日経平均株価「史上最高値更新」でも、米国株投資を進めるべきふたつの理由

東京ウォーカー(全国版)

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2024年3月4日、日経平均株価は史上初の4万円台を突破し、史上最高値を更新した。急ピッチの株価上昇に警戒感はあるものの、メディアやSNSではこの株価水準が定着することへの期待感は高く、なかには「バブル以来の強い日本が帰ってきた」という喝采の声もある。しかし、実際のところ日本経済の成長性は期待できるのだろうか?また、国際的に見て有望な投資対象となり得るだろうか?米国株専門の人気YouTuberであるロジャーパパさんに、客観的な考察を聞いた。

投資系YouTuber・ロジャーパパの「相場の格言から学ぶ株式投資」


「日本経済の再生」を阻む、ふたつの成長阻害要因

バブル絶頂期の1989年12月29日につけた3万9098円以来、34年ぶりの日経平均株価の最高値更新とあって、「失われた30年」と呼ばれた低迷期をいよいよ脱するのではないかという期待に湧いています。「日本企業への再評価の兆し」「日本経済の復活」など、ネットメディアでは景気のいいフレーズが散見されます。

折しも2024年より新NISAがスタートし、新たに株式投資を始めようとしている人や、投資額を増やそうと思っている人にとっては、こうしたニュースに「国内株がこれから成長するのではないか」という期待を感じるかもしれません。

みなさんが日本経済と企業のファンダメンタルズを精査し、意志を持って国内銘柄を検討するのであれば、なにもいうことはありません。しかし、ただお祭りムードに乗って「とにかく日本株を買ってみよう」と思うのであれば、冷静になることをおすすめします。

「話に投資せず、物に投資せよ」

これは20世紀の経済評論家、ハーバート・N.カッソンの格言ですが、噂や人の話、テレビやSNSの情報だけで大事なお金を投資してしまうことを戒めています。投資判断はつねに「根拠」をもって行われなければ、それはただのギャンブルに過ぎないからです。

日本株を投資対象とするのなら、なにを根拠に、どの程度の成長が期待できるのかをロジカルに説明できることが求められます。

さて、ここまでの物言いで察することかと思いますが、私自身は日本株が今後も積極的に投資をするべき成長を見せるとは思っていません。これまでと変わらず、米国株を中心とした海外への投資を行うスタンスです。

個々の銘柄を見れば、高い成長性を持つ日本企業は確かに存在します。しかし、日本市場全体でとらえれば、今後も成長は続くとしても、それは世界経済が成長しているから牽引されているのであり、海外の成長性に匹敵しないと考えているからです。

その根拠は、ふたつあります。
❶少子高齢化と人口減少による国力の低下<br />❷金利差と貿易赤字による「日本円」の弱さ
それぞれについて解説していきましょう。

生産性の課題と人口減少が日本の成長性を阻害する

現在、日経平均株価が上昇を続けている理由は、インフレ(物価高)と円安です。

コアCPI(消費者物価指数から、生鮮食品を除外した数値)は1980年代のオイルショックに匹敵する上昇率を示しているにも関わらず、日銀は金融緩和を維持し、インフレに歯止めをかけていません。その間に、米国ではその経済の強さゆえに政策金利をゼロから5%以上に引き上げる強烈なインフレ対策を行いましたが、日本ではマイナス金利を解除し、ゼロ金利を検討することが精一杯でした。

その結果、高い物価上昇率に対して賃金上昇率は低く、企業の収益は増える一方だったのです。これが生活実感のない株価の上昇を生み出しました。

また、円安は海外からの投資を集め、株価の上昇に働きかけます。円安によって日本株が割安になるからです。

当然ながら、海外の投資家は日本の状況を把握したうえで投資を行っています。2023年初頭の段階では、日本企業の多くがPBR(株価純資産倍率)1倍を切る「割安な銘柄」であったこともそうですし、2024年から新NISAがスタートすることも海外の投資を集めた要因でしょう。

日本人の預貯金が1000兆円あることも、投資家たちはわかっているのです。新NISAによって、その1%でも投資に回れば10兆円が市場に投入されるのですから、株価の上昇が見込まれます。

折しも、米国経済は金利上昇によるリセッション(景気後退局面)が懸念され、かといって中国はバブル崩壊にあることから、成長性は低くとも比較的安全で、割安感のある日本株に投資が集まっていると考えられます。

しかし、その投資が継続するかといえば、難しいでしょう。上記のことから、日本の株価上昇は名目上に過ぎず、実質的な経済成長ではないからです。むしろ、将来を見越せば、すでに世界トップの高齢化率はさらに進み、人口が減少する以上、GDPは低下するとみなすのが自然です。

日本企業の体質として、一度上げた給料を容易には下げられず、雇用した従業員は解雇できない結果、多くの企業で生産性が低く給与は高い高齢の余剰人材があふれています。この体質に劇的な変化は見られません。

海外に目を向ければ、自国で資源を採掘でき、人口は増加し、企業はシビアに人材を流動化させて生産性を高める国々があるのです。長期的に高い成長を見込める国に、投資家たちのマネーが向くのは当然のことです。

深刻な貿易赤字による「日本円」の弱さ

円安が海外からの投資を集めるのなら、それが「いいこと」かというと、そんなわけはありません。円安は単純に、海外に比べて自国経済の弱さをあらわしていますから、投資を得ても実質的な経済力は弱いままです。少し成長すれば、株は売られて利益を奪われるだけでしょう。

円安は輸出量を拡大させ、見た目の収益は向上しますが、営業利益率は低く「売れている割に儲からない」状態になります。円安が続く限り、日本の成長に歯止めがかかり続けるというわけです。また、輸入品の価格は上がり、輸入に頼るほど国内のインフレに影響します。

現在、「日本円」は先進国の通貨で最弱であることが、日銀が算出する「実質実効為替レート」で明確に出ています。これは貿易量や物価水準をもとに算出される、通貨の購買力をあらわす指標です。100を基準とし、低ければ低いほど海外との物価格差や賃金格差があることをあらわします。

日本は2010年代半ばから現在まで、70〜80のレートにありますが、これは1970年代前半、円ドル相場が1ドル=300円台の時代と同じレートです。相場は当時の半分の1ドル=150円であっても、海外に行けば1970年代と同等の物価のギャップを感じることになります。

日本人が海外に行くと「チェーン店のランチで3000円以上する!」といって圧倒され、アメリカのビッグマックが15ドル(約2200円)することに驚くのは当然です。

逆に、日本に来た欧米人が「日本は食事がおいしいのに安い!」といって喜ぶのもまた、当然です。日本で2,500円あれば、居酒屋で刺身盛りを注文したり、レストランチェーンで和牛ステーキを食べたりすることができますが、欧米人にとってそれが「ビックマック程度の価格」で享受できるのです。

では今後、円安が改善されるかといえば、一時的に円高になることはあっても、長期的にはさらなる円安が進む可能性があります。

原因のひとつは金利差です。お金は金利の高い国へと流れていきます。円安で割安な日本株に投資が集まったものの、長期的に資産を預けるなら国債をはじめとする債券です。債券は政策金利に連動するため、米国をはじめとする高金利国へとマネーが流れます。日本のゼロ金利では、それは望むべくもありません。

そして最大の原因は、長らく続く深刻な貿易赤字であり、この改善の目は見えません。日本製品の国際競争力の問題もありますが、さらに絶望的な要因はデジタル収支です。みなさんが利用しているWEBサービスを思い出してください。通販はAmazon、SNSはXやFacebook、検索やWeb広告はGoogle、エンタメはYouTubeやNetflix、さらに仕事で使用している業務ツールはどうでしょうか。ほとんど米国資本のサービスです。

Webサービスにはモノがないので気がつきませんが、利用するほどサービスを輸入しているのと同じです。プラットフォームを押さえられている以上、デジタル領域が進化するほどデジタル収支は輸入超過が増加していきます。

これらの具体的なマイナス要因がありながら、「日本経済の再生」を無邪気に信じることは、私にはできません。解決すべき課題が多過ぎるのです。

経済活動における「カントリーバイアス」からの脱却

では、日本で生活している限り、国際的な物価格差と賃金格差で損をし続けないといけないのか?そんなことはありません。単純な話なのですが、みなさんの経済活動を米ドルベースで行えばいいのです。

先に述べたように、日本円は長期的にさらなる円安になりかねません。つまり、日本円で資産を保有している限り、みなさんの資産の国際的な価値は相対的に下がっていく可能性があります。

それなら、米ドルを保有し、米ドルが資産の中心であればいいのです。国際的に、あるいは円に対して米ドルが強くなるほど、資産の価値は高まることになります。

米国に住まなくても、英語が話せなくても、さらに外資系企業で働かなくても、株式投資ではスマホから簡単に米ドルで売買を行い、米国経済に参加することができます。日本人だからといって、個人の経済活動まで日本にとらわれる必要はありません。

「日本人なら日本株を買って経済を支援するべきではないか」

私自身、米国株投資のYouTuberとして活動するなかで、そういわれることがあります。しかし、それはあまりにカントリーバイアスにとらわれた発想だと思うのです。それに、私が米国株であげた利益から、きちんと約20%が税金として日本政府に納められています。

日本は世界に類を見ない治安のいい国で、子育てがしやすく、確かな医療制度もあります。なにより、生まれ育った日本が大好きだから、この国に住んでいます。その暮らしやすさを享受しながら、経済活動では海外の成長性で外貨を得て、日本に還元していく。そういった個人投資家が増えれば、投資の面から日本の経済を支えることにもつながるはずです。

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟

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