Photo Stories撮影ストーリー
2021年3月、約800年ぶりに噴火したアイスランドのファグラダルスフィヤル火山。溶岩の流れが、黒々とした岩の上に地図のような模様を描き出す。(PHOTOGRAPH BY CHRIS BURKARD)
2021年3月下旬、アイスランドのファグラダルスフィヤル火山がおよそ800年ぶりに噴火したことが報じられると、噴火口のある谷に登山客が殺到した。もくもくと立ち上る白い噴煙と、どす黒い岩の間をゆっくりと流れる溶岩を目の前にして、写真を撮ったり、ただ座って眺めたり、なかには溶岩の上でマシュマロを焼く人の姿も見られた。(参考記事:「アイスランドの火山が800年ぶりに噴火、そのとき何が?」)
ナショナル ジオグラフィックの取材で現場に駆け付けた写真家のクリス・ブルカード氏もまた、ぞっとするような、それでいて美しい光景に見とれていた。「何もかも忘れて見入ってしまいました。ドロドロに溶けた岩にこれほど魅力を感じるとは、思ってもみませんでした」
火山が噴火した後の土地は、観光業にとっては宝の山だ。日本人は1000年以上も前から、火山の近くにある温泉に癒されてきた。西暦79年にベスビオ火山噴火の火砕流によって壊滅した古代ローマの都市ポンペイは、街全体が火山灰に埋もれたために当時のままの状態が保存されており、17世紀から18世紀にかけて、ヨーロッパの多くの観光客を引きつけた。(参考記事:「恐ろしい大噴火、高熱で脳が沸騰、頭骨が爆発」)
ましてや、今まさに噴火中という火山には格別な魅力がある。「噴火は、私たちが目にすることのできる最も原始的な自然の力のひとつです」。ハワイ島にあるハワイ火山国立公園のベンジャミン・ヘイズ氏は言う。「惑星の血管ともいうべき溶岩の流れを間近で見ていると、母なる地球のパワーを感じます」
だが、噴火中の火山を見に行くことは、危険が伴うと同時に、倫理的な問題があることも心しておかなければならない。一生に一度のスリルを感じられるかもしれないが、命取りになる可能性もある。そこで、火山見学に出かける前に、覚えておくべき注意点を挙げておこう。
「溶岩追跡者」
ここ10年ほど、火山観光が急速に注目を集めている。その要因の一つは、ソーシャルメディアの普及と「溶岩追跡者」と呼ばれる人々の存在だ。彼らは、ベスビオ火山やその他ユネスコ世界遺産指定の活火山など、写真映えのする風景を求めて世界中を飛び回っている。
2020年12月20日に、ハワイ島のキラウエア火山が噴火すると、翌日にはハワイ火山国立公園に多くの観光客が押し寄せた。そのほとんどは地元の住民だったが、新型コロナウイルス感染症対策が緩和されると、州外からの訪問者も増加した。
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