グリーンのフェラーリはいかが?王族に所有されていたユニークな275GTS

RM Sothebys

1964年のパリ・サロンでは、275GTBと275GTSという2台の新型フェラーリが登場した。275GTBと275GTSの2台のフェラーリは、マルチチューブラーフレームに完全独立サスペンション、5速マニュアルトランスミッション、3.3リッター コロンボ V12気筒エンジンを搭載という共通点を持っていた。GTBのボディワークはスカリエッティが担当し、GTSのコーチワークはピニンファリーナが担当するなど、両車の外観は大きく異なっていた。275GTBのエンジンは280馬力、275GTSのエンジンは260馬力を発揮する。

オープンのGTSは、ドア、ボンネット、トランクリッドがアルミ製のスチール製であるにもかかわらず、ベルリネッタとは全く異なる外観とプロポーションをしていた。カバーされていないヘッドランプ、トリプルルーバーのフェンダー、テーパーのついたリアエンド、標準装備のボラーニ製ワイヤーホイールなどがスパイダーの大きな特徴であり、これらの特徴は後続の330GTS、365GTSにも引き継がれた。275GTSは、1年半の生産期間中にわずか200台しか製造されず、ベルリネッタよりもはるかに希少なモデルとなっている。



このグリーンの275GTSは2000年代初頭にオリジナルの塗装に戻すなどのレストアが施され、王族にも所有されていた歴史を持つ。シャシーNo. 08015は189台目のモデルで、1966年7月に完成し、ヴェルデ・ピノ・メタリザートのボディに、クリームレザーのインテリアで仕上げられた。この美しいカラースキームは、モロッコ国王ハサン2世の弟であるアブダラ・ムーレイ王子によって注文された。緑と白は王国のナショナルカラーであるのだ。

フロントバンパーに2つのフォグランプを付けたこの275GTSは、モロッコに送られ、「3267-50」というナショナルプレートで登録された。イタリアのスポーツカーが好きだったアブダラは、この頃、フェラーリ250GTカブリオレ・シリーズIIも所有していたことから、あまり乗られてはいなかったと考えられる。

1960年代後半には、カサブランカ在住のフランス人、ルネ・ルーに売却されたが、1970年代前半にはアメリカに輸出された。1974年末、フロリダのディーラーが『Road & Track』誌や『Ferrari Club of America』誌に広告を出してGTSを売り出している。1975年3月、カンザス州カンザスシティのジム・スフェトコがこの275を購入し、少なくとも6年間はカンザス州のヒマワリ畑に置かれていたそうだ。



1987年半ば、275GTSは、カリフォルニア州ノースハリウッドでエキゾチックカーのブローカーをしていたリック・コールとマーティ・ヤコビアンの有名なパートナーの手に渡った。この時点で、インテリアは黒のレザーに変更されていた。それから数カ月後、この車はニューヨークのナイアックにある有名なディーラー、エド・ジュリストのビンテージ・カー・ストアに引き取られ、その時のオドメーターは47,300kmを示していた。

1988年10月、モナコのオークションでドイツ人の愛好家に購入されたが、1989年5月には再び売りに出される。1992年10月にパリ在住の弁護士マルク・ドーバスに売却されてからは、クラブ・フェラーリ・フランスのミーティングや、1998年6月にディジョン・プレノワで開催されたフェラーリ・ヒストリック・チャレンジなど、フランスで開催された愛好家向けのイベントに参加を重ねていたようだ。



1999年には、エンジンのオーバーホールを含むレストアがおこなわれ、一連のリフレッシュ作業が施された。2001年には、フランスのグロンにあるVirginia Cars社によって、オリジナルカラーに美しくリファインされ、その1年後には、オーセールのSellerie de l'Epeeによって、シートとドアパネルがレッドレザーに変更され、個性的で魅力的なカラーコンビネーションとなった。

2015年末には、フランスの著名なコレクターがこのスパイダーを手に入れた。彼はこの車を大切に維持し続けており、オドメーターは現在約93,000キロを示している。オリジナルのエンジンを保持しているが、ギアボックスについてはオリジナルではない。

ユニークな歴史を持つ美しい一台だが、オークションでは落札となっており未だ新しいオーナーが見つかっていない。推定落札価格は160万~180万ドルとなっている。

オクタン日本版編集部

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