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3Dプリンター事業手がけるスタートアップのAIの使い方

3Dプリンター事業手がけるスタートアップのAIの使い方

金属3Dプリンターによる造形品(3DPC提供)

3D Printing Corporation(3DPC、横浜市鶴見区、デヴォア・アレキサンダー社長)は、金属・樹脂・炭素繊維向けの3次元(3D)プリンターや積層造形(AM)装置の販売からコンサルティング、造形品の設計、受託製造まで、3Dプリントに関わる幅広いサービスを提供する。外部向けにAM部品の設計と製造の両方を1社で提供する会社は世界でも少ないという。

うち造形品の設計業務で重宝しているのが米エヌトポロジー(nTop)のソフト。部品の重量や剛性といった設計条件に応じて数学的な計算から最適な3D形状候補を提案してくれるのに加え、一連の作業内容をまとまりのブロックとして登録しておける。設計者はブロックを選んで必要なデータを入力するだけで、設計プロセスを自動化できる。

ただ、機械学習や深層学習のアルゴリズムを使っているわけではなく、厳密には人工知能(AI)ではない。それでも「人間の知能が要求される設計という行為を機械が代替し、広い意味でのAIと言えるのでは」と古賀洋一郎最高技術責任者(CTO)は話す。

nTopソフトの設計事例。足の裏にかかる圧力分布(手前)を参照してシューズのラティス(格子)構造を自動設計する(3DPC提供)

2019年末ごろから同ソフトを導入して以降、特に設計自動化での恩恵が大きいようだ。通常のCADが3次元形状を点の集まりで記述するのに対し、nTopは数式で表現するためデータ容量が小さくて済む。処理スピードも速い。例えば格子構造のような複雑な部品はCADだとデータ量が膨大になり、形状同士の演算にも時間がかかる。nTopは数式の演算のため、人間で数十分間から1時間以上かかる設計プロセスを最短数秒で処理できるという。

現在の社員は30人ほど。「ベンチャー企業なので設計者の数は多くないが、3Dプリントの受注が増え、手いっぱいの状態。自動化機能をうまく使えば、エンジニアがあたかも何百人もいるような形で業務を効率化できるかもしれない」と古賀氏は期待をかける。

製品を大量に生産しながら個々の顧客ニーズに合わせて一部を作り替える「マス・カスタマイゼーション」の将来トレンドにも、3Dプリントは打ってつけの生産手法と言われる。古賀氏によれば、その大きなボトルネックが設計プロセス。種類が多くなるため個別パーツの設計を瞬時に終わらせなければならず、「nTopがマス・カスタマイゼーションに寄与する可能性がある」と予測する。

3Dプリンターのみならず、設計の自動化と高速化も新しい時代のモノづくりを切り開く大きな役割を担っている。

日刊工業新聞 2023年01月20日

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