サウナーの聖地、フィンランド式サウナの魅力と由緒正しい入り方

人口550万人の国に約300万台、「幸福度6年連続1位」の文化の本質

2024.03.28
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
熱した石に水をかけると水蒸気が立ち上がり、サウナ内の温度は80℃まで上昇する。(PHOTOGRAPH by ARCTIC TREEHOUSE HOTEL)
熱した石に水をかけると水蒸気が立ち上がり、サウナ内の温度は80℃まで上昇する。(PHOTOGRAPH by ARCTIC TREEHOUSE HOTEL)
[画像のクリックで拡大表示]

 小さな部屋の中で、みな木のベンチに横一列になって腰掛けている。焼けた石に水をかけると、高温の水蒸気が立ち上がり、部屋の温度は一気に80℃まで上昇する。紀元前7000年ごろフィンランドで始まったとされるサウナの習慣は、今ではフィンランド文化の礎であり、社会をつなぐ習慣となっている。サウナストーブから立ち上がる水蒸気は「ロウリュ」と呼ばれ、その効能を疑問視するフィンランド人はいない。

 人口550万人のフィンランドにサウナは約300万台ある。1980年代には都市化が最盛期を迎え、国民の7割が都市部に移住するが、アパートであれ戸建てであれ、ほとんどの家にサウナが設置された。公共のサウナも全国にあり、家族や友人が集う場所として、あるいはリラックスして一汗かく場所として人気だ。(参考記事:「さすがフィンランド! 驚きのサウナ10選」

現代に息づく古代の知恵

 サウナの長い歴史はフィンランドの森から始まる。初期のサウナは、極寒の冬に暖を取るために地面に穴を掘り、そこに熱した石を敷いただけのものだった。こうした穴は今でも残っており、古いものでは石器時代までさかのぼる。

 サウナはやがて地面の上に築かれるようになり、家の中で一番神聖な場所として、産屋として使われたり、死者を埋葬のために清める場所として使われたりするようになった。(参考記事:「ユネスコ無形文化遺産とは? 守りたい世界の文化すでに600件超」

 一方サウナは、これといった目的もなく過ごせる場所でもある。日々のストレスが癒される場所というサウナの概念は、フィンランドの文化の本質だ。

「サウナの日」は本来、仕事に充てられる平日と週末を区別するための日だった。今日、サウナの日に関して厳しい決まり事はないが、サウナには健康回復の効果があるということは広く認識されている。

 現在、9割近いフィンランド人が少なくとも週に1回はサウナに入り、多くの人がそれを幸福の鍵だと考えている。事実、世界幸福度報告のランキングでフィンランドは6年連続で1位になっている。サウナとは瞑想の場であり、携帯電話をしまい、高度にデジタル化された世界を離れ、純粋に「今」と向き合う場なのだ。(参考記事:「ラップランドでそり犬と暮らすティニヤ、電気も水道もない場所に移住した理由」

次ページ:フィンランド式サウナを存分に楽しむには

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

NO SIGNAL(ノーシグナル)

街を出て、大自然の中で暮らすことを選んだ10人の生き方

孤独を愛し、大自然を友とする最良の人生。写真と文で、現代の隠者を世界各地に訪ねる。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:2,420円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加