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サニブラウンから「突然のお知らせ」。
五輪前でのプロ転向、その真意は?

posted2019/11/19 19:00

 
サニブラウンから「突然のお知らせ」。五輪前でのプロ転向、その真意は?<Number Web> photograph by Ayako Oikawa

6月7日の全米大学選手権100m決勝では、日本新となる9秒97を記録した。

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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Ayako Oikawa

「突然のお知らせになりますが、プロ選手になることを決意しました。プロの陸上選手になることは、陸上を始めてから目標の一つでした。より陸上に集中できる環境に身を置いて、高いレベルで競技に取り組み、プロという厳しい世界で結果を出していけるようにベストを尽くしたいと思っています。

 これまで指導いただいたコーチ、支えてくれたチームメイトや家族には心から感謝しています。教えていただいたこと、陸上を通して出会った仲間を大切にしながら、競技に邁進していきます。またプロになっても学業は続けます。今後とも応援よろしくお願いします。」(サニブラウン本人ツイッターより)

 11月15日、サニブラウン・アブデルハキームがプロ宣言をした。

 20歳のサニブラウンが、来るべきビッグイヤーを前に大きな決断を下した。

決意が固まったテイラーの言葉。

「6月の全米学生選手権が終わってからプロになることを意識していました。でもその後にドーハ世界陸上が控えていたので、特に誰にも相談しませんでした」

 ドーハで結果を出したら……そう胸に秘めて世界陸上に臨んだ。100mは残念ながら準決勝敗退。しかしアンカーを担当した400mリレーではアジア新記録で銅メダルを獲得した。

 表彰式の場で、サニブラウンは大きな笑みを浮かべ、リレーメンバーの3人とメダルを受け取ったが、頭の中には大きな思いが渦巻いていた。

 表彰式を終えるとすぐにバックストレートにいる、ある選手に会いに行った。

 三段跳で世界陸上3連覇を果たしたクリスチャン・テイラーだった。フロリダ大学の先輩で、2017年には南アフリカ、そしてオランダで時に兄のように面倒を見てくれ、時に叱咤激励してくれたサニブラウンにとって大きな存在だ。

「クリスチャンは学生からプロに転向していますし、世界トップで戦っている選手ですし、身近な選手では一番親しいし、話しやすいので。クリスチャンからは『自分のやりたいことをやった方がいい。東京五輪に向けて悔いのないように全力を尽くしてもいいんじゃないかな』と言われました」

 プロになるのか、それとも学生として走り続けるのか。テイラーの言葉がサニブラウンの背中を押した。

【次ページ】 より高いレベルで、自分を試したい。

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