コロナ起源は野生動物か、WHO報告書、飼育容認の中国に懸念

食用以外なら中国はいまだ容認、新たな感染症が広がるリスクも

2021.03.31
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中国ではかつて、食用として野生動物が飼育・販売されていた。写真は広州の市場で売られていたハクビシン。(PHOTOGRAPH BY KIN CHEUNG, REUTERS)
中国ではかつて、食用として野生動物が飼育・販売されていた。写真は広州の市場で売られていたハクビシン。(PHOTOGRAPH BY KIN CHEUNG, REUTERS)
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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の起源を調査するために2021年1月に中国を訪れた世界保健機関(WHO)は、ウイルスは複数の異なる動物種を経てヒトに感染した可能性が最も高いとする報告書を3月30日に発表した。また、最初に由来する動物はコウモリかセンザンコウであり、研究所からウイルスが漏れた可能性は非常に低いとしている。

 コウモリやセンザンコウから別の動物(中間宿主)を経てヒトに感染した可能性が高いという結論について、「我々の多くがずっとそう考えてきました」と、米コロンビア大学感染症免疫学センター長で、2020年1月に中国で仕事をしていたイアン・リプキン氏は言う。だが氏は、「中間宿主を特定しておらず、まだ不確実です」とも付け加えた。

 報告書によれば、2019年末から感染爆発が起きた武漢華南市場は、最初の症例とは無関係であり、ヒトへの感染が初めて起きた場所ではないという。ただし、華南市場にどのようにしてウイルスが持ち込まれたかや、その役割については結論を述べていない。また、どの動物が関わったのかをはっきりさせるよう、畜産農場と野生動物農場双方のルートを調査するよう提唱している。

コロナ以前の野生動物農場の実態

 パンデミック以前に中国にたくさんあった、小さな肉食用野生動物農場を訪ねたときのことを、動物愛護団体「ヒューメイン・ソサエティ・インターナショナル」の中国政策専門家であるピーター・リ氏はこう振り返る。

 長くふさふさとした尾を持ち、顔にはアライグマのような模様があるハクビシンが、10匹ほど同じ囲いの中に入れられていた。その飼育場は豚舎を転用したものだった。ハクビシンは8〜12カ月ほどそこで飼われた後、売却されていた。野生動物が密集した不衛生な状態で飼育されていれば、病気が蔓延する可能性は非常に高いと、米ヒューストン大学ダウンタウン校の東アジア政治学教授でもあるリ氏は述べる。

 こうしたハクビシンの一部は最終的に、高級レストランで高価なスープの材料になったとみられる。中国では、ハクビシンは一部の人たちからごちそうとして珍重されている。

 パンデミック以前は、こうした野生動物農場から、中国の野生動物市場に生きたハクビシン、タケネズミ、ワニ、ヤマアラシ、ヘビなどが供給され、主に飲食店に向けて販売されていた。

 多くの飼育場があった中国南部の雲南省ではまた、人間の間で流行している新型コロナウイルスとほとんど変わらないウイルスがコウモリから発見されている。一部の野生動物農場では、ハクビシンなど、コロナウイルスに感染する可能性がある別の動物も販売されていたため、科学者らは、そうした種は新型コロナウイルスにも感染しやすいのではないかと考えている。

次ページ:野生動物から病気が広がるリスクは消えていない

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