岡田育「気になるフツウの女たち」

パリの混浴、水着を脱いでおっぱい解き放つ流儀

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慣れ親しんでこだわりが強いものについては、つくづく文化の違いを痛感する。私の場合は、お風呂。我々がごくフツウと考える「みんなで全裸でゆっくり熱い湯に浸かる」風習は、ほとんど日本独特と呼んでよいだろう。海外暮らしではアパートメントの浅いバスタブになみなみ湯を張るのも難しく、毎日シャワーだけの生活に耐えている。

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旅先でもしょっちゅう戸惑う。そこそこの宿に泊まっても部屋にシャワーしかない国はざらで、もっといい宿に泊まればジムやプールに併設のスパがあったりするけれど、水温も心意気も、てんでヌルい。施設案内に書かれた営業開始時刻と同時に行ったら準備中で、「え、今使いたいの? まだ朝ですよ」と従業員に 怪訝 ( けげん ) な顔をされたことがある。だって、朝風呂、入りたいでしょ!

いつでも気兼ねなく大浴場を楽しめるのは日本だけなんだなぁ、と恋しく思いつつ、今日も異国でアウェイの風呂場をさまよう。水着をつけないとスパに出入りできないのを何度でも忘れて、慌ててフロントで買ったりする。先日泊まったパリのホテルでは、使い捨ての浴用水着が10ユーロ(約1200円)もした。真っ黒いワンピース型で、裸を隠すだけなら十分だが、私のフツウ感覚からすると生地が薄すぎる。バスローブは逆に、私のフツウ感覚からすると生地が分厚すぎて、どうにもゴワゴワ着慣れない。

「お部屋からバスローブのままどうぞ、マダム」と言われたが、温泉旅館を浴衣姿でうろつくのとは勝手が違い、心 ( もと ) ない。エレベーターで他の宿泊客と会ったら非常識だと思われないか。足元はスリッパでよかったんだろうか。ハラハラしながら地下のスパに 辿 ( たど ) り着いた。エステルームの脇にジェットバスとハマム(蒸し風呂)がある。私の他に先客は女性が一人。ハマムのドア越しに ( のぞ ) き込み、無言で目礼を交わした。

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プロフィル

奥平亜美衣
岡田育 (おかだ・いく)
文筆家
出版社勤務を経てエッセイの執筆を始める。米ニューヨーク在住。著作に『ハジの多い人生』(新書館)、『嫁へ行くつもりじゃなかった』(大和書房)、『天国飯と地獄耳』(キノブックス)、『40歳までにコレをやめる』(サンマーク出版)ほか。
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3925980 0 大手小町 2023/03/27 10:00:00 2023/06/14 09:38:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/03/20230306-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

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