60年代ですでに「94ps/L」を誇ったリアルスポーツ|1964年式 ホンダ S600 Vol.1

S500から、車名通り排気量を606ccに拡大し、57 ps/8500rpmの最高出力を獲得したS600。

       
【1964年式 ホンダ S600 Vol.1】

 2輪メーカーとして躍進したホンダが、4輪へ進出するのは創業者の本田宗一郎の悲願だった。その第一歩となったのが、1962年の「第9回全日本自動車ショー」に現れたホンダスポーツ360とスポーツ500だ。そして、翌1963年10月にS500を発売した。
 
 このS500に搭載されたエンジンは、アルミ合金製の4気筒DOHCで、1気筒当たり2バルブ方式、3個のメインベアリングを採用。半球形燃焼室を持ち、インテークとエキゾーストポートが独立した設計で、まさにレーシングエンジンそのもののレイアウトだ。

 このAS280型エンジンは、ボア54mm×ストローク58mmで、排気量は531cc。ロングストロークながら、各気筒ごとに京浜製CVB型キャブを装着し、最高出力44ps/8000rpm、最大トルク4.6kg/4500rpmを発揮。軽々と8000rpm以上まで回り、耐久、信頼性も抜群だった。

▶▶▶【画像23枚】フルOHされたオールアルミ製606cc4気筒DOHCのAS285E型エンジンなど

 ところが、このS500は発売からわずか3カ月でS600へと進化する。これはモアパワーの要望に応えたもので、車名通り排気量を606ccに拡大し、57 ps/8500rpmの最高出力を獲得。換算するとAS285E型は、94ps/Lというハイチューンユニットとなっている。ちなみに、1966年に登場するS800に搭載されたAS800E型は、791ccに排気量がアップされ、70 ps/8000rpmで、換算すると88ps/L。いかにS600がハイチューンだったかが分かる。



S500からS600の初期型まで装着されていた特徴的なヘッドライトカバー。ガラス製ということもあって、飛び石などで割れることもあったそうで、1964年11月には廃止された。





トランクの左側前方に設けられた燃料給油口。S600では厚みが薄いタイプが標準だ。



1964年式 ホンダ S600(AS285)
Specification 諸元
全長 3300mm
全幅 1430mm
全高 1200mm
ホイールベース 2000mm
トレッド前/後 1150 / 1128mm
最低地上高 160mm
室内長 840mm
室内幅 1195mm
室内高 935mm
車両重量 720kg
乗車定員 2名
最高速度 145km / h
0→400m加速 18.7秒
登坂能力sinθ 0.33
最小回転半径 4.3m
エンジン型式 AS285E型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量 606cc
ボア×ストローク 54.5×65.0mm
圧縮比 9.5:1
最高出力 57ps / 8500rpm
最大トルク 5.2kg-m / 5500rpm
トランスミッション型式 前進4段後退 1段シンクロメッシュ
変速比 1速 3.29 / 2速 2.19 / 3速 1.43 / 4速 1.091 / 後退 3.89
最終減速比 5.88
燃料タンク容量 25L
ステアリング形式 ラック&ピニオン(15.1)
サスペンション 前/後ダブルウイッシュボーン・トーションバー / トレーリングアーム・コイル
ブレーキ 前後ともリーディングトレーリング
タイヤ 前後とも5.20-13-4PR
発売当時価格 50.9万円


【2】【3】に続く

初出:Nostalgic Hero 2016年 4月号 vol.174(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1964年式 ホンダ S600(全3記事)

関連記事: 読者が選ぶ、国産旧車人気トップ10

関連記事:S600

text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : KAZUHISA MASUDA/益田和久

RECOMMENDED

RELATED

RANKING