カリブ海の島国バハマを史上最強級のハリケーン「ドリアン」が襲った。ハリケーンの勢力を支えたのは、旅行者をバハマへ引き付ける温暖な海だった。(参考記事:「ハリケーン撃退法、珍案は核爆弾だけではなかった」)
ドリアンは丸1日以上バハマ付近に停滞。最大で時速300キロ(秒速83メートル)近い猛烈な風と豪雨が続き、住宅は高潮による浸水被害を受けた。
2019年8月30日の時点では5段階中3番目の「カテゴリー3」だったドリアンの勢力は、9月1日までに「カテゴリー5」に急成長した。しかも2日夕方、ドリアンがバハマを通過するとき、ハリケーンを米フロリダ州の方向へ押し流す風がなくなってしまった。
NASAによれば、フロリダ州南部からバハマにかけての「嵐の燃料となる海」が、ドリアンの勢力を急速に強めたのだという。
「本当に不運でした」と米コロラド州立大学の気象学者フィリップ・クロツバック氏は語る。「進路を決める上空の風の状態が通常とは異なっていたところに、大型ハリケーンが重なってしまったのです」
気候変動との関連は
記録的なほど壊滅的なハリケーンが発生すると、しばしば、気候変動との関連を巡る議論に発展する。
だが、ハリケーンの1つ1つを地球規模の気候変動と関連づけるのは困難で、ドリアンの場合も例外ではない。クロツバック氏や米マイアミ大学の気象学者ブライアン・マクノルディー氏もそう考えている。
むしろ科学者たちは海水温や風の状況のパターンに注目し、ハリケーンの長期的な変化を評価しようとしている。
全米気候評価(NCA)の第4次報告書では、温暖化に伴い、ハリケーンがより勢いを増し破壊的になると予測している。一方で、温暖化によってハリケーンを押し流す風の速度が下がり、ハリケーンは進み方がより遅く、降水量がより多くなることを示唆する研究結果も増えている。(参考記事:「より遅く危険になる台風、上陸後の速度は30%減」)
その理由を知りたければ、まずは海水温とハリケーンの関係を理解しなければならない。
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