世界最古の菌類化石を発見、7億年以上前

最古の記録を数億年更新、菌類・植物・地表の進化を解き明かす鍵に

2020.01.24
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
少なくとも7億1500万年前の菌糸の化石。菌類に特有のキチンに結合し、緑色に光る色素を用いて、共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡で撮影。(FROM BONNEVILLE ET AL. 2020: MOLECULAR IDENTIFICATION OF FUNGI MICROFOSSILS IN A NEOPROTEROZOIC SHALE ROCK. SCIENCE ADVANCES.)
少なくとも7億1500万年前の菌糸の化石。菌類に特有のキチンに結合し、緑色に光る色素を用いて、共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡で撮影。(FROM BONNEVILLE ET AL. 2020: MOLECULAR IDENTIFICATION OF FUNGI MICROFOSSILS IN A NEOPROTEROZOIC SHALE ROCK. SCIENCE ADVANCES.)
[画像のクリックで拡大表示]

 菌類はとても重要であるにもかかわらず、わかっていることはあまりに少ない。学術的に記録されている菌類は10万種余りだが、地球上には380万種存在するという推定もある。(参考記事:「アリを「ゾンビ化」する寄生菌、脳の外から行動支配」

 菌類は、人知れず地味な仕事を多くこなしている。生物の死骸など大量の有機物を分解し、栄養を循環させている。菌類なしに、世界は機能しない。植物が生きられるのも菌類のおかげだ。土壌に張り巡らされた広大な菌類のネットワークが、水や栄養を運び、化学信号を伝えている。もちろん人間の役にも立つ。アルコールを作り出したり、パンを膨らませたりする発酵などがそうだ。(参考記事:「小泉武夫(醸造学・発酵学・食文化論):発酵は世界を救う(提言編)」

数億年間の空白

 しかし、はるかな菌類の歴史は、多くの謎に包まれている。菌類は、10億年以上前に動物との共通祖先から枝分かれしたとされるが、その化石で疑いなく最古とされるのは4億年前のもの。菌類の化石が見つからない空白期間は何億年にも及ぶ。ところが、最近発表された2本の論文が、それより古い菌類の存在を明らかにした。

 2019年5月22日付けで学術誌「Nature」に発表された論文では、カナダ北極圏で見つかった10億年前の化石が、微小な菌類のものであることが示唆された。そして今回、2020年1月22日付けで学術誌「Science Advances」に発表された別のグループの論文で、より厳密な化学調査の結果、7億1500万年以上前の化石が、間違いなく糸状菌の仲間であることが示された。

 後者の論文の著者であるスティーブ・ボンヌビル氏らの研究チームは、アフリカ、コンゴ民主共和国の頁岩(けつがん)から見つかった7億1500万〜8億1000万年前の化石を調べた。

 ボンヌビル氏はベルギー、ブリュッセル自由大学の研究者で、この岩を10年以上も研究してきたと言う。地表がどのように進化し、植物や菌類がどのように誕生したかについての「私たちの理解は、今回の発見によって変わるでしょう」と氏は話す。「当時すでに菌類が存在していたと思うと、わくわくします」(参考記事:「謎の古代生物の正体は「動物」と判明、地球最古級」

次ページ:「ありえない。古すぎる」

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

科学の謎

研究者が悩む99の素朴な疑問

研究によって限りなく真実に近いところまで解明されているものから、まったくわかっていないものまで、「物質と力」「宇宙」「人体」「地球」「生物の世界」「人類の営み」の6ジャンル、99個の研究テーマと解明のプロセスを紹介。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:1,760円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加