どこか生き物のような機械が活躍するスチームパンク。レトロフューチャーなかっこよさが魅力ですが、逆に生き物が機械になっていたら、それはクールな姿に変貌します。

 K SUZUKIさんは、昆虫などをモチーフに機械化された生命体を手がける造形作家。最近は魚モチーフも手がけ、その作品世界が広がっています。

 数年前、造形作家・宇田川誉仁さんによる機械と生物が融合したような作品を見たことをきっかけに、機械昆虫を作り始めたK SUZUKIさん。もともと趣味だったプラモデル作りの腕も活用し、本物に近づけつつも、メタリックな質感塗装が印象的な作品を作り続けています。

K SUZUKIさんの機械昆虫(K SUZUKIさん提供)

 粘土やパテ、さらに金属部品やプラスチックのパーツを用いて作られた作品は、ツヤツヤの色合いが鮮やかで、昆虫の持つ機械的な側面を再認識させてくれます。新作のトンボは、高さ41cm×幅38cm×長さ31cmという大型の作品で、手に持つとその巨大さが実感できます。

K SUZUKIさんの機械昆虫「トンボ」はこれくらいの大きさ(K SUZUKIさん提供)

 SUZUKIさんはこのところ、昆虫だけにとどまらず、魚をモチーフにした作品も手がけるようになりました。ピラルクを機械化した作品では、柔らかく身をくねらせる姿とシックな色合いで、これまでとは違った作風も感じさせてくれます。

K SUZUKIさんの機械生物「ピラルク」(K SUZUKIさん提供)

 これについて「今までは造形がイマイチでも派手な塗装で誤魔化している部分がありました」と自己分析しているSUZUKIさん。「今後ステップアップしていくために塗装に頼りすぎず造形の技術を上げたいと思い、色数を減らした作品を作ってみました」と話してくれました。

 硬質な感じがする昆虫に対し、水の中を柔らかく泳ぐ魚は質感が正反対。慣れないこともあり、結構造形には苦戦したそうで、特にヒレは動きや表情をつけるのに大変だったのだとか。

 「思ってた形と違う形で固まってしまったり、表面処理を行ったことで溝が消えてしまい彫り直したりといろいろあり、とても勉強になりました」

造形に苦心したというヒレのディティール(K SUZUKIさん提供)

 また、今回は今まで使っていた紙粘土ではなく、石粉粘土を使ってみたとのこと。それぞれ特性の違いがありますが、今後は石粉粘土を使っていきたいという気持ちもあり、新しい素材にチャレンジしたのだとか。

今回は石粉粘土で造形(K SUZUKIさん提供)

 彩色は水彩のアクリル絵の具を使い、実物のピラルクと同じように頭から前半部分は黒に近いグレー、尾にいくに従い赤のグラデーションとなっている色合いをベースにしています。ここにゴールドを重ねていき、ツヤを抑えた真鍮のような質感を生み出しました。

彩色の下地(K SUZUKIさん提供)

落ち着いた色合い(K SUZUKIさん提供)

 背中にあるドラム型の機械は動力炉でしょうか。頭の下と下半身から伸びる排気管のようなパーツは、ウォータージェット推進のノズルのようにも見えます。水の中深く、滑らかに進んでいく姿が想像できますね。

背中のメカ(K SUZUKIさん提供)

 新たな作風も身につけ、作品世界を広げているSUZUKIさん。「今までは実在する生物に忠実な作品を作っていましたが、これからは想像力を広げて空想の生き物をモチーフに、自分しか作れない作品を残していきたいです」と、今後についても語っています。

 SUZUKIさんの作品はTwitterやInstagram(by_m028)、YouTubeチャンネルで見られるほか、2023年1月7日~20日には、横浜AAA Galleryにて開催される「新春神業展」にも出品予定。間近で作品を見られるチャンスです。

<記事化協力>
K SUZUKIさん(@ mitsuo_j28)

(咲村珠樹)