ベトナムでは今、クマの胆汁を採取するためのクマ農場の閉鎖が相次いでいる。11月18 日付けで学術誌「Conservation and Society」に掲載された最新の研究によると、伝統医療で使われ続けてきた熊胆について、消費者はもはや「無関心」だという。
ベトナムではかつて、野生のクマから胆汁が採取されていた。1990年代、胆汁の需要が高まると、国際自然保護連合(IUCN)がいずれも危急種(vulnerable)に指定するツキノワグマやマレーグマの飼育が始まった。風邪や打撲などの治療に用いられてきたクマの胆汁には、ウルソデオキシコール酸(UDCA)という成分が含まれており、胆石の溶解や肝臓病の治療に効果があることが医学的に証明されている。
非営利団体「アニマルズアジア」によると、クマ農場では、病気が蔓延する狭い場所にクマを放置するような、非人道的な飼育環境が一般的だ。胆汁はカテーテルや針を胆のうに刺して採取され、この痛みを伴う処置が毎日繰り返されることもある。消費者にもまた、病気のクマから採取された、汚染された胆汁を摂取するリスクがある。
ベトナムでは2005年にクマの胆汁の販売と採取が禁止された。政府は2025年までに全てのクマ農場を閉鎖する意向を表明している。しかし、2005年以前に登録され、マイクロチップを埋め込まれた個体であれば、そのまま飼育を続けることが可能だ。禁止から16年が経過した現在でも、100を超える私有の農場で300頭以上のクマが飼育されている。そのうち150頭以上が首都ハノイで飼われている。
動物福祉団体「Free the Bears」によると、飼育に費用がかかりすぎるために、クマを餓死させたり殺したりする例もあるという。ベトナム森林保護局の取り締まりが甘く、クマの胆汁を簡単に入手できる状態が続いてきたせいで、胆汁を違法に市場へ供給している農場もあると言うのは、国際非営利団体「Four Paws」の野生動物救助・擁護活動責任者バーバラ・バン・ジェンヌ氏だ。あるいは、クマに個人的な愛着を持っている農場主もいるかもしれない。
この件について、ベトナム森林保護局にコメントを求めたが、得ることはできなかった。
飼育下のクマの胆汁の流通量自体は減っている。農場に無登録のクマがいないかを政府がチェックするようになったこと、需要の減少による胆汁価格の低下、ネグレクトや病気によってクマが死亡していることなどが理由だ。
ミャンマー、ラオス、韓国など、他の国でも胆汁採取のための密猟や飼育は行われている。アニマルズアジアによると、合法的な市場として圧倒的に大きいのは中国で、何千頭ものクマが飼育され、胆汁が供給されている。2020年3月、中国政府は新型コロナウイルス感染症の重症例の治療法として、クマの胆汁を含む注射液の使用を推進した(昨年、中国政府にコメントを求めたが、応じられなかった)。
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