役職名を使わずに「さん」付け、企業が推進するワケは?

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上司も同僚も役職名を使わずに全員フラットに「さん」で呼び合う「さん付け運動」。なかには、わざわざ社内で通達を出してまで推進している企業もあるようです。読売新聞の掲示板サイト「発言小町」には、会議や打ち合わせではもちろんのこと、メールを送る際にも「〇〇様」ではなく「〇〇さん」にするよう注意されたという投稿が寄せられています。こうした運動の狙いはどこにあるのでしょうか。

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「〇〇課長」「〇〇部長」はNGに

写真はイメージです
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トピ主「主任です」さんが勤めているのは、全国に数か所の拠点を持つ従業員1000人規模の企業。この春、本社からの通達で、全社的に「さん付け」が推進されるようになりました。これまで社内の会議や打ち合わせでは、「〇〇課長」「〇〇部長」などと呼ぶのが一般的だったそうですが、これからは役職名を使わずに「〇〇さん」で統一。社内放送や電話を取り次ぐときなどにも「さん」付けで呼ぶことになりました。

そんな中、トピ主さんが上司に出すメールで「○○様」と書いたら、それも「〇〇さん」に改めるようにと注意されてしまったそうです。「でも、部長や課長に出すメールです。冒頭に『〇〇さん』と書くのもどうも威厳がないというか、違和感があります。今は世間的に『さん』付けになる流れなのでしょうか?」と発言小町で問いかけました。

メールで「さん」が普通の会社も

このトピには、70件を超す反響(レス)がありました。

トピ主さんがメールの冒頭部分の記述まで注意されたことには疑問視のコメントが寄せられています。「メールは〇〇様でいいんじゃないですかね」(「みみずく」さん)、「メール冒頭の“〇〇様”は封筒の表書きに相当すると思います。相手が自分より上であろうと下であろうと、封筒に“様”を書くのと同じでは」(「平です」さん)。

一方、これとは正反対の意見も。「私は二つの会社で働いたことありますが、どちらも『さん』呼びで、メールのときも『さん』でした。なんならSlack(チャットツール)のときは、メンションだけで『さん』すら付けません。社内の人相手にメールで『様』を使う方が違和感あります。社風なんですかね」(「さみー」さん)、「20年ほど前に外資に買収されたときから、社長も含め、さん呼びが基本です。メールで呼びかけるときも『さん』です。いちいち考えなくて良いので便利です」(「今日は在宅勤務」さん)

写真はイメージです
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チャットツールには、送ったメッセージに気付きやすいよう相手に通知するメンション機能があり、それを使えば「さん付け」さえしなくても良しとしているのでしょう。「さん付け」が受け入れられるかどうかは、やはり社風の影響が大きいのかもしれません。

ひと昔前と違って、肩書や役職が複雑化していることを指摘するレスもありました。「自分はフリーランスですが、たくさんの会社の方とお仕事します。中規模以上の企業では、『さん付け』のほうが断然多いですよ。肩書だか役職だかが多すぎるし、よくわからない問題があるので。課長とか部長とかそんな単純なもので済まないですもん。課長、所長、室長相当なんだけれども、シニア何ちゃらスペシャリスト、何ちゃらマネージメントリーダー、何ちゃらディレクター、アナリスト、出向先の肩書と元の肩書を二つ持っている人もいるし。部署の編成も名称も肩書もすぐ変わるし」(「みみ」さん)

社外の人にとっても、組織改革のたびに呼称にまで気を使わないといけないなら、いっそ「さん」付けに統一してもらったほうが気楽かもしれません。

ボトムアップ、風通しの良い組織に

「さん付け運動」について、中小企業を中心に経営戦略のコンサルティングをしている「松濤bizパートナーズ合同会社」(東京・北青山)代表の高階修さんに聞きました。

「『さん付け運動』が注目されたのは、バブル崩壊後の2000年ごろでした。当時は大企業を中心に、経営幹部や管理職が仕事のノウハウの蓄積された現場の人たちとフラットな呼び方にすることで、ボトムアップで意見を上げやすく、風通しの良い組織にしたい、という狙いだったんです」と話します。

高階さんによると、当時、「さん付け」を取り入れ、浸透した企業も多くありました。そして、最近になってまた取り入れる企業が目立ってきたのは、採用難と若者の離職率の高さを背景に、「さん付け運動」で社内の風通しの良さをアピールすることで、人材確保につなげようという思惑があると考えています。「もともと若年層の人口が少ないうえに、コストをかけて採用してもなかなか定着してくれません。そんな経営者の悩みにこたえるのが、『さん付け運動』なんです。これだけで風通しの良い企業に生まれ変わるわけではありませんが、経営者や社員の意識改革、組織改革のきっかけにはなるはずです」と高階さんは話します。

レスの中には、こんな意見もありました。

「うちの会社がさん付けです。最初は確かに違和感ありましたが慣れました。それに昇職や異動等で役職が変わっても、さん付けなら困りません。さん付けになってから声も掛けやすくなりました。慣れてしまえば、どうってことありませんでしたよ」(「悪くない」さん)

会社での新たな呼び方ルール。慣れるまでは戸惑いがあるかもしれませんが、会社の方針を理解して柔軟に受け止めることが必要なのかもしれません。

(読売新聞メディア局 永原香代子)

【紹介したトピ】
▽役職名じゃなくて「さん」付けの職場って?

 

プロフィル
高階修(たかしな・おさむ) 経営コンサルタント
  1967年生まれ。千葉県出身。信販会社の財務や経営企画部、サービサー会社(不良債権管理回収会社)を経て、2022年8月に「松濤bizパートナーズ合同会社」を設立。数多くの企業の破綻再生例から、経営のヒントを伝授している。著書に「小さな会社の経営企画」。HPはhttps://partners.shoutou.me/

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4010579 0 大手小町 2023/04/20 06:00:00 2023/04/18 10:40:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2023/04/20230417-OYT8I50073-T.jpg?type=thumbnail

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