保護者への活動記録や園用の日誌を記入する。2023年度からタブレット端末が導入され、2人は「かなり楽になった」と口をそろえた。

 午後3時からは再びおやつの時間。その後は自由時間となり、お迎えを待つ。国の配置基準では、保育士1人当たり0歳児3人、1歳児6人を見ることができる。クラスは基準を満たし、この日は保育補助でアルバイトの大学生も1人いた。それでも息つく間もないような忙しさだった。有村さんは「子どもたちの笑顔や成長を見ることが喜び。ただもっと人がいれば、もっと手厚い保育ができる」と話した。

日々の活動記録や保護者とのやりとりはタブレット端末を活用。かつては全て手書きだった(下)

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