アングル:米政府、EV供給網構築へ5月に官民会議 リチウム業者も参加

アングル:米政府、EV供給網構築へ5月に官民会議 リチウム業者も参加
 4月5日、米政府は国内の電気自動車(EV)の供給網構築に向けた取り組みの第1弾として、5月初旬に自動車メーカーのほか、電気自動車の電池に不可欠なレアメタルのリチウムを生産する企業を集めた会議を開催する。写真はテスラ車。カリフォルニア州サンタモニカで昨年10月撮影(2019年 ロイター/Lucy Nicholson)
[5日 ロイター] - 米政府は国内の電気自動車(EV)の供給網構築に向けた取り組みの第1弾として、5月初旬に自動車メーカーのほか、電気自動車の電池に不可欠なレアメタル(希少金属)のリチウムを生産する企業を集めた会議を開催する。
複数の関係筋によると、ワシントンで開かれる会議には米電気自動車(EV)メーカーのテスラのほか、フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)などの代表者が参加。このほか、中南米でリチウムを生産する米アルベマールと米リベントのほか、米国内でリチウム鉱床などを開発する企業も参加し、電気自動車に必要なリチウム、ニッケル、コバルト、グラファイトの採掘、加工、供給を包括する供給網の整備につながる政策について協議する。
米国ではテスラのほか独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)など電気自動車に軸足を置く自動車メーカーのほか、電池メーカーが新技術に大規模な投資を行っているが、生産に必要なレアメタルは輸入に頼っているのが現状だ。
一方、中国はすでに電気自動車の供給網を整備済み。5月の会議を主催するベンチマーク・ミネラルズ・インテリジェンスによると、リチウムイオン電池の生産で中国は世界の約3分の2を担っているのに対し、米国の生産は5%に過ぎない。また、米地質調査所(USGS)によると、米国のリチウム輸入はテスラなどが国内で電池生産を開始したことで2014年以降倍増した。
上院エネルギー・天然資源委員会メンバーのジョン・ホーベン議員(ノースダコタ州)はロイターに対し、「こうした資源は米国の国家安全保障、および経済にとって極めて重要であるため、国内の供給をより効果的に開発する方法を模索する必要がある」と述べた。
5月の会議には国務省、エネルギー省、内務省、米地質調査所の当局者も参加する見通し。上院エネルギー・天然資源委員会のリサ・マーカウスキー委員長も出席を予定しており、リチウムを含む鉱物を巡る認可プロセスの簡素化、州・連邦政府レベルでの重要な鉱物の研究促進などを目的とした法制度を提案する。
米国ではリチウム・アメリカス・コープ(LAC)を含む5社が現在、新技術を導入したリチウム採取プロジェクトを推進中。粘土や油田廃棄物などからリチウムを採取する新たな技術で、形勢を一転させる可能性があるとの見方を一部アナリストは示している。
これらの企業すべてが資金を確保できたわけではないが、計画通りに2022年までに開始できれば、米国の生産は炭酸リチウム換算で年間少なくとも7万7900トンに達し、世界でも有数のリチウム生産国に躍り出る。
リチウム関連の権利買い取りを行う新興企業のUSクリスタル・ミネラルズのジェシー・エドモンドソン最高経営責任者(CEO)は、「電気自動車の供給網の整備は、『米国を再び偉大にする(to make America great again)』目標の達成に向けた最適の手段となる」と語った。
現在、アーカンソー州ではスタンダード・リチウムが化学工場から出る臭素廃棄物からリチウムを採取する試験プロジェクトを開発中。同州のハッチンソン州知事はロイターに対し、「アーカンソー州はリチウム生産に向け大きな一歩を踏み出す機会に恵まれており、これを支援したい」と述べた。
リチウム・アメリカスのジョナサン・エバンズ社長は「米国が目を覚ましさえすれば、国内に電気自動車の供給網を構築する機会は存在する」と語る。同社は現在、ネバダ州でリチウムプロジェクトを進めており、22年の開始を予定している。

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