コラム:ボーイング改革、会長・CEO分離だけでは不十分
Robert Cyran
[ニューヨーク 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ボーイングは11日、会長と最高経営責任者(CEO)を分離し、デニス・ミューレンバーグ氏が会長を外れてCEOに専念すると発表したが、経営改革の取り組みとしては小規模過ぎるし、遅きに失している。同社の企業文化に根差す問題を解決するには不十分だ。不祥事を起こした米ウェルズ・ファーゴ(Wファーゴ)がなお延々と対応に追われている点を踏まえると、ボーイングの改革も長期化は必至で、最終的には外部の視点が必要になるだろう。
会長とCEOの兼職を解くことはそれなりに意味がある。ミューレンバーグ氏は、737MAXの運航再開にこぎ着け、新型機を開発し、737MAXが起こした2回の墜落事故につながった社内風土と経営上の欠陥に対処するという任務に全力を注げる。一方、デービッド・カルホーン新会長は監視の目を光らせ、株主や規制当局との関係を円滑化するのに役立つ。
ただカルホーン氏は既にボーイングの社外筆頭取締役を務めているため、さらにどれだけ強力な権限を行使できるかは分からない。その上、カルホーン氏は2009年からずっと取締役だった。こうした任期の長さは、他の取締役に影響力を及ぼすメリットになるかもしれないが、同氏が737MAXが開発される推移を当事者の1人として目にしながらボーイングがトラブルに陥っていくのを防げなかったことも意味する。
Wファーゴで展開する事態からは、もっと劇的な変革が必要であることがうかがえる。たとえそれが一朝一夕に実現しなくてもだ。Wファーゴは16年に幾つかの不祥事が発覚し、リテール銀行部門では顧客に無断で200万件の架空口座が開設されていた。これを受けて議会が開いた公聴会で批判を浴びると、CEOだったジョン・スタンプ氏を更迭して、後任に社歴の長いティム・スローン氏を内部登用し、同時に社外筆頭取締役が会長に就任した。
同行は17年に新会長を指名。今年に入るとスローン氏が辞任し、取締役会は次期CEOは外部の人物を招へいしたいと表明した結果、ようやくバンク・オブ・ニューヨーク・メロンのCEOを務めたチャールズ・シャーフ氏が選ばれ、来週に就任する予定だ。
Wファーゴにおけるスローン氏と同じように、ミューレンバーグ氏にもボーイングが抱える問題の全ての責任を押し付けることはできない。ミューレンバーグ氏がCEOに就いた際には、737MAXはもうかなり開発が進んだ段階にあったのだ。またミューレンバーグ氏は、取締役会に安全委員会を設置したり、エンジニアの立場や安全上の懸念を最優先するような組織再編を行うなど、さまざまな対策を講じてきた。それでも35年近くボーイングで働いてきたミューレンバーグ氏は、同社の風土を新鮮な目で見直す境地にはなれない。
そうした観点で、会長とCEOの分離はようやく打たれた手立てだが、満足できるものではない。ボーイングの取締役会と株主、社員には改革実現までになお長い道のりが待ち受けている。
●背景となるニュース
*ボーイングは11日、会長とCEOを分離すると発表。これまで兼職していたデニス・ミューレンバーグ氏がCEOを続け、社外筆頭取締役のデービッド・カルホーン氏が非執行会長となった。
*取締役会は、今回の分離によってミューレンバーグ氏は737MAXの安全な運行再開に取り組んでいる中で同社の経営に全力を注ぎ、世界中の顧客を確実に全面的に支援できるほか、製品やサービスの安全性重視の取り組みを強化するための改革の実行が可能になる、と説明した。
*737MAXは、合計で346人の犠牲者を出した2回の墜落事故を受け、3月以降運航を停止している。
*ミューレンバーグ氏は30日に議会で証言する予定だ。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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