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内田篤人や酒井高徳、パク・チソンも味わった「欧州と日本のサッカーと思想の違い」… “神との距離感”や上下関係を考える

posted2021/04/30 17:01

 
内田篤人や酒井高徳、パク・チソンも味わった「欧州と日本のサッカーと思想の違い」…  “神との距離感”や上下関係を考える<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono/Shigeki Yamamoto

内田篤人やパク・チソンはアジア人として欧州の基準と向き合ってきた

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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Tamon Matsuzono/Shigeki Yamamoto

 たった一つのゴール。これが今でも忘れられない。

 05-06年シーズンのドイツ。最終節でもう順位も決まっていた消化試合。チームメイトにはこう告げていた。

「今日が俺のヨーロッパでの最後の試合だ」

「だから絶対ゴールを決めて帰る」

 3-5-2の左MFで出場したが、かなり相手ゴール前に近いポジションを取り続けた。幾度か監督から「守備に下がれ」という指示が出たが、少々すっ飛ばす。もう順位も決まっていたし、前半ですでに3-0とリードしていた。後半の半分が過ぎた頃だっただろうか。右から来たクロスを一度止め、右足でシュートを打った。強いキックではなかったがコースが良かった。インフロント気味にひっかけたボールが、ゴールに入っていった……。

 すみません。自分自身のゴールです。

 06年6月のドイツ10部リーグでのことだ。筆者は当時、「Number」の取材でケルンの地で10部リーグに1シーズン限定でガチのチャレンジを敢行した。在籍中に全26試合あったが、そのうち13試合に出場、1ゴールを決めた。はい、4試合だけレギュラーで出て、そのほかはサブ。残りの13試合は思いっきりベンチ外でした。

「で、キミは何歳なの?」

 なんで覚えているのかというと、その試合の前日、監督に携帯のメッセージで「明日は最後だから背番号10をつけたい」と送ったところ、当日の試合前に呼び出されたからだ。

 何かと思ったら……褒められた。「おまえ、やっと何を考えているのか言ったな」と。自分は日本では相当うるさい方だと思っていたが、「本場」では自己主張がまったく足りていなかったのだ。自分をさらけ出し、ゴールを決めた最終節後のパーティーではチームメイトから「ゴールゲッター」ともてはやされた。そして最後に、メンバーから聞かれた。

「で、キミは何歳なの?」

 別れの時に年齢を聞かれるなんて……そういえばこちらもチームメイトの誰が何歳だとかいうことも全く知らなかった。聞きもしない。どうでもいいことなのだ。

欧州と日本は違う、をどう言語化するか

 欧州と日本は違う。

 サッカーのシーンでも、もう100年近く言われてきた話ではないか。

 本稿はこのぼんやりとした違いを言語化することを試みるものだ。

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