国内

泥臭い営業職で疲弊し心を病んだ東大法学部卒銀行マンの末路

高学歴ならではの苦労とは?(写真/時事通信社)

“エリートの象徴”とも言われる東大法学部。そんな日本の最高学歴とも呼べる経歴を持つ人は、多くが順風満帆な人生を歩んでいると思う人も多いだろう。だが、東大法学部出身だからこその生きづらさを抱える人もなかにはいる。『東大なんか入らなきゃよかった 誰も教えてくれなかった不都合な話』(飛鳥新社)の著者で、自身も東大出身のライター・池田渓さんがリポートする。

 * * *
「死にたい」
「会社にいるだけで胃がキリキリする。例の先輩をどうにかしてほしい」
「東大なんか入らなきゃよかった」

 これらは、東大法学部卒のK氏(30代後半・男性)から友人である僕に送られてきたLINEのメッセージ。天下の東大法学部を卒業後、自ら望んでメガバンクに就職したというのに、一体彼に何があったのだろうか。

 K氏は、都内の支店営業部に配属され、3年が経った頃精神を病み、その後ほどなくして産業医からうつ病と診断され休職をすることになった。半年の療養を経て復職し現在に至るが、その後の彼は事あるごとに「死にたい」と口にするようになってしまった。

 彼がうつ病を患った「銀行」は、東大の学部卒業者に最も人気のある就職先だ。東京大学新聞社の集計では、2019年度東大学部卒業者の就職先企業のトップは三井住友銀行、次いで三菱UFJ銀行と、銀行が2位までを占めている。

「民間企業のなかでは給料が高い方だし、福利厚生も手厚い。何より、社会インフラだからリストラに遭う心配がない。一見、安心で安全な職場だよね。東大生の多くは俺と同じような考えで銀行を就職先に選んでいるよ」(K氏、以下同)

「東大を出て銀行に採用されたのだから、得意な頭脳労働ができる――」。銀行に就職した当初は、意気揚々とこう語っていたK氏。ところが、彼が実際に命じられた仕事は、中小企業の経営者や資産家の家を一軒一軒訪問して、保険や投資信託の購入をお願いするというもの。つまり、泥臭い営業だ。そこでは、「客」という立場を笠に着た金持ちたちから理不尽なパワハラを受けることもしばしばで、東大法学部で学んだ知識は全く役に立たなかった。必要なのは、受験勉強でも大学の講義でも学ぶ機会の無い「コミュニケーション能力」だ。

 東大を出ているような人間は、子供の頃から1人で机に向かっている時間が長い。そのため、論理的な読み書きといった言語スキルは高いが、人との会話やコミュニケーションを苦手としている人がそれなりにいる。対人のストレス耐性も決して高くなく、営業仕事で潰れる東大出身者は多い。K氏と同時入社した東大卒の同期も同じようにうつ病を発症し、現在は「いつ休んでもいい」とされている子会社の窓際部署で飼い殺しになっているという。自分を「コミュ障」と言うK氏にとっても、営業という仕事は苦痛だったのだろう。彼のメンタルはみるみる消耗していった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

体調を見極めながらの公務へのお出ましだという(4月、東京・清瀬市。写真/JMPA)
体調不調が長引く紀子さま、宮内庁病院は「1500万円分の薬」を購入 “皇室のかかりつけ医”に炎症性腸疾患のスペシャリストが着任
女性セブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
睡眠研究の第一人者、柳沢正史教授
ノーベル賞候補となった研究者に訊いた“睡眠の謎”「自称ショートスリーパーの99%以上はただの寝不足です」
週刊ポスト
公式X(旧Twitter)アカウントを開設した氷川きよし(インスタグラムより)
《再始動》事務所独立の氷川きよしが公式Xアカウントを開設 芸名は継続の裏で手放した「過去」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
現役を引退した宇野昌磨、今年1月に現役引退した本田真凜(時事通信フォト)
《電撃引退のフィギュア宇野昌磨》本田真凜との結婚より優先した「2年後の人生設計」設立した個人事務所が定めた意外な方針
NEWSポストセブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン
猛追するブチギレ男性店員を止める女性スタッフ
《逆カスハラ》「おい、表出ろ!」マクドナルド柏店のブチギレ男性店員はマネージャー「ヤバいのがいると言われていた」騒動の一部始終
NEWSポストセブン
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
【中森明菜、期待高まる“地上波出演”】大ファン公言の有働由美子アナ、MC担当番組のために“直接オファー”も辞さない構え
女性セブン