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約3畳の“倉庫”で生活する30代派遣切り男性。住所がないから就活もできない

 厚生労働省によれば、新型コロナウイルス感染症に起因する解雇等見込み労働者数は、’21年10月8日時点で11万8317人。うち非正規雇用者は5万4152人。新型コロナは多くの失業者を出すなど、“貧困パンデミック”とでも言うべき状況が生まれている。生活困窮層は分厚くなり、さらに下流の“底”がヒビ割れ奈落に落ちる人も……。そんなニッポンの貧困のリアルを総力取材。今回は仕事も住むところも失った30代男性の実態から貧困問題を考える。

コロナ禍で派遣切り。借金の末、家も失い事務所の倉庫で生活中

貧困パンデミック

約3畳の“倉庫”で生活する北村拓人さん(仮名・38歳)

 とある塗装会社の倉庫で寝泊まりしている北村拓人さん(仮名・38歳)は、ほんの1年前までは自分で契約した賃貸アパートで普通の生活をしていた。 「いわゆる就職氷河期世代で、正社員として定職に就くことができず、非正規雇用で食品工場に勤務。自転車操業ながらつましく生活をしていたんですが……。友人の借金の連帯保証人になったことがあり、突然その借金を肩代わりすることになってしまったんです」  そこに追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で派遣切り。コロナの特別定額給付金も借金の返済で消え、家賃の滞納を繰り返した末にアパートも追い出されてしまった。

ネットカフェを転々とするホームレスに

 その後、ネットカフェを転々とするも緊急事態宣言の影響で23時には閉まってしまうため、ホームレスになる。寝床を求める彼に光明が差したのは、ネットの世界からだった。 「貧困者が多く書き込みをする『G』というネット掲示板の存在を知りました。似たような境遇の人たちが安く住める家を探して書き込んでいたので、私もダメもとですが初期費用と家賃ゼロでも住ませてくれる人がいないか、助けを求めることにしたんです」  すると程なくして初期費用ゼロ、さらに家賃も最初の2か月無料で住ませてくれるというメールが届く。コロナ禍で住居を失った人を支援したいというオーナーから入居の条件等を聞いたが、北村さんがこの家に住むことはなかったという。一体、なぜか?
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その物件に住む条件は…
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