コラム:ボーイングは「米国版ファーウェイ」となるか
Jennifer Saba
[ニューヨーク 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米航空機大手ボーイングと中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)は全く別の業態だが、驚くほど共通点がある。両社とも国を代表する企業で、顧客は簡単に他社に乗り換えられず、それぞれ自国の政府にとって重要な存在であり、いずれも大幅なイメージダウンに直面しているからだ。
そして両社は品質面の危機という問題を抱え込んでいる。ボーイングは737MAX8型旅客機がインドネシアとエチオピアで相次いで墜落事故を起こし、合計で346人もの犠牲者を出したことで、厳しい目にさらされる日々だ。ファーウェイは自ら強く否定しているものの、中国政府のために情報を窃取していると米国からみなされている。
これは米中両国にとって厄介な事態だ。第1に、2社ともそれぞれの市場で圧倒的な優位性を持っている。米商務省経済分析局によると、2018年の米輸出において民間航空機・部品の割合は約5%を占め、同時にボーイングは商用機分野で世界的な寡占企業の1つでもある。ファーウェイは世界中に低価格の通信機器を供給し、世界的なハイテク強国へモデルチェンジを図ろうとしている中国の重要な戦略的企業といえる。
だが米中とも当の政府の姿勢に問題がある。ファーウェイ批判派は、中国の政治家が過度に干渉していると指摘する。ホワイトハウスは同盟諸国に対して、ファーウェイ製品はスパイの道具になっているので、使用しないよう呼び掛けている状況だ。反対にボーイングに対して米政府はあまりに放任主義が過ぎる。米連邦航空局(FAA)は世界の当局で最も遅く737MAXの運航停止を命令しただけでなく、同機の認証手続きの一部をボーイングの社内で行うことを認めており、この件については適切だったかどうか捜査が行われている。
ファーウェイに比べ、ボーイングが見舞われている状況は、人命が失われた事故が関係しているだけに深刻さがあるが、より容易に解決できるかもしれない。ファーウェイに対する中国政府の干渉は、その性質上はっきりさせるのが難しいからだ。これは中国全般に関する問題でもあり、今後も払しょくされることはないだろう。
ボーイングは少なくとも第三者が確認可能な対応策を実施することができる。ソフトウエアの不具合を修正し、パイロット向けの適切な訓練態勢を確保することだ。FAAは規制を強化すれば良く、トランプ大統領が3月に指名した次期長官が正式に就任すれば適切なリーダーシップも確立する。政府の監督は、あることを証明する方がないことを証明するよりも簡単だ。だからファーウェイよりもボーイングは名誉回復への道筋が整っている。
●背景となるニュース
*ボーイングのミューレンバーグ最高経営責任者(CEO)は4日に声明を発表し、ボーイング737MAX8の墜落事故について、失速防止装置のソフトウエア誤作動が原因との考えを示し「われわれはリスクを排除する責任があり、その方法は分かっている」と述べた。
*エチオピア運輸省は4日、墜落したエチオピア航空の737MAX8のパイロットはボーイングが提示していた手順に従ったが、機体を制御できなかったと説明した。3月10日に起きた墜落事故では157人が犠牲になった。
*この事故を受け世界中の規制当局が737MAXを運航を停止した。昨年10月にはインドネシアのライオン・エアーの737MAXが墜落して189人が死亡した。
*ボーイングは1日、737MAX向けの修正ソフトを「数週間以内」にFAAに提出すると発表した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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