ブレイクダンスが生きる道に 不登校経験したインストラクター 許容できた人と違う自分 長崎 

ブレイクダンス専門スタジオを開いた岩永さん=諫早市(岩永さん提供)

 今夏のパリ五輪で競技に初採用されたブレイキン(ブレイクダンス)。不登校の経験がある諫早市の岩永朝太郎さん(32)は、ブレイクダンスで自分らしく生きる道を見いだした。「かつての自分のように、なかなか初めの一歩を踏み出せない人にも人生が広がるきっかけを提供したい」。熱い思いを胸に、インストラクターとして子どもたちを中心に教えている。
 岩永さんは、車いすで生活する両親の下に生まれた。暮らしの中で不自由があっても、それが普通だと思い率先して家事を引き受けた。しかし中学生になる頃まで洗濯物の干し方を知らず、しわだらけで生乾きの臭いが残ったままの服を着る事も多かった。
 そんなある日、友人に「なんか臭わん?」と指摘された。思春期の多感な時期だった事もあり、自分に自信が持てなくなった。学校に通えなくなり、他人と顔を合わせずに済むインターネットゲームの世界に閉じこもった。
 幸い、友人が根気強く登校を誘ってくれた事もあり、約2年後には学校生活を再開した。高校2年の時、友人の1人がストリートダンスを始めたのが「運命の出合い」になった。
 「楽しそう、一緒にやりたい」。気が付くと一緒に踊っていた。仲間と一緒に、参考になりそうなDVDを片っ端から見て研究。毎日夜遅くまでひたすら練習に没頭した。
 ダンスの世界では、人と違う事や、個性をどのように発揮するかが評価される。自分ならではの表現を追求し、さまざまな大会に参加していく中で仲間が増え、人とのつながりも広がった。
 「これで良いんだ、ありのままの自分で良いんだ」。これまで抱えていた「普通の人と違う」というコンプレックスが「人と違うからこそ良い」という自信に変わり、自分と違う他人を許容できるようになった。
 とびきり引かれたのは、1対1で技や表現力を競うブレイクダンス。「相手と会話するように競演する事で初めて完成するような、コミュニケーションツールとしてのダンスに魅力を感じた」
 2015年には、九州最大級のソロダンスバトルイベント「Carnival(カーニバル)」でベスト8。18年からはインストラクターとして活動を始めた。20年、県ダンススポーツ連盟理事・ブレイクダンス部長に就任した。

体験会で子どもたちを指導する岩永さん(右)=長崎市内(岩永さん提供)

 21年には念願のブレイクダンス専門スタジオを諫早市に開いた。現在は長崎市にもスタジオを設け、小学生を中心に、基礎から丁寧に指導している。
 「生涯スポーツとして長く続けられる環境をつくり、長崎から将来の五輪選手が誕生する一歩につながればうれしい」と意欲を燃やす。
 5月6日に大村市で、同26日には諫早市と長崎市でブレイクダンスの親子無料体験会を開く。「体験を通し、親子で楽しく五輪を鑑賞してもらえれば」。問い合わせは岩永さん(080.1741.5493)。

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