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「プロ野球もJも有観客なのになぜ五輪は無観客?」「スポーツが勇気を与える、は大嫌い」水球日本代表監督の本音を聞いた

posted2021/07/19 17:07

 
「プロ野球もJも有観客なのになぜ五輪は無観客?」「スポーツが勇気を与える、は大嫌い」水球日本代表監督の本音を聞いた<Number Web> photograph by AFLO

水球日本代表。6月の水球ワールドリーグ、フランス戦で

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中村計

中村計Kei Nakamura

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4年に1度の、しかも地元で開催される「世界の祭典」前夜とは思えない重苦しいムードだ。メイン会場の東京都は今も、コロナの感染拡大による緊急事態宣言下にある。国民の過半数は東京五輪開催に反対しているという。世論を「読み」、メディアの取り上げ方も慎重だ。「楽しみ」――。そんなひと言さえ、憚られる。

そんな中、選手たちはどんな思いで過ごし、そして、どんな思いで本番を迎えようとしているのか。「超攻撃型」スタイルを貫く水球男子は、2016年のリオ五輪で32年ぶりに本大会出場を果たすなど、近年、急速に世界との距離を縮めてきた。2012年に代表監督に復帰し、8年計画で東京でのメダル獲得を目指してきた大本洋嗣に、今の率直な思いを語ってもらった。

「1年後、僕は必要とされているでしょうか」

――それにしても、不思議な感じですよね。とても、これから東京で五輪が開催されるとは思えない雰囲気です。取材依頼とか、きていますか?

大本 私にはほとんどないですね。選手にはちょこっときていますけど。

――1年延期が決まったのは昨年3月24日でした。その時、ちょうど盛岡で合宿をしていたんですよね。

大本 あの日のことは生涯、忘れないでしょうね。大人のあんな悔し涙を見たのは初めてでしたから。私は何も言えなかった。五輪は4年に1度ですが、アスリートにとっては一生に1度あるかどうかの舞台。そもそも代表に入るだけでも大変ですし、その時、五輪への出場権を得られるかどうかもわからない。選手として五輪に出られるというのは、奇跡的なことなんです。それはショックだったと思うし、あのとき、どんな言葉でも彼らの心の傷は癒せなかったと思います。中には「1年後、僕は必要とされているでしょうか」って本気で聞いてきた選手もいる。そんなの答えられるわけないじゃないですか。どうなっているかもわからないのに。でも、あのときは、選手も絶望感でちょっと頭がおかしくなっていたんだと思います。

「オリンピックがなくなった方がいいかもしれない」

――延期するとは言ったものの、実際、コロナがなかなか収束しない中、いつ中止の決定が下されてもおかしくない状況でした。そんな中、練習のモチベーションはどう保っていたのですか。

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