第43回 ハキリアリは農業を営む(パート1)

セファロテスハキリアリ(ハチ目:アリ科:ハキリアリ属)の行列
Procession of Atta cephalotes leafcutter ants
花びらを運ぶハキリアリ。木の上から下りてくる通り道にカメラを置いたので、少し戸惑っている。
体長:7 mm 撮影地:サラピキ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 熱帯アメリカを代表する昆虫のひとつ、ハキリアリは農業を営むアリだ。木々や草花から新鮮な葉や花を切り取って巣に持ち帰り、巣の中で細かくして、それに菌を植え付けて小さなキノコを栽培、収穫して食べる。

 このアリが誕生してもう5000万年にもなるそうだから、人間の農業(1万年)に比べてずいぶん長い歴史がある。

 ハキリアリの集団(コロニー)には女王、それに大型、中型、小型の働きアリたちがいて、大型は巣や行列を守る「兵隊アリ」、小型はキノコの世話などをする「世話アリ」。そして一連の農作業のうち葉っぱ切りと運搬を担当するのが、中型の「葉切りアリ」だ。

 写真を見てもらえばわかるように、体が「葉切り」に適した形になっていて、葉っぱや花だけでなく、果実や細い茎、たま~に落ち葉だって切り取って運んでくる。

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葉を切り取るセファロテスハキリアリの中型の働きアリ
Leaf-cutting caste, media, of Atta cephalotes workers

葉を切るのは中型働きアリの役割。脚の長さやあごの大きさが、葉を切って運ぶのにちょうどよくできている。運んできた葉を途中で出会ったアリに受け渡すこともある。右の写真をよく見てもらうと、自分自身と切り取った葉が落ちないように、長い中脚と後脚で元の葉につかまっているのがわかる。
体長:7 mm 撮影地:サラピキ(左)、ブラウリオ・カリージョ国立公園(右)、コスタリカ(写真クリックで拡大)
セファロテスハキリアリ(ハチ目:アリ科:ハキリアリ属)の行列
Procession of Atta cephalotes leafcutter ants
海岸近くの砂地の上、灼熱の太陽の下で、葉がベルトコンベアのように動いていた。ちなみに、ハキリアリのことをコスタリカではソンポパ(Zompopa)と呼ぶ。
体長:7 mm 撮影地:カウイータ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)