似非の横行

 見かけはそれらしいが、本物とはまるで違うものを似非(えせ)という。「似て非なる」の当て字で、「にせ(偽)」からきていると一説に言う▲新手の「似非」にだまし取られた金額は他の詐欺とは桁違いで、その横行は目に余る。交流サイト(SNS)を使った投資詐欺が急増しているという▲衣料品通販大手の創業者、前沢友作さんにジャーナリストの池上彰さん、経済アナリストの森永卓郎さん…。有名人の名をかたり「絶対にもうかる」と投資を呼びかけるように仕向ける、うその広告がネット上ではびこっている▲うっかり信じて、誘導されるままにSNSで“投資”を始める。利益が出ているように見える架空の取引画面にだまされ、さらに大金を振り込む。突然、振り込んだ相手と音信が途絶える…▲SNSで出会い、恋愛感情を抱かせてカネを奪う詐欺も増えている。1~3月で、こうしたSNS型の投資・ロマンス詐欺の認知は県内で43件、被害総額は3億円ほどに上ると、先日の紙面にある▲カネを求めてくる話はまず怪しむべきだと専門家は言う。似非の語源には古語「えしもの(荒々しい盗っ人)」が転じたという説もある。あいにく、スマートフォンの画面の向こうには有名人とは似て非なる、親切ごかしの数知れぬ「えしもの」がすんでいる。肝に銘じたい。(徹)

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