1日5分の運動で「人生が望み通り」に!? 運動で“脳機能”がアップする5つのカラクリ

1日5分の運動で「人生が望み通り」に!? 運動で“脳機能”がアップする5つのカラクリ
2022.06.17.FRI 公開

健康のために「運動しなければ!」と考える人は多いと思うが、運動を<人生をよりよく生きるためのツール>として捉えている人はどれくらいいるだろうか?
実は、運動は身体や心の健康だけでなく、“脳の働き”を向上させるとも言われている。今回は、書籍『頭をよくしたければ体を鍛えなさい 脳がよろこぶ運動のすすめ』(中央公論新社)から、運動がどのように“脳機能” をアップさせ、さらには人生を望み通りに生きるための手助けをしてくれるのか、について紹介しよう。

カラクリ1
人生がうまくいかないのは、脳の「実行機能」が存分に発揮されていないから

「もっと仕事を効率よくできたら」「もっと有効に時間を使えないものか」「もっとお金を稼げればな」など、我々は生きていく中で様々な問題に直面する。なかなか自分の思い通りにいかず、「こんなはずじゃなかった……」と思うこともしばしば。自分が思い描くような素晴らしい人生を歩むためにはどうすればいいのか? そのためには、脳機能の中で「実行機能」と言われる認知能力が関係している。

実行機能とは、「~したい」という自身の願望や目的を達成するために重要な脳機能なのだ。そして、この実行機能は運動をすることによって向上していくことが、昨今の目覚ましい脳科学の研究で分かってきている。

 実行機能は、「困ったな……、こうするためには、どうしたらいいんだろう?」という状況を打開するために役立つ色々な脳の働きです。もう少しマジメに定義すると、「はっきりとした目的のある行動を計画・実行・コントロールする働きを持つ脳機能の総称」ということになります。論理的思考・プランニング・問題解決などの複雑な認知能力の根幹にあると考えられている脳機能であり、脳のなかでも、おでこの裏に位置する前頭前皮質が特に重要な役割を担います。(書籍から抜粋)

カラクリ2
運動するだけで、3つの異なる脳機能が自動でトレーニングされる

仕事の出来や収入、学業の成績やプライベートの充実度など、日々の生活や人生において深く関わっている実行機能。それは大きく分けて3つの脳機能から構成されているという。

1つ目は情報を記憶して、目的のために書き換えていく「ワーキングメモリー」。2つ目は衝動的な行動や感情などをコントロールする「抑制」、3つ目は思考や行動をフレキシブルに切り替える「認知の柔軟性」で、この3つの要素は実行機能に大きく関係している。これらは継続的に運動をすることによって自然とトレーニングされ、アップデートされていく。つまりは実行機能がどんどん磨かれていくのだ。

1:「ワーキングメモリー」
2:「抑制」
3:「認知の柔軟性」

 実行機能の構成要素の働きの良さを測るのと同様の課題が、「脳トレ」として行われているのをよく見かけます。そのような脳トレを行うことで、実行機能に一般的な向上が起こるかどうかはさておき、それぞれの課題を繰り返し練習すれば、成績は徐々に向上していきます。
 これに対して、継続的に運動すると、実行機能を構成するワーキングメモリー・抑制・認知の柔軟性を必要とする課題を実際に練習したわけではないのに、それぞれの課題の成績が向上することが知られています。つまり、運動すると、脳トレを練習していないのに、脳トレがうまくなってしまうということです。なんとも不思議なことではありますが、身体を動かすことで脳が変容することを表す好例です。(書籍から抜粋)

カラクリ3
意志の強さで、その後の人生がガラリと変わる

我々は生きていく中で、こうなりたい、これをやろうと突然思い立つことがある。例えば運動をしようと思い立ち、始めてみても数日すると、「明日やればいいや」、「ゲームがしたいので今日はもう止めよう」など、あっさり白旗を上げがち。自分の意志がもっと強かったら……と思うことも多い。

本書の中に、「マシュマロテスト」という有名な研究のことが記載されている。4歳の子どもを集めて行われたこのテストは、実験者が子どもたちにまずは1個のマシュマロを与える。その後、子どもたちに「部屋からしばらく出ますが、私が帰ってきたときにマシュマロがそのままだったら、もう1個マシュマロをあげる」と約束をした。実験者が部屋から出ていくと、子どもたちはそれぞれの行動を始めた。言いつけをしっかり守る子、マシュマロを食べてしまう子、外見からは分からないようにマシュマロの中身だけ食べてしまう子など、様々なケースが見られたという。

「マシュマロテスト」を受けた子どものその後を、10年~40年も追跡調査した結果、しっかり言いつけを守って我慢ができた子どもは、高学歴や良好な人間関係などを築き、様々なことをセルフコントロールできている人が多かったそうだ。

このテストの話を読むと、子どもの頃からしっかりとセルフコントロールし、意志力を高めていくことが人生をよりよいものにしていくということが分かる。未来は決められているものではなく、自分で道を切り拓いていくものなのだ。

カラクリ4
運動は、意志力を鍛える最高のトレーニング方法

セルフコントロールがうまい人が、常に意志力を維持できるのかというとそうとは限らない。意志力は筋肉のようなもので、使い過ぎると消耗していき、セルフコントロールが難しくなってくるそうだ。これが「自我消耗」と呼ばれていることが本書の中に記載されている。

それでは「自我消耗」を抑えるためにはどうすればいいのか。答えは意志力を鍛えるしかない。そのためには意志力を必要とする状況を繰り返すことが必要であり、常に物事をポジティブに考えることが求められる。

そこで、気軽にでき、すぐに行動に移せるトレーニングといえば運動だ。まずは自分で確実にやれること、例えば短時間のウォーキングなどを始める。それを毎日繰り返すことで、実行機能が高まる。定期的に運動をすることで、意志力は確実に鍛えられていくことだろう。

 「やろうと思えば確実にできること」を習慣的に行うことが意志力を鍛えるコツですが、運動によって意志力を鍛えることには、他の方法よりも大きな効果が期待できるでしょう。
 というのも、セルフコントロールは、運動することで鍛えられる実行機能の働きの1つだからです。実行機能は「はっきりとした目的のある行動を計画・実行・コントロールする脳機能の総称」であり、セルフコントロールも脳に実行機能が備わっていればこそなせるワザです。実際、実行機能を構成するワーキングメモリー・抑制・認知の柔軟性それぞれの働きが優れているヒトほど、高い意志力を示します。(書籍から抜粋)

カラクリ5
運動を習慣化するための【脳がよろこぶ運動マニュアル】

書籍『頭をよくしたければ体を鍛えなさい 脳がよろこぶ運動のすすめ』より抜粋

運動すれば脳へ良い影響があることは分かったが、運動を始めてみたものの続けていくのはなかなか難しい。継続して運動をするために、どのような心構えでいればいいのだろうか? それが本書の中で8つのリストとしてマニュアル化されているので、それぞれの注目ポイントを紹介する。

①何はともあれ有酸素運動
脳への良い効果を生み出すには、とにかく有酸素運動が必要。ウォーキングでもジョギングでも、ちょっと息が弾むくらいでいいので、普段から有酸素運動を取り入れることを心掛けよう。

②5分だけでもかまわない
わずか5分ほど運動するだけでも脳へ良い効果が表れるとの研究結果がある。仕事帰りにちょっとだけ長く歩くなど、ちょっとした行動が効果を生み出す。

③なるべく早めの運動を
午前中または午後の早い時間に運動をすると脳への効果もアップ。ちょっと早起きして軽く身体を動かすと、仕事の効率も上がる。

④できることなら自然のなかへ
自然の中は「フィトンチッド」という生物活性物質で溢れており、リラックス効果やストレス軽減、さらには免疫力も高まる。運動するなら近くの公園でもいいので、緑があるところを選ぼう。

⑤継続はやっぱり大事
運動することによる脳への良い効果は、単発よりも継続的にやるほうが効果を発揮し、根本から変わってくる。やはり、なんでも続けることに意味があるのだ。

⑥自分で効果を検証する
運動を継続するために、自分がどのような気持ちのときに前向きに身体を動かしているかを検証してみるといい。例えば運動をした後にすっきりとした気持ちになるか、イライラが解消されるかなどを検証するのが運動を続ける動機になる。

⑦気持ち良さを感じる
運動をして気持ち良さを感じることが、継続するための大きなポイント。運動する時間やどの程度の強度で身体を動かすと心地良いのか、自分で探りながら運動を続けるのがおすすめ。

⑧ノリノリで身体を動かす
めんどくさいと思いながら運動するよりも、ノリノリの気持ちで身体を動かすほうが脳への効果も大きい。ポジティブな気持ちで身体を動かそう。

本書を読んで、体を鍛えることが、どれだけ脳を喜ばせ、絶大な影響があるのかがよく分かった。まずは5分からでいいので身体を動かす。そうすれば脳の実行機能が鋭敏に磨かれ始める。そして運動を続けていくことで、なりたい自分へと近づき、生活の質も高まっていく。人生がより豊かなものになっていくのだ。

text by Jun Nakazawa
photo by Shutterstock

<参考図書>
『頭を良くしたければ体を鍛えなさい 脳がよろこぶ運動のすすめ』

陳冲、望月泰博/中央公論新社
医学博士の陳冲、理学博士の望月泰博という二人の研究者が、世界中で行われている脳や心の様々な研究例をはじめ、自身の面白いエピソードなどを交えながら運動することで脳にどのような良い効果を与えるかを厳選して記した一冊。

1日5分の運動で「人生が望み通り」に!? 運動で“脳機能”がアップする5つのカラクリ

『1日5分の運動で「人生が望み通り」に!? 運動で“脳機能”がアップする5つのカラクリ』