米国ワシントンD.C.の国会議事堂から東京のオリンピック選手村まで、ワクチン接種を済ませた人々の間で新型コロナ検査の陽性例が出ていることから、いわゆる「接種後感染(ブレイクスルー感染)」への懸念が高まっている。それにともない、新たな変異株へのワクチンの効果や、効果の持続期間などが取り沙汰されるようになった。
米国内でブレイクスルー感染がどれほど起こっているかは、正確には判断できない。なぜならデータは不完全で、一貫した追跡調査も行われていないからだ。しかし、米疾病対策センター(CDC)がこのたび発表した7月19日時点のデータによると、重いブレイクスルー感染が起こる割合は極めて低い。
1億6100万人を超える米国内のワクチン接種完了者のうち、新型コロナ検査で陽性だった入院および死亡例の報告は5914件であり、これはワクチン接種を完了した人の0.004%未満だ(編注:ほかの疾患で入院または死亡し、検査の結果陽性が判明した例も含む)。
一般に「ブレイクスルー感染」とは、ワクチンを適切に接種した人々が新型コロナに感染した例(無症状例含む)を意味し、「ブレイクスルー疾患」は、そのうち体調が悪くなった例を指す。疾患にまで至るのは、ワクチンで強い免疫が得られない場合、免疫が時間とともに低下した場合、もしくはワクチン接種によって得られた抗体を避けるように進化したと思われる株にさらされた場合だと、ニューヨーク、ロックフェラー大学の臨床医科学者ロバート・ダーネル氏は述べている。
100%有効なワクチンというものは存在しない。ブレイクスルー感染や疾患はどんな病気でも起こり得る。なぜならウイルスは常に進化しており、インドで最初に報告され、現在は米国の新規感染例の83%を占めるデルタ株のような、ワクチンを回避する能力が高い新たな株が登場するからだ。
それでも、米国で認可されているワクチンはどれも、新型コロナ感染症による入院や死亡のリスクを大幅に軽減してくれる。現在新型コロナで入院している患者の97%以上はワクチンを接種していない人たちだと、CDC所長のロシェル・ワレンスキー氏は言う。
「感染者の割合は、ワクチンを接種していない人の方が圧倒的に高く、接種済みの人は低いという状態が続いています。接種した人も感染するというのは、単にゼロではないという意味です」と、テキサス、ベイラー医科大学の感染症内科医ステイシー・ローズ氏は述べている。
「わたしが懸念するのは、ブレイクスルー感染があるならワクチンを受けてもしょうがないという印象を人々が持ってしまうことです。ワクチンを接種すれば、たとえそれがデルタ株であっても、新型コロナに感染するリスクを下げてくれるのは事実です」
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