Feb 04, 2020 column

接戦の作品賞、再びの司会者不在…第92回アカデミー賞の傾向&予想、注目ポイント

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『パラサイト 半地下の家族』(公開中) © 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

2月10日(現地時間9日)に迫った第92回アカデミー賞授賞式。ハリウッドの人々はもちろん、世界中の映画ファンにとっても一年で最大のイベントになるわけだが、今年はどんな作品やスターが栄冠に輝くのか? 例年にないほど混戦模様の作品賞をはじめ、主な賞の結果を予測しつつ、今年の傾向や授賞式の見どころなどを紹介していく。

近年接戦が続く作品賞、監督&演技賞の行方

例年、だいたい予想どおりの結果に落ち着くのが、アカデミー賞。しかしここ数年、作品賞は2~3作の接戦になることも多く、最後に大逆転も起こっている。3年前に『ムーンライト』(16年)が作品賞を受賞した際は、発表で間違って『ラ・ラ・ランド』(16年)と読み上げられ、それを誰も疑わなかった。まさしく逆転劇を象徴するケースだった。かつて『タイタニック』(97年)や『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』(03年)が過去最多記録の11部門で受賞したように、“大本命”の一本が現れるケースは近年少なくなっている。

では今年はどうか? 作品賞に関しては、受賞しそうな確率にバラつきはあるものの、最後に逆転が起こってもおかしくないほど接戦の年である。おそらく監督賞にもノミネートされた5本の争いになりそうだ。監督賞にノミネートすらされなかったのに、作品賞を受賞した2012年度の『アルゴ』のような例もあるが、今年はその可能性は限りなく少ない。作品賞、監督賞ともノミネートの5本は『1917 命をかけた伝令』『パラサイト 半地下の家族』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『ジョーカー』『アイリッシュマン』で、この中で予想オッズがもっとも低い、つまり受賞確率が高いのが、戦場を驚異の“ワンカット”映像でみせる『1917』だ。前哨戦でもっとも重要なPGA(全米製作者組合賞)、DGA(全米監督組合賞)、そしてゴールデングローブ(ドラマ部門)、英国アカデミー賞の作品賞を受賞しており、頭ひとつ抜け出ている感じ。『1917』が作品賞に輝けば、“予想どおり”と評されるだろう。

『1917 命をかけた伝令』(2020年2月14日公開)©2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

そのほかの重要な前哨戦では、放送映画批評家協会賞の作品賞を『ワンス・アポン~』が、SAG(全米映画俳優組合賞)の最高賞を『パラサイト』が受賞しているし、『ジョーカー』は今年度最多の11部門ノミネートを達成。Netflixの『アイリッシュマン』だけが、やや不利な状況ではあるが、アカデミー賞らしい風格を重んじる会員の票はある程度、集めるかもしれない。ただ、昨年の『ROMA/ローマ』がNetflix作品ということで反発もあったように、今年も風当たりの強さは残っている。

監督賞も同じように逆転の可能性は残しつつも、『1917』のサム・メンデスが一歩リードしている状況。そして多くの人が気になる演技賞の4部門も、重要な前哨戦であるゴールデングローブやSAGの流れからして、主演男優賞のホアキン・フェニックス(『ジョーカー』)、主演女優賞のレネー・ゼルウィガー(『ジュディ 虹の彼方に』)、助演男優賞のブラッド・ピット(『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』)、助演女優賞のローラ・ダーン(『マリッジ・ストーリー』)が優位に立っている。しかし昨年も主演女優賞で圧倒的優位だった『天才作家の妻 -40年目の真実-』(17年)のグレン・クローズが、アカデミー賞では『女王陛下のお気に入り』(18年)のオリヴィア・コールマンに敗れたので、サプライズには期待してもよさそうだ。