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自動車大手の設備投資は8%増の2.4兆円、トヨタはEV生産ライン「2→60」への通過点

電動化対応に拍車
自動車大手の設備投資は8%増の2.4兆円、トヨタはEV生産ライン「2→60」への通過点

トヨタの元町工場組立生産ライン(トヨタ提供、写真はイメージ)

乗用車各社がコロナ禍で低迷した設備投資を拡大している。2022年3月期見通しを未定としたスズキを除く6社合計の同期の設備投資は前期比7・9%増の2兆4550億円を見込む。電動車投入など中長期の成長をにらんだ投資を含め規模が膨らむ見通し。一方、各国の環境規制強化を巡る動きが各社の電動化を加速。脱炭素化への道筋は各社で異なり、今後の動向が注目される。

「トヨタはカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に向けてトップランナーであり続ける」(長田准トヨタ自動車執行役員)。同社は12日の決算説明会で30年に電動車の世界販売を800万台とする目標を発表。そのうち電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)で200万台を見込み、脱炭素化への対応を加速する姿勢を鮮明にした。目標達成には現状2本のEV生産ラインを30倍の60本に増やす必要があるとし、長田執行役員は「ここに対しても積極的に投資をしていくことになる」と述べた。

22年3月期に新型EV「アリア」や独自技術「eパワー」を搭載したハイブリッド車(HV)の投入を予定する日産自動車。新車投入コストの増加が損益を1500億円下押しし、同期の営業損益はゼロ(前期は1506億円の赤字)を見込む。内田誠社長は「厳しい状況が続くが、設備投資や研究開発費などの将来に向けた投資は引き続き積極的に行う」と覚悟を示す。

日本政府が30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%減らすと4月に発表するなど、国内外で脱炭素の機運は急速に高まる。SUBARU(スバル)の中村知美社長は「この1年で急速に(環境への)関心が高まっており、取り組みを加速させなければならない」と、電動車の発売時期の前倒しなどを検討する意向を示した。

ホンダも40年までに新車をすべてEVとFCVに切り替えると発表。HVを含まない目標で、日本の車メーカーで初めて「脱ガソリン車」の方針を打ち出した。一方、トヨタはHV、PHV、EV、FCVと電動車にフルラインアップで対応。前田昌彦執行役員は「今は選択肢を広げていきたい」とし、水素を燃料とする「水素エンジン」の開発も本格化する。

マツダの丸本明社長は「この時点で何かに絞ることはリスクが高いのかなと考えている」とし、ロータリーエンジンを含めた多様な電動化技術に対応していく考えだ。各社の電動化戦略の行方はエンジンや電機などの部品メーカーの動向も左右することになりそうだ。

日刊工業新聞2021年5月19日

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