ローマ時代の戦車レース、非常に珍しいモザイク画

幅25メートル超、競技場やレース自体も描写

2017.08.10
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【動画】2000年前の戦車レースを描いた貴重なモザイク画を発掘。(解説は英語です)

 キプロスの考古学者たちが数年がかりで発掘したのは、およそ2000年前、ローマ時代の貴重な床モザイク画だ。(参考記事:「謎の古代モザイク画、秘められたユダヤ人への伝言」

 幅25メートルを超えるモザイク画に描かれているのは、ローマ時代の戦車レースの様子。「ヒッポドローム」と呼ばれる屋外の専用競技場で行われていて、馬や騎手の名前を表す古代ギリシャ語も添えられている。

 このモザイク画は、紀元4世紀ごろの邸宅のギャラリーの一部だと考えられている。考古学者らは、ほんのわずかしか残されていないローマ時代のモザイク画の一つだと見ている。(参考記事:「古代シナゴーグで発見された“場違いな”もの」

 モザイク画が見つかったのは、キプロスの首都ニコシアから22キロほど離れた場所にあるアカキという村だ。AP通信によると、1938年に村の農家が偶然、この邸宅の別の部分からモザイク画の一部を見つけた。それまでは長い間、存在を知られていなかった。(参考記事:「写真で見る避妊具の歴史、古代ローマ時代の品も」

 この貴重な床モザイク画は、鉄道の線路跡の地下にあたる場所で発見された。発掘が始まったのは、2013年になってからのこと。モザイク画の全体像があらわになったのは2016年だった。しかし、それもわずかな間だけで、当局が保護目的で埋め戻していた。(参考記事:「出エジプト描いた貴重なモザイク画が出土」

 最近になって、修復作業を行うために保護用の土を取り除く作業が開始された。しかし、修復を終えて一般公開できるのは数年後になる見込みだという。

 今のところ、キプロスから見つかっているモザイク画はこの一つだけだ。政府機関の考古学者で、遺跡の責任者を務めるフリニ・ハッジクリストフィ氏は、ローマ時代の屋外競技場を描いたモザイク画はほかに9点しかないとAP通信に話している。(参考記事:「漆喰の下に12世紀のモザイク画を発見、聖誕教会」

「これは非常に珍しいものです。アカキのモザイク画のように、競技場の様子が描かれているものは多くありません」とハッジクリストフィ氏は話す。「競技に参加する馬や騎手が単独で描かれることはよくあります。しかし、屋外競技場そのものや、そこで行われるレースが描かれるのはたいへん珍しいのです」(参考記事:「ローマ時代のヘルメット:3億円で落札」

文=Casey Smith/訳=鈴木和博

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