コラム:ファーウェイ独自OS投入、それでも必要な米企業の力
Pete Sweeney
[香港 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)は、フェイスブックのような米企業と何としても手を結びたい考えだ。
任正非最高経営責任者(CEO)が率いるファーウェイは先週、独自開発した基本ソフト(OS)「鴻蒙(ハーモニー)OS」を発表した。米政府によってグーグルの携帯端末用OS「アンドロイド」の利用ができなくなった場合への備えだ。
ファーウェイは海外の開発会社が鴻蒙OS向けアプリを提供してくれれば、世界市場で優位性を維持できると期待しており、その支援に10億ドルを拠出する。ただ、資金を出すだけでは不十分かもしれない。
グーグルのアプリストアなしでは、これまで過度に米国製OSに依存してきたファーウェイ製品に魅力がないことは明らかだ。トランプ大統領はファーウェイを「エンティティーリスト」に追加し、米企業に同社との取引を禁止することでこの弱みをついた。
問題の根源は、中国の業者はわざわざ海外ユーザー向けのアプリ開発に乗り出さないという事情にある。騰訊控股(テンセント・ホールディングス)<0700.HK>のメッセージアプリ「微信」は、ほぼ全て中国本土のユーザーで、アリババの決済サービス「アリペイ(支付宝)」も同様だ。
もしファーウェイが鴻蒙OSを搭載したスマートウォッチや携帯電話、スマートテレビを海外で売りたければ、既に外国のユーザーが利用しているアプリをインストールする必要がある。だからこそ同社は、既存のアンドロイド向けアプリを、多少手を加えれば鴻蒙OS上でも稼働できるようにする方法を模索している。
ファーウェイはまず、中国製携帯電話の普及率が高い外国市場でよく利用されている、米国以外のアプリ企業に接触するかもしれない。5億人のユーザーを持つ日本のLINE<3938.T>や、インドのモバイル決済サービスのPay(ペイ)tm、あるいはスウェーデンの定額音楽配信サービスのスポティファイなどは候補だろう。
しかし、互いを必要としている度合いがファーウェイのほうがずっと大きいため、収入分担を巡ってファーウェイが足元を見られてもおかしくない。
それでも任CEOは、米国勢の手を借りなければ成功はおぼつかない。フェイスブックや、グーグル傘下の動画共有サイトのユーチューブ、決済サービス大手ペイパル、フェイスブック傘下のメッセージアプリのワッツアップは、西側諸国だけでなく新興国でもアンドロイド端末にダウンロードされ、至る所で利用されている。
こうした米企業に、鴻蒙OS版のアプリをどうやって投入してもらうかがファーウェイにとっては課題だ。
だが収入分担を含めて金銭的な取り決めをすれば、米政府の禁輸措置に抵触する恐れがあるため、残る方法は金銭以外で見返りを提供することになる。例えば任CEOが、中国政府との非常に太いパイプを活用し、中国本土で事業を拡大できないフェイスブックの長年の不満を解消する手助けをする。
つまりファーウェイの今後の携帯端末事業の行方は、米国勢との間でいかに「互恵関係」を築けるかにかかっている。
●背景となるニュース
*ファーウェイは9日、スマートフォンやその他の機器向けに独自開発した鴻蒙OSを発表した。米政府が5月、グーグルのアンドロイドに関係する米国の技術に対するファーウェイのアクセスを遮断することにつながるような規制措置を発表したためだ。
*ファーウェイによると、当面自社のスマホはアンドロイドを利用する方針。鴻蒙OSは、スマートウオッチやスマートスピーカー、仮想現実機器などに段階的に導入していく。
*ファーウェイの消費者クラウドサービス社長は、鴻蒙OS向けアプリ開発支援に10億ドルを投じると表明した。投資の8割は中国国外になる見通し。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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