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再生プラスチック革命起こす。施行迫る「循環促進法」まるっと解説

再生プラスチック革命起こす。施行迫る「循環促進法」まるっと解説

首都圏で展開する「ナチュラルローソン」の店舗で、紙袋に包まれた木製スプーンの提供を実証実験

プラスチック製品の過剰使用の見直しと廃棄削減を促す「プラスチック資源循環促進法」の施行が4月に迫った。政府はスプーンなど使い捨てプラ12品目の削減を事業者に義務付ける方針だ。また、プラの使用を減らす設計指針を国が定め、適合商品を認定する制度も創設する。再生プラの使用が企業評価を高めるようになっており、身近な素材であるプラの価値が変わろうとしている。(編集委員・松木喬、同・大友裕登、梶原洵子)

日本では年850万トンの廃プラスチックが発生している。そのうち製品への再利用は2割にとどまり、6割は燃料として焼却されている。また、食品や洗剤を入れる容器・包装用途のプラ消費が多く、国連環境計画によると日本人1人当たりのプラ製容器包装の廃棄量は米国に次いで世界2位だ。

新法はプラの過剰使用の見直しとリサイクルを迫る。政府は閣議決定を経て、一度の使用で廃棄する使い捨てプラを年5トン以上配る事業者に削減を義務付ける。店頭で配るスプーン、ホテルが宿泊客に提供するヘアブラシ、クリーニング店のハンガーなど12品目が対象だ。事業者には有料化や受け取りを断った人へのポイント還元、回収後の再使用などの対策を求める。取り組みが不十分だと国が改善を求め、従わないと50万円以下の罰金を科す。 

国が定める設計指針には簡素化や長寿命化、再生プラの利用、代替素材の採用などの基準も盛り込まれる。基準を満たした認定品を国が優先的に調達することで、メーカーに指針の採用を促す。

メーカーや小売り業者に使用済み製品の自主回収を認める点も、新法の目玉だ。現状は廃棄物処理法の許可がないと回収できず、メーカーはリサイクル事業者経由で再生プラを購入している。自主回収が可能になると良質な再生プラを入手しやすくなり、製品への採用を増やせる。

持続可能な開発目標(SDGs)が社会に浸透し、製品への再生プラ利用を評価する消費者が増加している。また、投資家はESG(環境・社会・企業投資)情報の開示を迫っており、プラの過剰使用削減が企業評価に直結するようになった。新法の施行によって再生プラの需要が増えそうだ。

廃プラから再生ペレットを製造(いその)

プラ専門リサイクル業者、いその(名古屋市東区)の磯野正幸社長は「再生プラは新材よりも安価だから選ばれてきた。コスト優先の意識も変わろうとしている。大きな革命が起きようとしている」と期待する。

木のスプーンに転換

弁当などを購入した際に無料で配られるプラスチック製のスプーンやフォーク。これらのカトラリー類を配布するコンビニエンスストアで、プラ削減に向けた取り組みが動きだしている。

ローソンは2021年8月から、首都圏で展開する「ナチュラルローソン」の都内8店舗で、商品購入者に提供している割り箸とスプーンを紙製の袋に入れ、プラ製のものは木の素材に切り替えて提供する実証実験を開始。現在はナチュラルローソンの直営5店舗で木製スプーン提供の実証を継続している。

ローソンは環境ビジョン「ローソンブルーチャレンジ2050」で、二酸化炭素(CO2)排出量削減、食品ロス削減と並んでプラ削減を重要テーマと位置付け、重要業績評価指標(KPI)を設定した。「実証実験中の木製カトラリーをはじめ、さまざまな取り組みにチャレンジし、削減目標を達成していきたい」(ローソン広報)としている。

コンビニ各社はプラ資源循環促進法の施行に伴う明確な対応を表明していない。ただ、プラ使用量削減は従前から業界の共通課題であり、取り組みを加速している。定量的な削減目標を設定し、植物由来素材への切り替えやプラ製品の軽量化をはじめ、各種施策を実施。今後は製品そのものの脱プラ化に加え、リサイクルの推進、配布の辞退によるポイント還元などを含めた脱プラ提案が進むとみられる。

政府の環境政策を肌で実感できるのが、利用頻度の高い小売り店舗での変化だ。大きなインパクトとなった代表例がレジ袋の有料化。20年に実施された際には、マイバッグの利用が急速に広がるなど、消費者に行動変容を促した。

消費者の環境意識は確実に高まっている。環境配慮の取り組みは、その企業の評価・支持にもつながってくる。新法の施行は、企業の環境対応に拍車をかける機会となる。

化学各社を後押し

新法は化学各社の進める廃プラスチックのリサイクルを後押ししそうだ。各社は化石資源からプラ製品を生産する一方通行のモノづくりから、廃プラをプラ製品に戻す循環型モノづくりへシフトする道を探っている。リサイクルしやすい品質の良い廃プラが大量に必要となるため、回収を促す新法への期待は大きい。

リサイクルの取り組み推進の一環で、化学メーカーとリサイクル事業者の協業の動きも出てきた。三菱ケミカルは、廃棄物処理から樹脂製造まで一貫体制を持つ先進リサイクル企業のリファインバースと2020年に資本業務提携を結んだ。最近では、同社から三菱ケミカルとENEOSが計画するケミカルリサイクル向けの原料廃プラや、廃漁網を再生したナイロン樹脂の調達を決定。順調に協業関係は深まっている。

住友化学は総合リサイクル企業のリバーホールディングス(HD)との業務提携を検討中。自動車部品に使われたポリプロピレン廃材を溶融し、再生プラを作るマテリアルリサイクルを推進する。

日刊工業新聞2022年1月5日

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