2021年6月13日、世界的人気を誇る韓国の音楽グループ「BTS(防弾少年団)」がデビュー8周年を迎えた。多くの熱烈なファンと同様、43歳となるおじさんの私(筆者のミッキー・ラプキン氏)も、予定されていたツアーで生のBTSを見るのを楽しみにしていた。ところが、新型コロナウイルスのパンデミックにより対面でのコンサートが延期されたため、私はこの日、朝の2時半に起き出して、仕方なく携帯電話で韓国から生配信されたコンサートを見ることになった。
こんなはずではなかった。韓国では2019年、過去最多となる1750万人の外国人観光客を受け入れ、2020年はさらにそれを上回る2000万人を見込んでいた。その多くが、ここ10年ほどで世界のひのき舞台へ躍り出た韓流文化に魅せられた人々であることは間違いない。
K-POPが打ち立てた偉業は、誰もが認めるところだろう。米国の音楽チャート「ビルボード200」で、1年の間にBTSのアルバム3枚が首位を獲得したのは、ビートルズ以来の快挙だ。ポン・ジュノ監督の映画「パラサイト 半地下の家族」は、カンヌ国際映画祭や2020年アカデミー賞を席巻した。もうずいぶん前から、米国の量販店の雑誌コーナーの隣には韓国製コスメが並び、動画配信サービス大手の「ネットフリックス」は、韓国の精進料理を特集したドキュメンタリーシリーズを放映している。60歳になる尼僧のチョン・クワン氏が料理で世界的ブレイクを果たすなど、韓国で一体誰が想像しただろう。
パンデミックによって国境が閉ざされ、イベントはキャンセルされ、2020年、韓国を訪れた外国人観光客は、過去32年間で最低の250万人にまで落ち込んだ。
だが、世界190カ国以上、100万人を超えるファンとともに、自室のベッドに座ってBTSのコンサートに見入っていた私は、ある事実に気が付いた。「コロナウイルスでさえK-POPを止めることはできない」ということだ。
成長し続ける韓流コンテンツ
ステイホーム期間中、BTSは立て続けにオンラインコンサートを開催し、巨額の収益を上げてきた。米国の大衆誌「ローリング・ストーン」は、BTSによって音楽業界が永遠に変えられたと宣言し、「有料のライブストリーミングが一時的な現象ではないことを証明した」と評している。(参考記事:「韓国、中国、台湾―― アジアのライブストリーマーと、そのファンたちの実像」)
家で過ごす時間が長くなった米国では、芸能人やメディアまでもが、ネットフリックスで配信される韓国ドラマに夢中になった。同社は、2021年に韓国のテレビ番組に5億ドル(約550億円)近い投資を行うと発表している。
米国のテレビ界でも、韓国のテレビ番組を基にしたリメイク番組が高視聴率を獲得している。1987年当時、韓国にテレビ局がたった2局しかなかったとは、とても信じられない。韓国ソウルにある延世大学コミュニケーション大学院の客員教授チェ・ユンボン氏は、「発展途上にあった国がこれほどの勢いで世界の文化シーンに現れたという例は、ほかにありません」と話す。