世界の巨大淡水生物、40年間で約9割も減っていた

30kg以上になる淡水動物126種の個体数を調査、巨大淡水魚はなんと94%減

2019.08.20
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藍藻の中を泳ぐフロリダマナティー。フロリダの河川では藍藻が時おり大発生し、淡水種を危険にさらしている。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
藍藻の中を泳ぐフロリダマナティー。フロリダの河川では藍藻が時おり大発生し、淡水種を危険にさらしている。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 大相撲の力士並みに大きなエイや巨大ナマズ、巨大ガメに、巨大サンショウウオ。最新の研究によると、世界の淡水に暮らすこのような巨大生物の多くは、まもなく絶滅してしまうかもしれない。(参考記事:「車並みの超巨大淡水エイを捕獲、世界記録か」

 魚類、爬虫類から両生類、哺乳類まで、淡水の大型動物が世界的にどのぐらい減っているかを研究者らが調べた結果が、8月8日付けの学術誌「Global Change Biology」に発表された。世界的な減少を初めて数値化したというその内容は、非常に厳しいものだった。1970年以降のおよそ40年間で、体重30キロ以上の「淡水の巨人たち」の個体数は、世界中で90%近く減少した。これは、陸上または海の脊椎動物の2倍近い数字だ。(参考記事:「絶滅寸前の巨大スッポン死ぬ、残るは3匹のみ」

 チョウザメ、サケ、大ナマズなどの巨大淡水魚は特に絶滅の恐れが高く、個体数は全体で94%も減少した。淡水の大型爬虫類と哺乳類の多くも、厳しい状況におかれている。中国のヨウスコウカワイルカは、おそらく人間によって絶滅に追い込まれた最初のイルカだ。体長6メートルを超えることもあるシナヘラチョウザメは、ここ10年ほど目撃されていない。ほかにも、ほとんどいなくなってしまった種がいるかもしれない。(参考記事:「「絶滅」ヨウスコウカワイルカの目撃情報、中国」

「こうした大規模な危機は、一般にはあまり認識されていません」と話すのは、米ネバダ大学リノ校の魚類生物学者で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるゼブ・ホーガン氏だ。同氏は、巨大淡水魚の窮状を20年にわたって研究している。(参考記事:「巨大魚フォトギャラリー:瀬戸際の巨大魚たち」

 論文の著者の1人でもあるホーガン氏は、巨大魚たちが苦境にあるというこの報告は、世界中の川や湖が直面している環境の危機をはっきり示していると語る。「最も大きな動物たちが姿を消し始めるのは、すぐさま何らかの行動を起こし、川や湖の生態系の健全さを取り戻さなくてはならないという警告です」

【関連ギャラリー】世界の巨大淡水生物、40年間で約9割も減っていた 写真14点(写真クリックでギャラリーページへ)
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近絶滅種に指定されている世界最大の両生類、チュウゴクオオサンショウウオ。米アトランタ動物園で撮影。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATTIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

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