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2021年7月21日、北ジャカルタの町チリンシンにあるロロタン公営墓地で、新型コロナによる犠牲者の墓へローズウォーターを注ぎ、花を手向ける遺族たち。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)

コロナ感染爆発、インドネシアの1日の死者数が世界最多に 写真14点

2021.07.30
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 7月下旬の時点で新型コロナの新規感染者数が1日に5万人前後のペースで増え、今や感染拡大の新たな震源地になったインドネシア。7月27日には1日の死者が2000人を超え、世界最多になってしまった。

 世界第4位の人口を抱えるインドネシアは、政府も国民もこの第2波への対応に苦慮している。優先順位の対立、ワクチン供給の遅れ、都市封鎖、その他様々な問題が、危機的状況を作り出している。専門家は、今後状況はさらに悪化するだろうと警戒する。

ロロタン公営墓地を埋め尽くす新しい墓の列。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)
ロロタン公営墓地を埋め尽くす新しい墓の列。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)

 7月下旬、政府によるワクチン接種推進計画の一環として1万回分の新型コロナワクチンが提供されることになり、首都ジャカルタにあるプロ・ゲバン・メイン・バスターミナルで、数千人の接種希望者が長蛇の列を作った。

 一方、町の反対側では、新型コロナウイルス感染症で亡くなった犠牲者の墓地に人々が列をなした。遺族が花を手向け、最後の別れを告げているすぐそばで、ショベルカーが新たな墓を掘っていた。

 3月に開園したばかりの公営墓地は、当初7200人分の遺体を受け入れられるよう設計されていたが、感染拡大に伴う死者数の増加に対応するため、町は新たに10万平方メートルを追加しようと計画している。

東ジャカルタのワクチン接種会場で、1回目の中国シノバック製ワクチンの接種を受けるザーワ・ファリシャさん(16歳)。7月下旬、インドネシアで少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の割合は15%にとどまっていた。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)
東ジャカルタのワクチン接種会場で、1回目の中国シノバック製ワクチンの接種を受けるザーワ・ファリシャさん(16歳)。7月下旬、インドネシアで少なくとも1回のワクチン接種を受けた人の割合は15%にとどまっていた。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)

 変異したデルタ株が猛威を振るうなか、報告されている感染者数は実際の数を大きく下回っているとする見方が多い。検査の陽性率は27%を超えており、検査を受けず、陽性であることに気付かないで生活している感染者もかなりの数に上るであろうことを示している。

 医療は全国的に逼迫している。先週にはジャワ島で病床と酸素が足りなくなり、今週にはバリ島でも同様の事態に陥った。ジャカルタの病院では、病床使用率が73%にまで上昇した。7月前半だけで114人の医師が新型コロナに感染して死亡し、パンデミックが始まって以来1500人の医療従事者が命を落としている。

 現在、同国の新型コロナと診断された例の致死率は2.7%だが、この先医療インフラが整っていない地方へも感染が拡大すれば、その数字は上昇するとみられている。

1万回分のワクチンが提供された東ジャカルタのバスターミナルに、数千人の接種希望者が集まった。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)
1万回分のワクチンが提供された東ジャカルタのバスターミナルに、数千人の接種希望者が集まった。(PHOTOGRAPH BY MUHAMMAD FADLI)

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