火星の新たな住人となるロボット探査車が大地に着陸した。2021年2月19日朝(日本時間)、NASAが数十億ドル(数千億円)の費用を投じて開発した探査車「パーシビアランス」が、約5億kmを終え、無事に火星に着陸した。
原子力電池を搭載した重量1トンのパーシビアランスは、火星の薄い大気圏に猛スピードで突入し、減速しながら自律的に着陸動作を行い、ジェゼロ・クレーター内の7.7km×6.6kmの着陸楕円の中に着陸した。
パーシビアランスが無事に着陸したことを知らせる信号と、火星表面で最初に撮影した写真のデータは、上空を周回する火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターを介して地球に送られた。信号を受け取ったNASAのジェット推進研究所(JPL)は歓喜に包まれた。
探査車が担う最大のミッションは、火星に残る太古の生命の痕跡を探すこと。NASAはこれで5台の探査車を火星に送り込んだことになるが、生物の痕跡を探すのは今回が初めてである。現在の火星はカラカラに乾いた埃っぽい惑星だが、誕生から10億年程度はもっと暖かく、水も豊富にあったと考えられていて、生命が誕生していた可能性がある。
パーシビアランスは、このほかにも、地球にいる科学者のために火星の岩石サンプルを採集することになっている。サンプルを地球に持ち帰るのは別の探査機で、10年以内に火星に送り込まれることになっている。「火星に生命はいたのか」という問いに対する答えは、このお土産の中に隠されているかもしれない。あるいは、本当に運が良ければ、パーシビアランス自身がジェゼロ・クレーターの中で答えを見つけるかもしれない。
5億kmの旅
2020年7月30日に火星に向けて打ち上げられたパーシビアランスは、7カ月間、殻に包まれた虫のように小さくなって宇宙を旅した。6個の車輪は引き込まれ、マストとロボットアームは折りたたまれ、小型ヘリコプター「インジェニュイティー」は腹の下に抱えられていた。飛行中、JPLのチームは定期的にパーシビアランスを目覚めさせ、搭載したシステムの試験をしたり、マイクで音声を拾ったりしていた。(参考記事:「NASAの最新探査車が火星へ、どうやって生命の痕跡探す?」)
「巡航中にマイクをオンにしたときに、音声ファイルを最初に受け取ったのは私でした」と、JPLのアダム・ネレセン氏は言う。「ブーンという機械音が聞こえ、自分が宇宙を旅しているように感じました。言葉にできないほどスリリングな経験でした」